なるべく健康的な食事を…と思いながらも日々多忙な現代人にとっては実現するのが難しい悩みの種の1つ。コロナ禍で大幅にフードデリバリー業界が成長する中、米国発のTerritory Foodsは、できたての食事を注文できる独自のプラットフォームを開発した。CEOのEllis McCue氏に詳細を聞いた。

9万種類のデータから個人に合ったメニューを提案

――まずTerritory Foodsの概要について教えてください。

 Territory Foodsは、新鮮なできたてのミールキットを毎週お客様のもとにお届けするフードデリバリープラットフォームです。

 各ミールキットは、お客様の健康や食生活の志向に合わせて私たちのマシンラーニングプログラムによりカスタマイズされ、ローカルのシェフによって調理されます。私たちはさまざまなシェフやレストランとパートナーシップを組み、毎週入ってくる9万種類にもわたる食の好み、味、トレンド、嗜好といった消費者データを駆使してメニューを準備しています。

 Uber Eatsなどとの違いは、配送のみではなく、お客様の健康に気を配った健康的なメニューを提供している点です。ユーザーはプラットフォームにアクセスして自身に最も合うミールキットを選択することができるのです。

Ellis McCue
Territory Foods
CEO
ジョンズ・ホプキンズ大学で東アジア学を専攻し学士号を修得。デロイト社で5年ほど就労し、Gap社で製品開発やロジスティクス業務に携わる。2018年よりTerritory FoodsでVPとして就任し、現在CEOを務める。

――どうしてこのようなサービスを作ろうと思ったのですか。

 Territory Foodsは、Patrick Smith氏とRobert Morton氏の2名によって立ち上げられました。もともとはパレオムーブメント(旧石器時代に立ち返った食事法)の延長でローンチしたサービスです。

 クロスフィット愛好家であったSmith氏は、立ち上げ当初ソフトウェアエンジニアとして働いており、料理に費やす時間が全くありませんでした。そのため、掲示板でパレオダイエットに即した料理を作っているシェフを探し出して、毎週注文するから自分のためにミールキットを準備してくれないかと直談判しに行ったのです。

 そこでシェフは、複数注文できるならという条件をSmith氏に提示したので、彼は自身の通うジムでこのようなサービスに興味のある人がいないか呼びかけました。最初は数名でスタートした注文も、週を追うごとに20人、30人とどんどん増えていきました。

 ソフトウェアエンジニアであった彼は、それにビジネスチャンスを見出し、人々が出来立ての献立を注文できるようなプラットフォームを開発しました。その後、Morton氏や他の従業員も加わり、会社として成長していったのです。

プロのシェフによる手作りの健康的な食事

――他のフードデリバリーサービスと比べて、どのような点が強みですか。

 シェフと直接つながっている点です。他のD2Cモデルでは、生産工場がある場合が多いですが、その場合、工場で生産できる個数に限りがあります。私たちの場合、シェフとつながればつながるほど生産数も増えますので、そのような制限がありません。

 ユーザーが、特定の食べ物やメニューが欲しいという希望があれば、それを得意とするシェフを探してくるのが私たちの仕事です。もし見つからなくても、紹介で他のシェフとつながることもできます。このような仕組みは、ユーザーデータの分析から製品開発まで最短4週間で実現することができます。

Image: Territory Foods HP

 私たちが、ここまでシェフや飲食店との提携にこだわるのは、選択肢を増やしたいという強い思いがあるからなのです。私たちの提供するミールキットは、白糖、グルテン、乳製品といった素材を使用していません。したがって、業界の中でも私たちが前例を作りながらリードをしているのです。一から作る手間がかからず、健康的な食生活を営むことを可能にするのです。

 また、マシンラーニングが、個別のお客様の食の好みに合わせておすすめのメニューを提案してくれます。データを集約し、スマートな献立を表示することができるので、毎回ユーザーを満足させることができます。

