Wild Earthは科学者、起業家、アクセラレーター、バイオハッカーとしてバイオサイエンス分野で数々の実績を持つRon Shigeta博士とRyan Bethencourt博士達による、細胞農業技術を用いたペットフードメーカーだ。ステーキの約2倍のタンパク質を含む同社のペットフードが温室効果ガス削減にまでつながるという。今回はCo-founder & CSOのRon Shigeta氏に話を聞いた。

Ron Shigeta
Wild Earth
Co-founder & CSO
スタンフォード大学、ハーバード大学医学部、プリンストン大学に就学。化学博士。
Berkeley BioLabsやIndieBioの共同創設者でもあり、Affymetrix社などバイオテック業界のスタートアップにて研究者、コンサルタント、取締役を務めたバイオテクノロジー産業のベテラン。バイオテックサイエンシストとしても20年以上のキャリアを持つ。

北米のペットが消費する肉の量は世界5位

―まずWild Earthを設立した経緯を教えてください。

 先進国ではペットの数がかなり増え、米国では三世帯に一世帯がペットを飼っています。驚くべきことに人間の食料をペットが大量に消費しています。しかし、私たちがWild Earthを設立した2年前には人間のフードシステムにおける変革は始まっていましたが、ペットフードにおけるイノベーションはほとんど見受けられませんでした。

 牛、豚、鶏などの成長には時間がかかります。食料を育てる過程には固定されたルールがあり、変えることはできません。私たちはバイオテクノロジーを活用して、こうした固定ルールを変え、植物性のタンパク質が豊富で健康的な食品を作り、肉の消費量を減らし温室効果ガス排出削減にも貢献できる、大規模・低コスト生産プラットフォームを構築しようと考えています。その一貫としてペットフードを作るWild Earthを設立しました。昨年10月から犬用のおやつの販売を始めています。

―ペットフードは何を使って作っていますか。

 素晴らしいタンパク質源である麹を使っています。麹を使うことにした理由はいくつかあります。

 まず、麹にはニホンコウジカビの「旨味」要素があり、日本ではお醤油、味噌、甘酒などで使われているように、アジア全域においても料理で使われています。また、ヨーロッパでも麹とよく似たビール酵母やパン酵母が伝統的に料理に使われています。世界中の人々にとって馴染みがある食べ物です。新しい食べ物を作る時、馴染みがある食材が含まれていると、人々はより受け入れやすくなります。

 また、ニホンコウジカビはバイオテック業界でもよく知られ、米国内全ての家庭にニホンコウジカビを使った製品があると言えるほど多くの消費財で使われています。

 麹は、美味しいと感じる「旨味」があり、タンパク質量が高く健康にも非常に有益で、アレルギー反応を引き起こすことはほとんどない、質の高い食材です。

地産地消ペットフードはペットにも地球にも優しい

―今後について聞かせてください。

 犬用のおやつとドッグフードの次はキャットフードを作る予定です。将来的には、個々のペットにパーソナライズしたフードを提供したいと考えています。

 人間と同じように、犬や猫にとって食事は健康面や精神面で重要です。例えば、食事を改善することで癌になる確率が下がります。ペットにとって有益な食事を提供するために、その食事をどう作るかを追求していきたいと考えています。

 Wild Earthはドッグフード市場で新しいカテゴリーを作りました。今後もペットフード市場において、新しいカテゴリーを作り続けることになると思います。それら新市場をリードする生産者として、より多くWild Earthの製品を流通させること。製造量を増やし、コストを下げることに注力していきます。

―海外展開、特に日本への進出は考えていますか。

 グローバル展開を目指していますので、それぞれの地域のマーケティング、流通、製造などに通じた様々なパートナーを増やしていきたいです。例えば日本に進出した場合、製造も日本国内で行いたいと考えています。今は多くの家畜が世界中に出荷されていますが、地球規模の気候変動を考えると理想的な方法ではありません。発酵食品は販売する地域で作ることができるので、食品の製造をローカライズできる理想的な方法だと言えます。

 当社の製品に「麹」という日本語が使われていますし、日本の皆さんにも興味を持っていただけたらと期待しています。



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