image: Nazarkru / Shutterstock
銀行の営業時間に合わせてスケジュール調整をしたり、口座開設のための書類にうんざりしたりーー。「デジタルバンク」は、誰もが経験したことがある銀行のアノわずらわしさを取り払い、スマホで全てが完結する新しい銀行の形だ。デジタルネイティブ世代をターゲットとしており、米国のChime、英国のRevolutMonzo、ドイツのN26など海外では「ユニコーン」へと成長し、IPOを見据えるスタートアップも多い。日本は世界と比べて規模でこそ劣るものの、「みんなの銀行」を筆頭に地方銀行の系列がシーンを牽引するという独自の盛り上がりを見せている。

口座開設も、カード紛失時も、スマホで全てのサービスが完結するデジタルバンク(Monzo提供)

デジタルバンクとは:
デジタルバンクは、フィンテックやデータなどデジタル技術を活用して、オンライン上でサービスを提供する銀行。実店舗を持たず、口座開設から、送金、ローン管理、残高確認といった日常的な取引に至るまで、スマホで全てを完結できるのが特徴。デジタルネイティブなZ世代やミレニアル世代を主なターゲット層にしている。オンラインバンクとしばしば混同されるが、オンラインバンクが既存の銀行システムにオンライン上での取引機能を付与したものを指し、システムの拡張性が限定的であるのに対し、デジタルバンクはシステムに柔軟性を持ち、従来と比較して大幅に速く機能の追加や拡張が行える。

<目次>
若者世代を狙ったデジタルバンクの戦略
日本のデジタルバンクは地銀が牽引
TECHBLITZが選ぶ、デジタルバンクのスタートアップ5選
 1. Monzo(英国)
 2. Revolut(英国)
 3. Chime(米国)
 4. NorthOne(米国)
 5. Mercury(米国)

若者世代を狙ったデジタルバンクの戦略

 デジタルバンクで先行するのはやはり欧米。中でも、金融都市ロンドンを有する英国には、Monzo、Revolut、Starlingなどデジタルバンクのユニコーン企業が複数存在する。これらのスタートアップは、アプリの便利な機能もさることながら、若者世代を取り込むためのユニークな施策も特徴だ。

 Monzoは2015年のサービス開始当初、「招待制」を導入。友人などから招待を受けた人が優先的に口座を開設できるもので、特別感もあり口座開設の順番を待つ「行列」ができるほどだった。さらに人気に火をつけたのが、海外旅行中にMonzoのカードで支払った際の手数料、海外のATMで現金をおろした際の手数料を一定額の上限を設けて無料にしたこと。これらのマーケティング施策で、爆発的に利用者を増やした。

 Monzoの2023年5月時点の口座数は750万件。HSBCやLloyds Bank、Barclaysなどが牛耳ってきた英国の金融業界において、顧客ベースで英国7番目の銀行に成長している。2021年時点での評価額は45億ドルで、直近ではAlphabetの投資部門CapitalGと新たな資金調達に関する交渉を行ったことも報じられるなど、IPOも見据えた動向に注目が集まっている。

日本のデジタルバンクは地銀が牽引

 日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」は、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)の傘下で、2021年5月にサービスを開始。2周年を迎えた今年5月には、口座数が67万件を突破した。ユーザーの7割が15~39歳だという。

 みんなの銀行がサービスを開始した翌年の2022年1月には、東京きらぼしフィナンシャルグループ(東京都港区)傘下の「UI銀行」が続いた。そして、2023年9月には池田泉州ホールディングス(大阪市)も国内3例目となるデジタルバンク開業の意向を発表している。

 このように、デジタルバンク分野における日本国内での取り組みは、地銀の存在が際立つ。欧州中央銀行(ECB)のレポートによると、日本は先進国ではドイツやフランス、イタリアと並び、金融機関の数が過剰な「オーバーバンキング」の状態にある。地銀のこうした取り組みは、将来的な統廃合や人口構成の変化を見据えた生き残り戦略とみることができ、ゼロから事業を始めるケースも多い欧米のデジタルバンクとは異なる成り立ちも垣間見える。

みんなの銀行が2023年12月に発表した新サービス「Circle」。金融と非金融のサービスエコシステム構築を目指す(同行提供)

TECHBLITZが選ぶ、デジタルバンクのスタートアップ5選

TECHBLITZ編集部が選ぶ、デジタルバンクのスタートアップ5社はこちら!

1. Monzo

Monzo
「チャレンジャーバンク」始まりの1社
設立年 2015年
所在地 英国・ロンドン
 Monzoは、ロンドンに拠点を置くデジタルバンク。「ビッグ4」と呼ばれる英国の4大銀行への挑戦者として起業された「チャレンジャーバンク」の始まりの1社。クラウドファンディングを利用した最初の資金調達では100万ポンドを96秒間で集め、当時の記録を塗り替えた。
image: Monzo

2. Revolut

Revolut
お得なレートで海外送金
設立年 2016年
所在地 英国・ロンドン
 Revolutは、国内外の支払いや両替をスマホで完結できるのが特徴。35種類以上の通貨をアプリ内に保有でき、200以上の国や地域にお得なレートで送金手数料なし*で送金できる。 2020年に日本上陸し、みんなの銀行と提携している。*中継銀行による手数料が発生する場合あり。
image: Revolut

3. Chime

Chime
給料前払いサービスが若者に人気
設立年 2022年
所在地 米国カリフォルニア州 サンフランシスコ
 Chimeは、米国のネオバンク(銀行認可を受けず既存銀行と提携してサービスを提供するデジタルバンクの形)大手4社の一角。送金や海外利用時の手数料の廃止や、「給料前払いサービス」が人気となり米国内の若者世代を中心にユーザーが増加している。
image: Chime

4. NorthOne

NorthOne
小規模事業者向けのデジタルバンキング
設立年 2016年
所在地 米国ニューヨーク州 ニューヨーク
 NorthOneは、ミレニアル世代を主なターゲットとしたデジタルバンク。口座の月額料金は無料でデビットカードの発行も行っている。取引後にあらかじめ決められた金額を貯金として積み立て、加盟店から支払われる取引手数料から収益を得られる。
image: NorthOne

5. Mercury

Mercury
スタートアップ専用のBtoBに特化
設立年 2017年
所在地 米国カリフォルニア州 サンフランシスコ
 Mercuryは、スタートアップ向けに特化したBtoBのチャレンジャーバンク。スタートアップにとって円滑なキャッシュフロー管理、支払い、各ツールと統合できる銀行の必要性は大きく、こうしたニーズに応えて、オンラインのみで管理可能な銀行サービスを提供している。
image: Mercury



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