2014年5月にニューヨーク市場に上場を果たし、ヘルプデスクサービスの分野でグローバルトップをひた走るZendesk(ゼンデスク)。同社のサービスZendeskは、世界140ヵ国、4万5,000社に利用されており、Adobe、Disney、IKEA、サイボウズなどそうそうたる顧客企業の名が並ぶ。2007年、デンマーク・コペンハーゲンで創業。わずか560万人の人口しかない小国で、同社の挑戦は始まったのだ。いかにしてデンマークから世界進出を成功させ、グローバルトップにのぼりつめたのか。CEOのミッケル・スヴェーン氏に起業の経緯、成長の理由などを聞いた。

Mikkel Svane
Zendesk
CEO&Founder
1971年、デンマーク・コペンハーゲン生まれ。Université Paris-Sorbonne (ParisIV)、Århus Købmandsskoleを卒業。CAPUTの創業、ITコンサルタントを経て、2007年にZendesk(ゼンデスク)を創業し、CEO&Founderに就任。

世界140ヵ国、4万5,000社、3億人のカスタマーが利用

―御社の事業内容を教えてください。

 カスタマーサポートのヘルプデスクサービスZendeskを提供しています。企業にとってお客さまとのコミュニケーション手段は、メールや電話だけでなく、Twitter、Facebook、チャットなど多岐にわたっています。Zendeskは、複数チャネルでのお客さまへの対応を一元管理。低コストでスピーディーにサポートサービスを提供することができます。

―Zendeskはどのように企業から活用されているのですか。

 Dropboxの例を挙げましょう。Dropboxは、毎日1,000件もの問い合わせをお客さまから受けています。それも、さまざまなチャネルや言語でアプローチしてくる。カスタマーサポートチームが、これらにそつなく対応したり共有するには、とても煩雑で時間も手間もかかってしまいます。

 Zendeskを使えば、この膨大な問い合わせを一元管理でき、スタッフ間での情報共有も簡単にできます。また、過去のサポート履歴もすべて蓄積して、簡単に検索できる。そのため、カスタマーサポートの質やスピードが向上するのです。

―Zendeskのサービスは世界中で使用されていますね。

 ええ。当社のオフィスは、本社拠点であるサンフランシスコをはじめ、2013年3月に株式会社設立を発表した東京、ロンドン、サンパウロ、メルボルンなどさまざまな国の都市にかまえています。そして私たちのサービスは世界140ヵ国、4万5,000社、3億人のお客さまに利用していただいているのです。

―社名にはどういう意味が込められているのですか。

 “Zen”は日本の「禅」に由来しています。簡素で品格があり、効率的なもの、という意味を込めています。私たちのサービスのコンセプト、サービス観を的確に表現したつもりですよ。

コンピュータが好きで子どものときから“起業家”

―ミッケルさんの起業家としての原点についてお聞きします。幼少期はどのような子どもだったのでしょう。

 私はデンマークのコペンハーゲン生まれで、小さい頃からずっとコンピュータをいじっていました。コンピュータとともに育ったといっても過言ではありません。いつもコンピュータで、なにか新しいことをやろうとしていました。そういう意味では、子どものときから“起業家”でしたね。

―それからどのように起業にいたったのですか。

 実際に初めて起業したのは1996年、25歳のとき。きっかけはサンフランシスコに旅行で訪れたことでした。当時、インターネットが勃興した時代で、その最先端を目の当たりにして衝撃を受けました。それで「これからインターネットの時代が来る」と。コペンハーゲンに戻ってすぐに会社を立ち上げ、Webサイトの制作やソフトウェア開発の事業を始めました。ドットコムバブルも追い風となって、一時期は30名規模にまで成長しました。ところが2002年、ドットコムバブルがはじけてしまった。事業の先行きが見えなくなり、会社は解散しました。

―その後、Zendesk(ゼンデスク)を創業した経緯を教えてください。

 会社解散後、ドイツのコンサルティング会社でカスタマーサポートのコンサルティングをしていたのですが、当時使用していたソフトウェアがひどくて(笑)。非常に古くて遅くて、しかも操作が複雑。もっと使いやすく、速いサービスを実現できないかと考えたんです。

 友人に声をかけて、オリジナルサービスを開発したところ、顧客の反応がとてもよかった。そこで会社を辞めて、仲間と3人でサービスに集中することにしたんです。

スタートアップの土壌も応援してくれる投資家もナシ

―会社を立ち上げてから苦労したことはありましたか。

 苦労ばかりでしたよ(笑)。自己資金だけで始めたので、運転資金に余裕はありません。まずは、コペンハーゲンに小さなロフトを借りてのスタート。30代後半の男3人で働く、むさくるしい仕事環境でした。

