口座開設も、カード紛失時も、スマホで全てのサービスが完結するデジタルバンク(Monzo提供)
デジタルバンクは、フィンテックやデータなどデジタル技術を活用して、オンライン上でサービスを提供する銀行。実店舗を持たず、口座開設から、送金、ローン管理、残高確認といった日常的な取引に至るまで、スマホで全てを完結できるのが特徴。デジタルネイティブなZ世代やミレニアル世代を主なターゲット層にしている。オンラインバンクとしばしば混同されるが、オンラインバンクが既存の銀行システムにオンライン上での取引機能を付与したものを指し、システムの拡張性が限定的であるのに対し、デジタルバンクはシステムに柔軟性を持ち、従来と比較して大幅に速く機能の追加や拡張が行える。
<目次>
・若者世代を狙ったデジタルバンクの戦略
・日本のデジタルバンクは地銀が牽引
・TECHBLITZが選ぶ、デジタルバンクのスタートアップ5選
1. Monzo(英国)
2. Revolut(英国)
3. Chime(米国)
4. NorthOne(米国)
5. Mercury(米国)
若者世代を狙ったデジタルバンクの戦略
デジタルバンクで先行するのはやはり欧米。中でも、金融都市ロンドンを有する英国には、Monzo、Revolut、Starlingなどデジタルバンクのユニコーン企業が複数存在する。これらのスタートアップは、アプリの便利な機能もさることながら、若者世代を取り込むためのユニークな施策も特徴だ。
Monzoは2015年のサービス開始当初、「招待制」を導入。友人などから招待を受けた人が優先的に口座を開設できるもので、特別感もあり口座開設の順番を待つ「行列」ができるほどだった。さらに人気に火をつけたのが、海外旅行中にMonzoのカードで支払った際の手数料、海外のATMで現金をおろした際の手数料を一定額の上限を設けて無料にしたこと。これらのマーケティング施策で、爆発的に利用者を増やした。
Monzoの2023年5月時点の口座数は750万件。HSBCやLloyds Bank、Barclaysなどが牛耳ってきた英国の金融業界において、顧客ベースで英国7番目の銀行に成長している。2021年時点での評価額は45億ドルで、直近ではAlphabetの投資部門CapitalGと新たな資金調達に関する交渉を行ったことも報じられるなど、IPOも見据えた動向に注目が集まっている。
日本のデジタルバンクは地銀が牽引
日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」は、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)の傘下で、2021年5月にサービスを開始。2周年を迎えた今年5月には、口座数が67万件を突破した。ユーザーの7割が15~39歳だという。
みんなの銀行がサービスを開始した翌年の2022年1月には、東京きらぼしフィナンシャルグループ(東京都港区)傘下の「UI銀行」が続いた。そして、2023年9月には池田泉州ホールディングス(大阪市)も国内3例目となるデジタルバンク開業の意向を発表している。
このように、デジタルバンク分野における日本国内での取り組みは、地銀の存在が際立つ。欧州中央銀行(ECB)のレポートによると、日本は先進国ではドイツやフランス、イタリアと並び、金融機関の数が過剰な「オーバーバンキング」の状態にある。地銀のこうした取り組みは、将来的な統廃合や人口構成の変化を見据えた生き残り戦略とみることができ、ゼロから事業を始めるケースも多い欧米のデジタルバンクとは異なる成り立ちも垣間見える。
みんなの銀行が2023年12月に発表した新サービス「Circle」。金融と非金融のサービスエコシステム構築を目指す(同行提供)
TECHBLITZが選ぶ、デジタルバンクのスタートアップ5選
TECHBLITZ編集部が選ぶ、デジタルバンクのスタートアップ5社はこちら!
1. Monzo
設立年 | 2015年 |
---|---|
所在地 | 英国・ロンドン |
2. Revolut
設立年 | 2016年 |
---|---|
所在地 | 英国・ロンドン |
3. Chime
設立年 | 2022年 |
---|---|
所在地 | 米国カリフォルニア州 サンフランシスコ |
4. NorthOne
設立年 | 2016年 |
---|---|
所在地 | 米国ニューヨーク州 ニューヨーク |
5. Mercury
設立年 | 2017年 |
---|---|
所在地 | 米国カリフォルニア州 サンフランシスコ |