保険会社と資本市場をつなぐマーケットプレイスを運営するVesttoo。イスラエルに本社を構える同社は、昨今のボラテリティが激しい市場に身を置く投資家に対し、乱高下が少ない通常の生損保リスクに対する「再保険市場」のリスク債券を提供することで注目を集めている。同ビジネスモデルは保険会社にとっても、これまでの再保険市場におけるコストが高騰化する中、低廉で安定的なリスクカバーを受けやすいというメリットがある。同社共同創業者であり、CEOのYaniv Bertele氏に話を聞いた。

最大の差別化ポイントは「AI」 ポートフォリオの多様化へ

――御社はどのようなサービスを展開しているのでしょうか。

 Vesttooは、保険業界と金融機関をつなぐプラットフォーム「The Vesttoo Marketplace™」を運営しています。今日、保険会社がカバーする保険の領域はとても広く、金額も大きいです。自然災害や損害請求額が大きい事故など予測できない事態が発生したときのために、彼らは再保険制度を導入しています。

 再保険でリスクカバーを受けるためには高いコストが必要です。そこで、資本市場にいる金融機関やファンドなどの投資家が登場します。彼らはさまざまなアセットに対して投資を行いますが、再保険における保険リスクもその一つです。同リスクは、債券や株式などの金融商品に比べると、ボラテリティが少なく、リスク分散のための投資にうってつけです。

 Vesttooは、生命保険・損害保険に基づくリスク移転と投資のための世界初のビジネスモデルとその具体的な取引の空間である「マーケットプレイス」を提供しています。AIを活用した独自の技術により、保険会社と機関投資家間のリスク移転を促進し、あらゆるタイプの資産運用会社に保険連動型投資を提供するとともに、生命保険・損保市場におけるリスク移転と流動性を向上させます。

Yaniv Bertele
スウェーデンのGöteborgs universitetにて数学・理論物理学の修士号を取得後、ダイビング装置開発企業のPoseidon Diving SystemsにてVP Business & Product Developmentを務める。イスラエルの国営水事業会社のCVCでクリーンテックへの投資業務などに携わった後、CTG Holdings、Goji、Consumer Physicsといったディープテック企業で事業開発担当VPなどを務め、2018年にVesttooを共同創業、CEOに就く。

 Vesttooの役割を端的に説明すると、保険会社には、これまでにない効率的な再保険リスクカバー提供し、投資家にはこの保険リスク債券により新たな投資運用の機会を提供する、ということになるでしょう。当社はサイバー攻撃や自動車保険などの損害保険から、生命保険まで幅広い保険商品を販売する企業を対象にしています。

「The Vesttoo Marketplace™」の競合他社との最大の差別化ポイントは、AIにより、最適なソリューションを提供することにあります。たとえば、自動車保険を販売する保険会社の場合、大事故や傷害に対する保険パッケージは、顧客数が増えるにしたがって、保険金請求の総額も増大していきます。ということは、当該保険に対する掛け金の金額も広がり、保険会社のバランスシート上の負債額も増えるので、保険でカバーできない部分のリスクを最小限にする必要があるのです。

 Vesttooは、それぞれの保険パッケージの範囲の妥当性とそれに準じた保険価格を膨大な量のデータを組み合わせたAIで計算し、最適な数字を提示します。そして投資家に安定的な金融商品を提供する、という流れです。

 当社のAIは、何百もの保険商品のモデルをデータとして解析し、何千もの試験を実施した上で、主な投資家である金融機関に最適な金融商品を届け、結果、効率的なポートフォリオの達成を促します。また、プラットフォームである「The Vesttoo Marketplace™」の正確性を高めるため、多くのデータサイエンティストや金融のプロフェッショナルと協業し、この精度向上を図っています。

