TripActionsは出張の手配、キャンセルと変更、経費の支払いに使えるコーポレートカードおよび精算処理まで、ワンストップで管理できるプラットフォームを提供してきた注目スタートアップだ。COVID-19の影響を大きく受けた旅行業界において、2020年6月に新たな資金調達に成功。潤沢な現金資金を保有し、TripActions Academyなど、「新しい日常」に適応した新サービスや新機能を既に提供している。今回は、CMOのMeagen Eisenberg氏に話を聞いた。

従来の出張は、手配に手間、時間、コストがかかりすぎていた

―まずはご自身の経歴と、TripActions設立の経緯を教えていただけますか。

 私は約1年前からTripActionsでCMOを務めています。現職の前は、オープンソフトウェアのドキュメント指向データベースの開発とサポートを提供しているMongoDBのCMOを4年間務め、上場を果たしました。その前は、電子署名ツールのDocuSignでデマンド・ジェネレーション(需要創出)を担当していました。

 TripActionsは、レガシープラットフォームに対する物足りなさからインスパイアされています。これは、創設者のAriel(Cohen氏)とIlan(Twig氏)、そして仕事で出張した事がある多くの人が感じていたことだと思います。例えば、従来の出張予約システムでは正しい空席数など在庫数がわからず、サポートが必要な時には電話で代理店に問い合わせなければなりませんでした。そして、電話口で、自分が誰なのかを照合してもらうのに永遠と感じるほど長時間待たされ、更に、電話で問い合わせるたびに費用が発生していました。私は、出張予約システムは使わず、いつも自分で航空会社に直接予約、または消費者用のサイトで手配していました。

 ArielとIlanは、自分たちの経験を通じて、全てが1つに統合されているプラットフォームが理想的だと考え、TripActionsを設立しました。空席や空室などの正しい在庫情報にアクセスでき、出張者が望む価格で、望むものを手配できる、満足度の高い経験を提供し、24時間365日で無制限にチャットや電話などでサポートを受けることができるプラットフォームです。

 レガシープラットフォームにおいて、不便だと感じた経験が元にあるため、TripActionsでは、ユーザとエクスペリエンスを最重要視しています。そして、ユーザエクスペリエンスに優れたツールとして、多くの方にご利用いただいています。

Meagen Eisenberg
TripActions
CMO
Yale School of ManagementにてMBAを取得。IBMにてWW Product Marketing Managerを務めた後、2011年まで複数のスタートアップでMarketing Directorなど要職を務めた。その後、2015年までDocuSignにてVP of Customer Acquisition & Marketing、2019年までMongoDBにてChief Marketing Officerを務めた。2019年より現職。

予約手配、広告代理店サービス、経費支払い、精算のオールインワンプラットフォーム

―オールインワンプラットフォームとして、他にはどのような機能がありますか。

 ビジネス旅行でも、コストを管理し価格交渉ができるべきですし、出張者の所在地を把握する必要があります。COVID-19が流行したことで、誰がどこに出張に行く予定があるか、そして出張者がどこにいるかを把握し、早急に彼らに連絡を取る必要性を多くの人が実感したのではないでしょうか。出張を可視化し、こうした情報を全て提供している当社のプラットフォームがお役に立てました。

 これに加え、COVID-19への対応として、ブラックリストを作成し、リストに含まれる特定の場所や観光地だけを閲覧できる機能も構築しました。当社パートナーの旅行管理会社が、ブラックリストに情報を登録しています。現在ブラックリストには、全世界の情報が含まれています。また、COVID-19の状況は流動的で、日々変わりますので、CDC(米国疫病予防管理センター)の情報をリアルタイムで、直接当社のプラットフォームに取り込めるようにしています。

 COVID-19以前からの機能としては、例えばロンドンに出張することになったとします。当社のプラットフォームでは、AIを使い、個々のユーザの好みやロイヤリティに合わせたホテルとフライト情報を自動的に取り入れ、スケジュールを立てます。他のユーザが滞在したホテルを見ることもできますし、オフィスや特定の訪問先の近くのホテルを探し出すことも可能です。ほとんどの方が6分以内で予約を完了します。予約後に、キャンセルや変更の必要があれば、自分でも行えますが、代理店にチャットで依頼することも可能です。多くのユーザがチャットを利用していますが、電話でのお問い合わせにも対応しています。

 他に、TripActions Liquidというコーポレートカードもご提供しています。このカードは、全ての経費の支払いに使うことができ、領収書はプラットフォームに自動的に集約されるので、出張後の領収書の整理や経費の精算は不要です。  

―同業他社サービスとの違いを教えてください。

 多くの旅行管理ツールがありますが、予約システムと旅行代理店がオールインワンになり、コーポレートカードの提供と、そのカードで支払った経費の精算までエンドツーエンドで管理できるプラットフォームはTripActionsだけです。

 TripActionsのNPS(ネットプロモータースコア)は非常に高く、多くの方にご利用いただいていること自体が、他のサービスとの違いを表していると思います。利用者が多いことで、可視性を確保しながら、データ取得および共有による出張者の保護と保護義務の履行、コスト管理や交渉などのメリットを享受しています。

実際に会うことは利益につながる。今後も出張は不可欠

―今後の目標として日本での展開も視野に入っていますか。

 そうですね、視野に入っています。過去の経験から、日本での展開においてプロダクトマーケットフィットに加え、パートナーシップが重要だと考えています。

 まずは、日本の企業や出張者が必要とするプラットフォームをご提供すること。これを実現するためには適切なパートナーとサプライヤーが必要ですし、予約、出張、経費の支払いや精算の方法も、日本のやり方とニーズに合わせる必要があります。そして、日本市場に詳しく、マーケティングと販売方法を理解している強力なパートナーが必要です。

 例えば、ヨーロッパ市場に参入した時は、既存顧客である米国の多国籍企業のサポートがきっかけでした。出張先で出張者をサポートするために、まずは現地に旅行業の専門家チームを設け、現地のサプライヤーとのパートナー関係を構築しました。ヨーロッパでは米国より鉄道の利用が多いなど違いがあります。ヨーロッパに適合するセールス、カスタマーサクセス、マーケティングチームを設けてから、次にオペレーションチームやエンジニアリングチームを結成し、ヨーロッパのローカル企業へのサービス提供を実現しました。このやり方は日本でも適用できると考えています。

 現在は、COVID-19の影響を大きく受けていますが、数カ月後には経済活動は再開せざるを得なくなるでしょう。当社のプラットフォームでは、COVID-19によりキャンセルになった出張費用の先払い分は、クレジットとしてプラットフォームに残し、今後の出張に自動的に使用できるようにしました。出張はビジネスにおいて必要不可欠だということは変わりませんが、変化はあると思います。マスクの着用、手の消毒、中央の座席は空けて座るようになり、握手もしなくなるでしょう。しかし、10万ドルの取引を、電話だけで済ませるビジネスマンはいません。対面による関係性の構築は必須です。



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