サイバースペース活用について、世界の政府機関が同じ問題に直面
―まずはToka設立の経緯を教えてもらえますか。
私は33年以上イスラエル国防軍(以下IDF)にいた軍人です。IDFでは約27年間パイロットとして空軍に所属した後、サイバー部隊の長官を務めました。
長官時代に、様々な国の使節団とお会いする機会が多くありました。そして、サイバー分野では、どの国の政府も同じ問題に直面していることに気づきました。サイバースペースにおける防衛に加え、国家安全保障と経済発展を両立しながらサイバースペースを活用しようと、どの国も考えていました。
長官を務めた2年の間にこの問題にかなり深く関わり、サイバースペースの活用は変革期にあるものの、政府向けのサービスや製品が十分でなく、この分野にチャンスがあると考えるようになりました。
―政府向けのサイバー分野でどういったチャンスがあると考えたのでしょうか。
通常、政府機関の取引先は大手企業です。飛行機や船、タンクなどの製造業者で、ITシステム構築などの事業を行っていても、サイバースペースにおける経験と知識は浅い企業です。
サイバースペースはかなり専門的で特殊な分野です。大手企業がサイバースペースに特化した事業を始めるのはかなり大変なことですし、この分野に精通したスタートアップがあったとしても、スタートアップは政府機関の仕事は避ける傾向があります。
つまり、大手企業とスタートアップの中間的な企業が求められており、政府向けにハイレベルで強力なサイバーインテリジェンス製品を、政府が独自に作るより安価に提供する、製品志向な企業にチャンスがあると考えたのです。
IoTデバイスを使い、悪人逮捕に貢献
―Tokaは政府機関に限定し、製品を提供しているということですが、製品についてお話しいただけますか。
サイバースペースは、サイバーセキュリティなど一般的にも知られている防衛システムだけでなく、攻撃システムなどいくつかの分野に分かれています。当社は、攻撃システム寄りの製品を提供しています。
政府機関がサイバースペースで情報収集するための製品で、IoTデバイスを使った情報収集を可能にします。こうした製品は、政府機関以外の一般企業が使う必要がない物ですから、対象を政府機関に限定しています。
また、当社の製品は「ワッセナー・アレンジメント(通常兵器などの輸出を管理する国際協約)」により規制されています。デュアルユーステクノロジー製品の販売に関して、イスラエルでも「ワッセナー・アレンジメント」に則した法律があり、当社の製品を輸出する際には、イスラエル国防省の許可を得なければなりません。
―実際に御社の製品を採用している国を教えていただけますか。
具体的にはお話しできませんが、世界中の政府機関で採用いただいており、約40のチャネルがあります。当社の製品は、政府機関の中でも、情報機関や法執行機関で最も価値を提供することができます。
サイバーキャパシティ・ビルディングを担う企業に
―長期的なビジョンをお話ください。
当社は、サイバー分野におけるキャパシティ・ビルディング(能力構築)をグローバルに担う企業になることを目指しています。各国における、サイバー教育やアライメントプロジェクトを含める国土安全保障能力の構築にエンドツーエンドで関わり、国土安全保障の強化に貢献したいと考えています。
大企業もサイバー分野、特にサイバー防衛とは無関係ではいられませんから、サイバー分野におけるキャパシティ・ビルディングについて学ぶ必要があるでしょう。将来的には、大企業と協力しながら、政府を対象としたサイバー分野のイノベーションサイクルを創出し、新しいエコシステムの構築を目指します。