ボラテリティが高い市場環境下で、より求められるように

――御社の収益モデルを教えてください。

 保険会社と主な投資家である金融機関間の取引が成功するごとに、マージンをいただく形です。マージン率は、想定元本と該当保険の損害賠償額をベースに計算されます。

――Vesttooの成長可能性は、どの程度あるとお考えでしょうか。

 保険業界をマクロで見たときには、今後さらに負債をヘッジしていく(再保険用でリスク移転をしていく)必要があると考えています。保険商品が増えていくにしたがって、再保険市場も拡大していて、彼らは支払いリスクに対して非常に慎重になっているからです。これは、世界中で長寿が当たり前になり、多くの保険商品が開発されてきた事実とも軌を一にしています。

 さらに、保険市場に投資する投資家にとっては近年、新型コロナウイルス流行やウクライナ情勢、金利環境など、ボラテリティが高まっていることも、Vesttooが求められている理由の一つです。

 このような不安定な市場環境では、投資の対象を絞ってしまうと、大損をする可能性があるため、投資を分散しやすいポートフォリオの構築がますます求められているのです。Vesttooは先ほどお話した通り、それぞれの保険商品に対する詳細な分析をAIでできるからこそ、投資家に求められているのです。

Image:Vesttoo HP

――「The Vesttoo Marketplace™」を利用している顧客の成功事例を教えてください。

 まず、保険会社の事例からお伝えしましょう。当社は自動車保険を販売する保険会社を多く抱えています。彼らの商品(保険)の前提は、自動車事故を起こした時や法的義務に対するものなどさまざまありますが、Vesttooは被保険者のデータや事故の履歴などをアルゴリズムで計算し、掛け金を計算します。

 その後、当社が投資家サイド、つまり銀行やヘッジファンドなどの金融機関に「独立第三者間において同種の取引が行われた場合に成立する価格」の情報を提供します。Vesttooが保険会社と投資家の間に介在するとことで、保険会社にとっては、再保険のリスクカバーを効率的に獲得しやすくなり、投資家にとっては、収益性の高い金融商品を見つけることができるのです。

日本支社を設置 2023~24年は取引開始で成長ステージに

――御社はGoldman SachsやMouro Capitalなどから、約1億300万ドルの資金を調達しています。また日系のMS&AD Venturesも投資家に名を連ねています。調達した資金の使い道を教えてください。

 調達した資金は、Vesttooの成長のために使っていきます。特に、M&Aにも興味がありますので、そちらも考えていきたいですね。当社の投資家は、①投資の分散というトレンド、②過去二年間のVesttooの成長、③AIというテクノロジー、④マーケットプレイスというビジネスモデル―の4つに注目して、投資を決めたのだと考えています。以上4つの特徴を兼ね備えた企業はあまりありませんので、これからもより多くの投資家を惹きつけていくことでしょう。

――日本市場をどのように見ていますか。

 当社はすでに東京に日本支社を設置し、日本企業の顧客も抱えるなど、進出済みです。日本はとても大きな市場で、とくにここ数年は損害保険と生命保険の双方とも成長しています。

 また、サイバー保険や医療保険もホットな市場ですね。市場が拡大するなかで、日本は行政を含め、ソルベンシー・マージン比率(保険会社の健全性を測る指標で、通常の予測を超えたリスクに対する支払余力がどの程度あるのかを判断する)の見直しなど、キャピタルサイドのリスクを低減する措置が必要になってくるでしょう。私たちにとっては、とてもユニークな市場に参入する、と言えるかもしれませんね。Vesttooの日本における取引開始と成長は最速で2023年以内、遅くとも2024年に実現されるでしょう。

Image:Vesttoo HP

――日本の大企業との提携を考える場合、どのような形態のパートナーシップが理想でしょうか。

 保険業界とも、投資家サイドともにパートナーシップを構築する考えがあります。すでにいくつかの仲介業者や金融機関とは話をしています。とくに、保険や再保険市場に詳しい仲介業者とは、ブローカー契約を締結したいと考えています。米国や欧州以外の市場に参入するためには、地域のことを知る必要があるためです。

――最後に、御社の長期的な目標を教えてください。

 Vesttooを、保険業界と資本市場にとって、なくてはならない存在に成長させることです。「The Vesttoo Marketplace™」を流動性が高く、投資家にとっても保険会社にとっても収益性を高めるツールにさせたいですね。



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