フィードフォースグループ(本社:東京)は、デジタルマーケティング関連ツールを提供するフィードフォースや、デジタル広告運用のアナグラム、ECサイト出荷業務自動化支援のシッピーノなど、BtoB企業7社の持ち株会社だ。最近では、カナダ発のECプラットフォームShopifyを利用する事業者向けに、日本の商習慣に合わせたアプリの提供やUI/UX向上をサポートするなど、EコマースとリテールのDX支援に力を入れている。事業の概要や今後の展望について、代表取締役社長の塚田耕司氏に話を聞いた。

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7社の持ち株会社移行でワンストップDX支援へ

――事業の概要を教えてください。

 元々、経営していたフィードフォースという会社では、主に企業のデジタルマーケティングを支援するようなSaaSプロダクトを提供してきました。フィードフォースが2019年7月に東京証券取引所マザーズへIPOした後、2021年9月に持株会社体制としてフィードフォースグループ(以下、フィードフォースG)に移行しました。

 同じBtoB領域で、デジタル広告に特化した広告代理店であるアナグラムや、Shopifyというワールドワイドなコマースプラットフォームを使ったECサイト構築・企業のブランディングを支援するフラクタ、倉庫業務や配送業務をコントロールするソリューションを提供するシッピーノなどが、フィードフォースGに加わりました。

塚田耕司
フィードフォースグループ
代表取締役社長
京都大学工学部卒業後、安田信託銀行を経て、1996年 にウェブサイト構築のルートコミュニケーションズ設立。2006年に企業向けのネットマーケティングサービスを提供するフィードフォースを設立。2021年に持株会社体制に移行し、フィードフォースグループとフィードフォースの代表を務める。

 現在の事業には、大きく3つの柱があります。もともとフィードフォースがやっていたSaaSを中心とした事業、アナグラムを中心とした広告エージェンシー業務のプロフェッショナルサービス事業、フラクタを中心にしたShopify周りのソリューションを提供していくDX事業、この3つを中心に会社を成長させていきたいと考えています。

 顧客に対して、さまざまな角度からサービスを提供して、最終的にはワンストップで企業のDXを総合的に支援することができるような体制づくりに取り組んでいます。

ECモールにはない「マーチャントが考える世界観」をサポート

――事業の主な対象はEコマースでしょうか。それともBtoBの幅広い分野での展開ですか。

 事業全体としては、もちろんEコマースやリテール業界以外の顧客も多くおります。ただ、ここ最近は、Eコマースや、OMOの視点からの小売店のDX領域にフォーカスしており、ソリューションを提供しています。

――Eコマースやリテールに注力している理由を教えてください。

 理由はいくつかありますが、大きな理由の1つとして、やはり世界的な新型コロナウイルス流行をきっかけに、店舗とEコマースのハイブリッド、いわゆるOMOやオムニチャネルの領域が大きくマーケットとして伸びたことがあります。今後も伸びる領域であろうと注目しています。

 世界的にはコロナを機に、Eコマースの分野でUI/UX、買い物を通した顧客体験の向上がとても進みました。ユーザーの購買体験がより便利に快適になる、という進化を遂げています。

 ただ、世界の流れと日本の状況を比べてみると、日本はもともと楽天市場やYahoo!ショッピングといったECモールがかなり強いことがあり、UI/UXやDXの進化が世界から若干遅れているところがあると思います。

 逆に言うと、そこが我々にとってビジネスチャンスだと考えています。世界からみると少し遅れている日本のEコマース、リテールのテクノロジーの部分を、我々がShopifyを中心とした世界標準のテクノロジーを持ち込むことによって引き上げることができれば、日本全体の活性化にもつながるのではないかと思い、注力することにしました。

――御社のサービスによって、どのようにリテールの魅力を引き上げていけるのでしょうか。

 例えば、Shopifyはカナダのグローバル企業によるEコマースのプラットフォームです。Shopifyはどちらかというとオーソドックスなコマースプラットフォームなんですが、オープンアーキテクチャでいろんなものとの接続がすごく簡単にできるようになっています。

 スマホにアプリを入れるような感覚で、我々のようなサードパーティーのベンダーが作ったアプリや顧客が必要とするアプリをどんどん取捨選択して搭載することによって、事業者(マーチャント)がやりたいことを実現する、というのがShopifyのコンセプトです。

 つまり、日本のモール型のEコマースとは真逆の方向性なんですね。日本のECモールはオールインワンで機能がワンパッケージされ、集客もやってくれるし、売り場はあるし、決済もモールが用意してくれている。ただ、1個1個を選ぶことができないというか、与えられたものをその範囲内で工夫しながらやる必要があります。

 一方、Shopifyでは利用するマーチャントが考える世界観や、お客様に提供したい機能を自分で取捨選択し、作り上げることができます。イメージでいうと、LEGOのような感じです。機能をいろいろ選んで「自分はこういう店舗を提供したい」という世界観をすごく簡単に実現できるのがShopifyのコンセプトなんです。

 そこで我々は、日本の商習慣、国内環境に合ったアプリケーションをいろいろ提供しています。Shopifyとアプリ開発、構築会社であるフラクタがタッグを組むことで、マーチャントが考える世界観の実現をサポートします。Shopifyには豊富にAPIが用意されていますが、マーチャントから見た時はAPIについて詳細を理解していなくても、いわゆるノーコードで組み合わせることができる、そんなイメージです。