 そして当時のコペンハーゲンは、スタートアップの歴史も文化もなかった。応援してくれる投資家もおらず、最初の2年間は苦しい時期が続きました。

―ターニングポイントはなんだったのでしょう。

 2008年にシリコンバレーに拠点を移し、ベンチャーキャピタルからの資金調達に成功したことですね。やはりデンマークは人口560万人しかない小国なので、どうしても市場が小さい。事業を大きく成長させるためには、グローバルマーケットにうって出ていく必要がありました。そこで事業が伸びてきたタイミングで、思い切ってコペンハーゲンからシリコンバレーに本社を移したんです。

―どうしてシリコンバレーを選んだのですか。

 それには数え切れないくらい、たくさんの理由があります。まず気候がよい。それから伝統的にすばらしいベンチャー企業が育ってきた風土がある。さらに高い専門性を持った人材、企業の成長を加速させる支援者がたくさんいる。事業提携のパートナー、新しいサービスを積極的に導入するユーザーもいる。

 そもそもシリコンバレーは、アメリカでゴールドラッシュが起きたところ。その開拓精神、挑戦精神が脈々と受け継がれているエリアです。トライアンドエラーを繰り返しながら、ものごとを成功させる風土があるのが大きかったですね。

外国企業がシリコンバレーで大型の資金調達に成功した理由

―本社を移すにあたって、シリコンバレーにサポート体制はあったのですか。

 いいえ。そのため、資金調達を受けられる見込みはまずなかった。さらに、当時はまだシリコンバレーのベンチャーキャピタルは、外国企業に投資する機会も少ない状況。それでも自分たちのサービスの可能性を本気で信じていたからこそ、移転を決断したのです。

―逆境のなか、どうやって資金調達に成功したのでしょう。

 一番の理由は、私たちの事業が加速度的に成長していたからだと思います。また、シリコンバレーにZendeskを利用している企業もあり、私たちのサービスのよさをベンチャーキャピタルの方たちが伝え聞く機会も多かったのだと思いますね。

 そしてベンチャーキャピタルを訪問した際には、カスタマーサポートの業界は古いこと、さらに、私たちなら新しいやり方でカスタマーサポートを変えられることを熱弁しました。結果、私たちのことを信じてくれるベンチャーキャピタルがあらわれ、投資を決断してくれたのです。投資が決まった後は知名度が向上し、グローバルでの事業展開も一気に進みました。

―改めてグローバル市場で成長できた理由を教えてください。

 理由は3つあります。1つ目は、よい経営チームを持ったこと。優秀な人材はどこからも引っ張りだこです。優秀な方たちに「この会社に参画したい」と思わせなければいけません。2つ目は、業務改善を繰り返し、最適な業務プロセスを構築してきたことです。よい業務プロセスは事業拡大の助けになります。最後に、いつでもスタートアップのメンタリティを持っていることです。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 私たちのミッションは、クライアントとクライアントのお客さまがすばらしい関係を築くこと。そして『Zendesk』を利用しなければ、それが実現できないとクライアントに感じていただけるサービスを心がけていきます。

若いうちに旅をせよその経験から学べ

―最後に、起業したいと考えている若者にメッセージをお願いします。

 4つのメッセージがあります。1つ目は、旅せよ、ということ。私には4人の子どもがいるのですが、いつも「若いうちに世界を旅しなさい」と伝えています。世界各国のカルチャー、言語、人々から刺激を受け、学びなさいと。そして自分独自のものをつくり上げなさいと話しています。

 2つ目は、グローバルで考えることです。グローバルの視点でものごとを考えることは、事業をスケールさせる助けになります。3つ目は、失敗し、失敗を受け入れることです。新しいことにチャレンジするとき、当然失敗する可能性のほうが高いわけです。失敗を恐れてはいけません。失敗を受け入れ、前に進むことが大事です。

 最後に、矛盾を乗り越えながら、経営の舵を取れということです。起業家は、自らの事業、マーケットの可能性を信じなければいけない。しかし、一方で、目の前の現実を見すえ、クールにもならないといけない。このバランスが難しい。また、経営をしていくなかでは矛盾がたくさん生じてくる。この矛盾を乗り越えながら、事業を前に進めていかなければならない。そのプロセスこそが、自分の会社をつくりあげていくのです。



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