Image: Astranis
Astranisは、インターネットにアクセスできない40億人をターゲットに、信頼できるブロードバンドインターネットサービスを低コストで提供している。自社開発し製造する小型衛星MicroGEOは、従来の衛星の約20分の1のサイズで、早ければ18ヶ月で製造しGEO(静止軌道)に打ち上げる。そして、ソフトウェア無線により、世界中のあらゆる地域でインターネットサービスの提供が可能だ。今回は創業者でCEOのJohn Gedmark氏に話を聞いた。

インターネットにアクセスできない地域のために

――まずはAstranisを設立した経緯は何だったのでしょうか。

 私は大学と大学院で、航空宇宙工学を専攻し、社会人になってからも宇宙産業における新しい技術、企業、ロケットや小型衛星など、業界内で起きている全てのことを見てきました。

 そして、インターネットにアクセスできない40億人以上の人々がおり、インターネットサービスへの大きな需要に対応するサービスがないことに気づきました。GEO(静止軌道)に小型衛星を固定することで、地球上の特定地域にサービスを提供できます。世界中の人々をオンラインにつなぐ手助けをしたいと思い、Astranisを設立したんです。

John Gedmark
Astranis
CEO & Cofounder
Purdue Universityにて航空宇宙工学および物理学の学位、Stanford Universityにて航空宇宙工学の修士号を取得。大学在学中から、インターンとしてロケットエンジン開発に従事。2004年にシンクタンクRoosevelt Instituteを共同で設立。2005年からXPRIZE FoundationにてDirector of Flight Operationsを務めた後、2007年に商業宇宙飛行連盟Commercial Spaceflight Federationを共同で設立しExecutive Directorを務めた。2015年にAstranisを共同で設立しCEOに就任。

衛星の小型化でコスト軽減

――御社は小型静止衛星によるブロードバンドサービスを提供しています。このサービスの特徴は何でしょうか。

 多くの人が携帯電話を使い、どこにいてもオンラインになっていますし、そうなることを望んでいます。それを可能にするために、米国内にも多くのセルラー基地局が建てられ、光ファイバー網が敷設されていますが、これを全ての地形や地域で実現することは不可能なんです。そこで、衛星によるインターネットサービスの提供が選択肢に挙がります。

 しかし、従来の衛星インターネットサービスは、2階建てバスと同じくらいの大きさで、製造に4〜5年必要で、3〜4億ドルの費用がかかり、打ち上げ費用もかなり高額です。そして、例えば、衛星1機で北米全域や南米全域の衛星テレビをカバーできるように設計されています。

 当社の小型衛星は、新しい技術により、中小規模の国や地域に集中的にインターネットサービスを提供できるよう設計されています。製造および打ち上げコストも従来よりかからないんです。インターネットアクセスがない国や地域を対象に、従来の衛星より低コストで高速サービスを提供していること。これが、他社との違いであり当社の特徴です。

Image: Astranis Astranisの小型衛星

 また、低軌道衛星を使ったコンステレーション(衛星のネットワーク化)の試みが活発に行われていますが、これは当社のアプローチとは違うんです。低軌道で衛星コンステレーションを構築し、どこでもオンラインになる通信環境を実現するためには、地球を完全に覆う数の衛星が必要になります。このアプローチには限界があるんです。

――最初はアラスカからスタートしたそうですね。

 そうなんです。アラスカは、アメリカでは最後のフロンティアと呼ばれていて、多くの人がインターネットにつながっていない地域です。そういう意味で、私たちがこのプロジェクトを始めるぴったりの場所でした。

アラスカを皮切りに、世界中でプロジェクトが進行中

――御社のビジネスモデルを教えてもらえますか。

 顧客は通信事業者です。彼らは遠隔地でもサービスを提供したいと考えています。私たちは衛星を設置して、彼らに長期契約でデータ容量を販売しています。

 あまり詳しくは言えませんが、アラスカ州の通信プロバイダーであるPacific Dataportとの契約は、最低7年間アラスカ州でサービスを提供する内容で、数千万ドル以上の価値があります。

 そして、このアラスカモデルは他の国や地域でも展開できます。今はまだ具体的な名前は出せませんが、ラテンアメリカ、中東、東南アジア、アフリカなど、世界中でプロジェクトが進んでいます。

――日本での事業展開は検討していますか?また、どういったパートナー企業を必要としていますか。

 日本も他の国と同様にインターネット接続が必要ですし、まだインターネットにつながっていない地域があれば、当社のサービスがお役に立てると考えています。

 Andreessen Horowitzがリードした投資ラウンドでは、伊藤忠商事も参加していました。伊藤忠商事は、非常に歴史がある総合商社です。彼らは、日本だけでなく、アジアにおける展開も支援できる基盤を持っています。パートナー企業に関しては、具体的なイメージはありませんが、様々な可能性があると思います。



RELATED ARTICLES
「カスタマイズ欲」強めのインドの若者の間で人気 家族写真でフォトブックやカレンダーなど製造するZoomin
「カスタマイズ欲」強めのインドの若者の間で人気 家族写真でフォトブックやカレンダーなど製造するZoomin
「カスタマイズ欲」強めのインドの若者の間で人気 家族写真でフォトブックやカレンダーなど製造するZoominの詳細を見る
複数クラウド間のネットワーク構築、半年以上の作業期間をわずか数時間に Alkira
複数クラウド間のネットワーク構築、半年以上の作業期間をわずか数時間に Alkira
複数クラウド間のネットワーク構築、半年以上の作業期間をわずか数時間に Alkiraの詳細を見る
コーヒーショップの混雑観測から始まったスマートビル革命 Density
コーヒーショップの混雑観測から始まったスマートビル革命 Density
コーヒーショップの混雑観測から始まったスマートビル革命 Densityの詳細を見る
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjuna
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjuna
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjunaの詳細を見る
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearnの詳細を見る
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.