柔軟性に欠ける人材派遣業界
今回紹介するWonoloはウェブサイトまたはアプリを通して、当日や前日に働き手を求める雇用主と働きたい人をマッチングするオンデマンド人材派遣プラットフォームを提供している。
アメリカの人材派遣業界は約1400億ドルの市場規模があり、現在は拡大傾向にある。しかし、これだけの市場規模にも関わらず、顧客満足度は決して高くない。派遣会社を利用する企業も、派遣社員として働く人々も、派遣会社のサービスに対して決して満足していないのだ。Wonolo のCOOであるBrustein氏は顧客満足度の低い要因についてこう語る。「大きな原因の一つは、人材派遣会社が柔軟性に欠ける点です。前日や当日に働き手が必要となった場合、派遣会社を通して人を雇用することは難しい。また働く側も面接や履歴書の準備などをしなければならず、仕事が必要となった時にすぐに働くことはできません」。
またアメリカでは失業率は低下していっているものの、一方で不完全雇用率は上がっている。不完全雇用とはフルタイムで働く意思があるにも関わらず、パートタイムで働かざるを得ない状況のことだ。この場合、パートタイムで働いている人は他の限られた時間で違う仕事を探しても、なかなか見つからないということが起きる。
Image: Wonolo
履歴書や面接は不要
Wonoloのプラットフォームでは、その問題を解決している。雇用主はWonoloに仕事内容、時間や賃金など必要事項を投稿する。すると、「Wonoloers」と呼ばれる就業希望者に通知がいき、彼らが承認ボタンを押せば、契約が完了する。いちいち履歴書を提出したり面接する必要がない。Wonoloersはプラットフォーム上にリストされている仕事から働きたい時間や場所で自由に探し、働くことができる。「Wonoloersに通知がいった時点ですでに、雇用に必要とされるプロセスは終わっています。ですから、通知が届いたということは、その人が、その仕事を受ける資格があることを意味します」とBrustein氏。
また、もしも雇用主と働き手の双方が一緒に働きたいとなった場合は直接、フルタイムでの雇用契約を結ぶことも可能だ。
大切なのは「5Ps」
Wonoloは就業希望者がアプリに登録する際、彼らの性格特性について質問する。「Wonoloはよく面接などで重要視される経験や学歴よりも、働き手の性格が重要であると信じています。もし仕事に遅れなかったり、勤務態度が良ければ、Wonolo上で5つ星がもらえるでしょう。過去の勤務経験やMBAを持っているといったことは関係ありません」。
Wonoloではこういった性格特性を5つに分類し、「5Ps(ファイブピーズ)」と呼んでいる。それらは「Prepared(心構え、準備ができていること)」「Professional(プロフェッショナル)」「Positive(前向きさ)」「Polite(礼儀正しいこと)」「Punctual(時間に正確なこと)」だ。
Wonoloではこれらの性格診断以外に、バックグラウンドチェックも行う。そして求人が投稿された際には、これらの基本情報をもとにAIで最適な人材からランク付けしていき、Wonoloersに通知を送るという仕組みになっている。
Image: Wonolo
登録ユーザーは10万人以上
Wonoloは雇用主から派遣社員に払われる賃金の最大45%を手数料として収益化している。現時点で登録している求人企業は1000企業以上、Wonoloersは10万人以上に及ぶ。求人の多い仕事はJCPennyやThe North Faceなどのリテールの在庫整理や物流関連などだ。
Brustein氏は8年間日本で働いた経験を持っており、日本展開にも興味があるという。すでにある日本企業のテンプホールディングスから投資を受けており、在米日系企業のUNIQLOも利用しているとのことだ。Brustein氏は「日本展開においてはまず、アメリカで事業を展開する日系企業とのパートナーを組むことが理想的だと考えています」と語る。