Image: Vast Data
VAST Dataは、技術面では革新的でありながら、製品サービスの質、セキュリティ、利益面および資金面では非常に安定したスタートアップだ。AI、機械学習やディープラーニングを使った次世代アプリケーションのフル活用を可能にするストレージシステムとして、圧倒的な存在感を放つ。今回はFounder & CEOのRenen Hallak氏に話を聞いた。

単一階層アーキテクチャにより、階層型ストレージの問題を全て解決

―まずはCEOの経歴と、VAST Dataについて教えていただけますか。

 私は、イスラエル出身で、コンピューターサイエンスを専攻しました。イスラエル軍では、指揮統制システムを開発しました。その後、EMCで3年半、そしてXtremIOというイスラエルのスタートアップでR&D部門の責任者を務めオールフラッシュアレイを開発しました。

 私がストレージに関わり始めたのは、EMCからです。そして、市場の開拓、マーケティングや販路の構築方法もEMCで学びました。XtremIOで開発したオールフラッシュアレイは、売上を0から1年で12億ドルに増やし、その後約3年間で30億ドルに成長させた後、私は新しいことを始めるために同社を退職しVAST Dataを設立しました。

Renen Hallak
Founder & CEO
イスラエル出身。イスラエルにてコンピューターサイエンスの修士号と博士号を主席で取得。博士論文が、学術誌「Computational Complexity」に掲載され、国際会議「Theory of Cryptography Conference」に登壇した。前職では、「XtremIO」でオールフラッシュアレイのアーキテクチャと開発を担う部門の責任者を務め、2016年にVAST Dataを設立、CEOに就任。
 VAST Dataは、従来の階層型ストレージが抱えている様々な課題を解決する新しいストレージ「Universal Storage」をご提供しています。今から約5年前、VAST Dataを設立する前に、ストレージに関わる方々に、既存システムにおける課題やペインポイントをヒアリングしたところ、皆が、階層型ストレージにおける、パフォーマンス、スケーラビリティ、運用管理の複雑化など、同じ課題やペインポイントを抱えていました。

 更に、AI、機械学習やディープラーニングなどを使った分析など、新しいテクノロジーの活用が始まっており、データセット全体に高速アクセスできるストレージシステムが求められ始めていました。階層に分けてデータを保管し、システム間でデータを移動しながら管理する従来の階層型ストレージ管理システムで対応していこうとすると、コストがかかりすぎますし、次世代アプリケーションのニーズに完全には対応できません。データが階層に分かれ、一部のデータセットにしかアクセスできないようでは、AIなどの技術を使っても正しい分析を行うことができず、正確なインサイトを得ることはできません。

 「Universal Storage」は、単一階層アーキテクチャにより、大容量、高速、低コスト、物理的に省スペースで、更にパフォーマンスとスケーラビリティをそれぞれ増やすことが可能です。レジリエンス(回復力)においても、他のシステムと比較して最も優れています。

―ハードウェアも御社で開発していますか。

 一般的な既存ハードウェアでは「Universal Storage」を実行することができません。新しいハードウェアテクノロジーが必要なため、ハードウェアアプライアンスをご提供していますが、ハードウェアの開発は一切行っていません。現在も当社はソフトウェアのみ自社で開発していますが、今後2から3年でハードウェアアプライアンスをやめ、ソフトウェアのみご提供できるいように、変えていきたいと考えています。

単一のNamespace内で最大1エクサバイトまで取得できる

―実際にどういった分野で御社のプロダクトが使われていますか。

 2018年12月末に販売を始め、1年を過ぎたところですが、本番環境で「Universal Storage」をご利用いただいている顧客が数十社/機関います。そして、平均販売価格は100万ドル以上の大規模案件がほとんどです。

 顧客には、ライフサイエンス分野、ゲノミクス研究分野、大学、医用画像処理や医薬品や、ヘッジファンド、他には自動運転分野など、AIを使った取り組みを行っている企業等が多いです。また、政府系の情報機関や宇宙機関、国立衛生研究所など、政府機関でも使っていただいています。後は、アニメーションスタジオでも、ご利用いただいていますね。

―本年4月のシリーズCでは新たに1億ドルの資金調達に成功され、企業価値は12億ドルに達しました。

 そうですね。今回のラウンドで1億ドル調達し、それ以前の2つのラウンドで合わせて8000万ドル調達しているので、トータル1.8億ドルの資金調達に成功しています。当社では、製品の品質保持、安全なストレージ環境のご提供、そして機能性の向上に必要な開発費用は惜しむことなく使っていますが、現在まで約4000万ドルしか使っていません。残りの資金は手つかずのままあります。これはなぜかと言うと、先にお話したように、当社の製品の平均販売価格は1件100万ドルを超えていることが影響しています。平均販売価格が高いということは、営業担当者は2から3人で対応できるため、人件費が抑えられています。そして、市場投入が非常に効率的だったことも理由の1つです。

 当社は、十分な資金を持った、長期的な取引に対応できるスタートアップです。現在は米国を拠点に、海外では英国にチームが1つあるのみですが、今後は国際的に事業を展開して行きます。ヨーロッパにも進出したいですし、日本、オーストラリアやシンガポールなどの東南アジアなど、世界中で事業を拡大し、ストレージ問題を解決していきたいと考えています。そして、2020年から、ストレージの枠を超え、次世代インフラストラクチャに対応する、様々な製品の開発を始めています。

海外への渡航制限が解除されたら、最初に行くのは日本

―日本での展開も視野に入れているとのことでしたが、既にパートナーはいますか。

 当社では、販売は全て販売代理店を通じて行っています。日本では、ノックス(NOX)社というパートナー企業が1社います。今年の3月から日本で本格的に活動を始め予定で、私も日本に行く予定でしたが、叶わずにいます。

―最後に、日本の読者に向けてメッセージをお願いします。

 日本の皆様を含め全ての方にお伝えしたいのは、ストレージで妥協しなくていいと言うことです。ストレージのボトルネックを心配することなく、新しい分析やAIを使ったテクノロジーを活用し、事業を成功させてください。

 日本でも、皆様の事業を成功させるために、当社は全力でサポートいたします。



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