ディベロッパー向けにクラウド電話APIを提供するTwilio。同社はすでに2億3370億ドルを資金調達済みで、“ユニコーン企業(時価総額10億ドル以上)”の仲間入りを果たしている。グローバル展開にも力を入れており、日本市場でも2012年にKDDIと事業提携をして、サービス展開している。今回は創業者でCEOのJeff Lawson氏に、起業の経緯、コミュニケーションの未来などについて聞いた。

Jeff Lawson
Twilio
Co-Founder & CEO
ミシガン大学にてコンピュータサイエンス、フィルムビデオを専攻。1998年にVersityのCEO & CTO、2000年にStubHubのFounder & CTO、2000年にNineStarのFounder & CTO、2004年にAmazonのTechnical Product Managerを務める。2008年にTwilioを設立し、Co-Founder & CEOに就任。

わずか数行のコードで 電話を導入できる

―まず事業内容を教えてください。

 「Twilio」は、電話・SMS(ショートメッセージサービス)とインターネットを、数行のコードでつなぐことができるAPIサービスです。私たちはディベロッパー向けにグローバルにサービスを提供しており、電話、ビデオやボイスチャットなどをどんなアプリケーションにも簡単に組み込むことができます。大きな投資や設備は必要ありません。

―どんな企業が御社のサービスを使っていますか。

 現在、70万超のディベロッパーが利用しています。エリアは世界のすべての大陸、すべての国で利用されており、大手企業から個人事業主まで、幅広い顧客がいます。具体的には、米国のスタートアップだと、Uber、Airbnb、Boxなど。日本ではKDDIと事業提携をして、ヤフー、リクルート、福岡市などに導入されています。

 「Twilio」自体は、顧客の裏側のシステムを提供しているため、多くの人に知られた存在ではありません。でも実際、知らないうちに多くの人が私たちの製品を使っています。ディベロッパーが「Twilio」を使ってシステムを開発し、彼らのユーザーが便利になる、それがとてもうれしいですね。

世界のディベロッパーに 導入される理由

―なぜ「Twilio」は多くの企業に利用されていると思いますか?

 まずディベロッパーにとって使い勝手がいいことです。私たちは4人のメンバーで創業しましたが、創業者全員が力を注いでいるのが、使い勝手の良さです。私たちは電話やショートメッセージなど、ディベロッパーが解決しようとしている課題にぴったりなソリューションを取り揃えています。そしてそのソリューションをすぐに試せて、低コストで始められるようにしています。

 次に世界規模でサービス提供している点です。ご存知のとおり、いまやソフトウェアは、グローバルビジネスになっています。スマホのアプリであれば、1晩で150カ国のユーザーが利用するようになります。「Twilio」の仕事は、世界中にサービスを提供するディベロッパーをサポートすることだと考えています。

―あなたは、これまでに3社を起業したシリアルアントレプレナー(連続起業家)です。Twilioを創業したきっかけを教えてください。

 私は3社の起業後、アマゾンを経て、Twilioを立ち上げました。アマゾンを辞めるとき、多くのビジネスアイデアを考えました。その時、私がこれまで作ってきた会社には共通点があることに気づきました。それは「ソフトウェアを活用していたこと」と「ユーザーの使い勝手を改善するためにコミュニケーションが必要である」ということです。

 しかし、それまでソフトウェアにオンラインコミュニケーションを大規模に導入しようとすると、200万ドルコストと2年間の時間が必要でした。200万ドルと2年間ですよ? 一般的に200万ドルの予算は高すぎるし、それよりもソフトウェアの世界において2年間というのは長すぎます。そこで私たちが2008年にTwilioを創業しました。ディベロッパーたちが迅速に低コストでコミュニケーションを導入できるようにしたのです。

ソフトウェアが150年ぶりに コミュニケーションを変える

―今後、コミュニケーションのあり方はどう変わっていくと思いますか?

 ソフトウェアが150年ぶりにコミュニケーションを変えていくでしょう。150年前、グラハム・ベルがスピーカーにワイヤーをつなげ、マイクと銅線を使って最初の電話をかけました。現在、電話は進化して、真空管、トランジスター、集積回路を発明し、さらにそれらを小型化しました。そして銅線は光ファイバーに変わりました。しかし、私たちの電話の使い方はほとんど変わっていません。オペレーターを通す方法から回転式ダイヤル、プッシュボタンに変わったくらいです。プッシュボタンの電話は1960年に登場し、それから現在まで機能的には何も変わっていません。

 今にソフトウェアがそれを大きく変えます。もっとも面白い点は、アプリにコミュニケーションを統合することです。そうすることで、相手にアプリの持つ文脈的情報を伝えることができるのです。

 たとえば、配車アプリの「Uber」の場合、アプリ経由でドライバーに電話ができます。ドライバーはアプリ経由であなたが誰で、これからどこに行こうとしているのか、今どこにいるのかを正確に把握した上で、ユーザーとコミュニケーションできます。あなたのユーザーIDやセキュリティチェックの質問をする必要はありません。

 一方、あなたが飛行機の搭乗スケジュールを変更するとします。この場合、150年前と同じやり方のままです。航空会社に電話をして、自動音声に従ってダイヤルし、しばらく待った後に受付の人が出てきます。受付の人とやっと話ができると思ったら、またあなたの情報について質問された上で、搭乗スケジュールを変更したい旨を伝えないといけません。こういったやり方は昔ながらで、無駄が多すぎます。アプリで文脈を事前に伝え、もっと効率的なコミュ二ケーションが実現できると思うのです。

小規模チームでなければ 何も成し遂げられない

―創業から会社規模がグローバルに拡大していく中で、どのように組織をマネジメントしていますか?

 私たちは会社全体の規模が大きなくっても、「小規模チーム」という考え方で動いています。プロジェクトごとに5~10人ほどの小さなチームにしています。なぜかというと、大規模なマネジメントというのは、何も成し遂げられません。小さなグループが自分の課題に集中して取り組むことで、成果が得られると考えているのです。

 Twilioでは、逆ピラミッドの組織といえます。一般的にはピラミッドの頂点はCEOです。私たちの組織で一番大事なのは顧客で、その次に大事なのは、顧客と最も近い小規模チームです。なぜなら小規模チームは顧客と直接コミュニケーションし、顧客にとって必要なものが何かを理解しているからです。経営チームは小規模チームに権限委譲し、彼らが顧客に集中できる環境を整えているのです。

―最後に、今後のビジョンを教えてください。

 世界中のあらゆるディベロッパーがTwilioを使って開発するようにすることです。そのため、現在グローバル展開に力を入れています。2015年はヨーロッパ、南アメリカ、アジアなど8つのオフィスを開設しました。今年は特にアジアにも力を入れ、シンガポールと香港にもオフィスを開設します。ぜひ成長目覚しいアジアのディベロッパーを支援していきたいと思います。



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