食事と健康管理を融合し、アジア展開も視野に

――事業を成長させるにあたり、どのような点が課題でしたか。

 最大の課題は、購入してくれるユーザーが飽きないように、どのようにしてメニューの多様性を維持できるかという点でした。美味しくなさそうに見えるものを食べたいとは思いませんよね。つまり、食べ物は直接感情に訴えかけるものなのです。

 私たちの場合、D2Cというビジネスモデルを採用しているので、生産するものを消費者に直接届けています。D2Cは過去3年間で類を見ない成長を遂げました。コロナのパンデミックも含め、私たちにとってはそこがチャンスとなりました。

CEOのEllis McCue氏

 選択肢を増やし、消費者になるべく多くのものを届けるというミッションを達成するため、多くの時間や技術を費やしました。他の競合で、ここまで熱意をかけて製品開発を行っているスタートアップを私は知りません。競合他社に行っても、66%のユーザーがTerritoryに戻ってくるという統計も存在するくらいです。私たちは、多額の時間を、技術やカスタマーエクスピリエンスに投資をしています。それが結果として現れていると思います。

――今後はどのような事業展開を考えていますか。

 ビジネスの観点では、米国内22の地域で既にサービスを提供しており、より拡大していくことが目標です。

 さらにデジタルヘルスといった分野にも焦点を置いています。例えば、Fitbitといった健康管理デバイスを着用しているユーザーが多くいるので、データを数値化し各々のユーザーの健康に関するデータを追跡し、どのように貢献できるのかを模索しています。まだ開発中なので、全貌は教えられませんが、革新的なデジタルソリューションになると確信しています。

 サービスに関しては、現在リブランディグの途中でもあるので、デザイン等を変えています。もう少しコミュニティ色を強くし、各ミールキットをどのようなシェフが作っているのかなど、ストーリー性を持たせたいと思っています。

 また、季節に合わせてメニューも変えていて、200種類もの新規メニューを加える予定です。つい最近、NYを拠点とする著名シェフとのパートナーシップも締結しました。セレブシェフとのコラボレーション等を準備しているので、ぜひ期待していてください。

――2021年4月に22億円の資金調達を行いましたが、使い道はどのように考えていますか。

 一番はテクノロジーへの投資となります。コンシューマーフレンドリーなアプリケーションを設計すること、マシンラーニングやAIなど、データを活用することです。

 さらに、サービスの基盤を拡充することにも投資を行う予定です。特に設備投資等を行う必要がなく、ローカルの経済に基づいてビジネスを行うことができるのでポテンシャルユーザーにリーチしやすいと言えます。

――日本進出など国際展開は考えているのでしょうか。

 Territory Foodsに来る前、私はデロイト社でコンサルタントとして従事していて、東京の丸の内で勤務した経験があります。日本で働いた思い出は、素晴らしいもので、東京の食文化を堪能した記憶があります。その後、日本をはじめ、シンガポール、ドイツ、米国のカリフォルニア、中東などさまざまな国と地域で働いてきましたので、国際展開については、より特別な思いがあります。

 個人的な経験から、世界がどんどんデジタル化するにつれて、また、Z世代の人々のライフスタイルが多様化するにつれて、コンシューマーシップそのものが変わっていくと感じます。若い世代の人々は、家で料理をするという概念そのものがあまりない時代で育った上に、忙しくてキッチンに立つ暇もありません。料理の仕方をそもそも知らない人も多くいます。どこの国でも同じで、若い層は都心に集まる傾向があります。料理の機会があまりないのが現実です。そこに私たちはビジネスのポテンシャルを感じています。

 アジアに絞ると、健康への意識が高く日本は特に米国とは比べ物にならないほど食の質が高いと言えます。米国は常に加工食品で溢れているのにも関わらず、日本ではそのようなことがありません。アメリカも、日本を見習うべきで、私たちは企業としてそのチャンスを消費者に提供しようとしています。



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