食品・飲料産業に特化したAIプラットフォーム「Gastrograph」
―まずGastrographについて教えてください。
Gastrographは、消費者の好みを予測するために、人間の知覚をモデル化するAIプラットフォームです。
人が対象製品をどう知覚しているか、数回の観察から得たデータをモデルとして使い、他の消費者層や消費者コホート(一定時期に同一の体験等を共有している人々の集団)がその製品をどう知覚するか予測します。
また例えば「米国在住の大卒白人男性」のデータを使い、「ミレニアル世代の日本人女性」、あるいは「米国南西部のヒスパニック系アメリカ人」というように属性を分けて、その製品をどれくらい好きになるかなど、対象製品をどう感じるか予測することができます。
世界をまたぐ知覚のデモグラフィック・データ
―少量のデータを使って、全く別のデモグラフィックにおける予測を行うのですね。どうすればそんなことが可能になるのでしょう。
私たちは2009年から現在も、何万もの市販商品を対象にした独自調査をインドネシア、シンガポール、タイ、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、イギリスなど世界中で行っています。当社の調査手法は、知覚データ収集において最も活用されているQDA法やSpectrumとは全く別の非常に専門的なものです。
調査で得た、”フレーバー”、”香り”、”食感”など知覚に関する約10年分の蓄積データをもとに、AIプラットフォームにトランスレーションレイヤーを構築しました。このトランスレーションレイヤーによって、データの内容を変えることなく一つのデモグラフィックから別のデモグラフィックに変換することが可能です。Google翻訳が、フランス語から中国語、中国語から日本語のどちらにも対応できるのと同じようなイメージです。
Image: Analytical Flavor Systems
―調査は一般消費者を対象に行っているのですか?
いえ、訓練を受けたテイスターを対象にしています。ただし、当社が調査対象にしているのは一般消費者で、調査の過程でテイスターとして訓練を行うため、ある意味一般消費者と言えるかもしれません。
―他社の類似サービスはありますか。
IBMのAI「Watson」がベースになっている「Chef Watsonシェフワトソン」というアプリケーションが類似サービスと言えましたが、うまくいかなかったようなので、現時点では当社が競合と考えるサービスはありません。
市場機会があるなら世界中どこにでも行きます
―アジアへの進出について聞かせてください。
2019年末にシンガポールに事務所を開設する予定で、同年中に中国にデータ収集拠点を設けることも検討しています。
現時点では、米国内での業務は全体の30%程度で、残りは米国外の様々な国で行っています。インドネシア、タイ、ニュージランド、オーストラリアそしてシンガポールで活動実績があり、アジアは最も多く調査を行っている地域です。
ただ、当社はとてもユニークで、顧客にとって市場機会がある国に“進出”しています。当社の顧客のほとんどがグローバル企業なため、例えば米国内の顧客でも商品の販売はベトナムという場合、私たちはベトナムで作業を行います。顧客の所在地よりも、顧客の商品が販売される国つまり市場機会がある国が当社の進出先になります。