英語が「苦手」な事業者でもShopifyを使えるように

――御社の強みや競合との差別化はどこにありますか。御社はShopifyアプリを提供する企業アライアンス「App Unity」も呼び掛けていますね。

 Shopifyと世界各国のサードパーティーが提供しているアプリの数は豊富にあります。ただ、日本のマーチャントは英語がそれほど得意ではありません。海外製のアプリは英語の画面で、設定などの不明点も英語で問い合わせないといけず、また、日本の商習慣とマッチしていない部分もあり、いくつかのハードルがあります。

 日本国内の環境下で、日本語のサポートに対応し、日本語の管理画面を提供するアプリは、実は非常にニーズが高いんです。我々はそのギャップに着目し、日本国内に特化したアプリを提供しています。

 上場企業でこのような総合的なサービスを展開しているのは我々だけだと思います。アプリ開発などはありますが、ここまでの規模感でShopifyのソリューション提供をしっかり展開しているのは我々以外にはいないと思います。

Image: App Unity HP

――グループ全体の収益モデルはどのようになっていますか。

 サブスクリプション型の収益形態がほとんどです。フラクタのサイト構築ビジネスはスポット型ですが、我々のグループにジョインしていただいてから、サブスクリプションの部分を増やせないかと共に検討しているところです。

 プロフェッショナルサービス事業の広告運用、広告代理業務の部分でも、契約が続く限り顧客の広告費の一定割合を運用手数料としていただく形で、全体でもほぼリカリングレベニューで構成されているというような形です。

 我々のサービスは、SMB(Small and Medium Business)と言われるような中堅・中小企業の顧客からエンタープライズの顧客まで、かなり幅広く展開しています。延べの顧客数は、アプリを使っていただいてる事業者も含めると数千から1万に届くぐらいの数になります。

――東京にいなくても、地方でも物が売れるのがEコマースの魅力だと思います。SMB向けに力を入れていることはありますか。

 地方には、魅力的な食べ物やものづくりなど、いいものを持っている事業主が多くいます。地方の方々にもわれわれのサービスが届くように取り組んでいこうと考えています。

 今後強化していく取り組みとして、地方のEC業者を支援しているウェブ制作会社などと連携し、地方の事業主を一緒に支援していく枠組みです。2021年にその枠組みを作りましたが、これをより幅広く展開していく予定です。

日本の大企業とは新規事業、クロスセル提案で連携したい

――今後の事業展開や新サービスの見込みについて教えてください。

 前述した3つの事業の柱の中で、SaaS、DXの領域は現在、Eコマースとリテールに力を入れてますが、この領域は特に日本において可能性が大きいと感じています。

 先ほども申し上げましたが、楽天さんやYahoo!さんがあまりに偉大過ぎたというか、強すぎた分、日本のコマースのUI/UXが世界からみると遅れているという点はチャンスだと思っています。今の状況をひっくり返す、というと大げさかもしれませんが、「独自ドメインで自社サイトをやるなら、フィードフォースGにお願いしよう」と言われる存在になれるまで頑張りたいと思います。

 アナグラムを中心とした広告代理店事業、プロフェッショナルサービス事業もチャンスがあると手ごたえを感じています。昔からの大手総合広告代理店、デジタル中心の広告代理店はあっても、そこに続く企業が現在はなかなか出てきていない状況だと思います。独立型できちんと事業主に寄り添う広告代理店が実は望まれているのではと考えており、「第三の選択肢」として面白いポジションをとれるチャンスがあると思っています。

 我々は新規事業をどんどん生み出すことをエネルギーに成長してきた会社です。これからもどんどん新規事業を生み出し、1つだけ大きいものがあるというよりは、いくつかの塊を活かして会社グループ全体を伸ばしていくイメージを持っています。

――グループのミッションとして、「『働く』を豊かにする」を掲げています。顧客に対するサービス提案はもちろんですが、2021年にはフィードフォースGの3社でリモートワークを活かし、日本全国どこからでも働ける「日本全国どこでも採用」を始めました。手ごたえはいかがですか。

 グループにジョインする社が広がり、従業員はグループ全体で約220人に増えました。エンジニアが全体の2〜3割ほど、クリエイティブ人材が約1割、あとはビジネス系、広告運用、ディレクターなどです。当社だけでなく、どの企業も採用には力を入れており、我々が採用したい人材と、大手企業やコンサルファームなどが採用したい人材像はかぶっている部分が結構あると思います。

 その中で、我々は単に給与面だけではなく、「働き方の自由度」を魅力に思ってもらえる取り組みを増やしていこうと考えました。その1つが「日本全国どこからでも働ける」という採用形態です。大手企業はまだフルリモートで働くところには、まだいけていないかと思います。

 特にエンジニアなど、地方にもすごく優秀な人材はおり、我々はそこにぜひアプローチしたいと考えています。ご自身のライフスタイルや家族の事情など、さまざまな理由で地方で暮らす方々に、「東京価格」でオファーを出せば、採用も順調に進めていけるという手ごたえがあります。日本全体でみると、地方と東京の給与格差がなくなっていくことはいいことだと思っています。

Image: フィードフォースグループ

――今後、日本の大企業との連携やパートナーシップに向けてのイメージはありますか。

 Eコマースとリテールに力を入れ、我々のサービス展開もおかげさまでかなり充実してきています。ですので、同様の分野の大企業の方々や、Eコマースやリテールの進化を支援したいと考えている大企業の方々で、顧客、事業主に対する新たなサービスを提供したいと思っている方々との相性は良いと考えます。

 新規事業を検討されている企業や、クロスセルが出来るような余地を考えられている企業、自社のEコマースやリテールを伸ばしたいと思われてる企業の皆さんに広くお声掛けいただけるとうれしいです。

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