数多くの日本企業でも導入されているSalesforceやTrelloといった企業向けソフトのデータやチャットを「リアルタイムに」同期するプラットフォームを開発するUnito(ユニトー、本社:カナダ・モントリオール)。企業のプロジェクトマネージャーは、エンジニアや営業担当者など異なる部署のメンバーと常にコミュニケーションをとる必要があるが、彼らはそれぞれのツールを使っていて「共通言語」がない状況だ。Unitoはそうした問題を解決している。創業者でCEOのMarc Boscher氏に話を聞いた。

目次
ユニトーが求められる理由とは
自分自身が同じ問題に苦しんだから、創業した
シリコンバレーにいなくても評価はされる
すでに数百社の日本企業がユニトーの顧客

ユニトーが求められる理由とは

―ユニトーはどのような課題を解決するスタートアップなのでしょうか。

 異なる部署がそれぞれに使っているソフトウェアをつなげる統合プラットフォーム「ユニトー・シンク・プラットフォーム(Unito Sync Platform)」を開発しています。このプラットフォームを導入すれば、Trelloを使うエンジニアとSalesforceを使う営業担当者のプロジェクトや会話、タスクなどの情報をリアルタイムで同期することができます。異なる部署間と仕事をするプロジェクトマネージャーにとって、非常に仕事がやりやすくなるツールなのです。

 われわれの顧客にはNetflixやUber、Teslaなどのグローバル企業がいます。彼らはソフトウエア開発チームやマーケティングチーム、セールスチームなど多くの部署がいて、それぞれの部署がTrelloやAsana、Salesforceなど異なるソフトウエアを使っています。各部署の社員にとってはなんら問題になりませんが、部署をまたいだプロダクト開発や進捗管理などに取り組むプロジェクトマネージャーにとっては問題です。

 ユニトー・シンク・プラットフォームは、簡単かつ短時間に各ソフトウェアの情報を統合し、プロジェクトマネージャーが業務の進捗をすぐに確認できるようにしたのです。

image: Unito 共同創業者のMarc Boscher㊧とEryk Warren

―近年はSaaSアプリの統合ソフトも増えていますが、ユニトー・シンク・プラットフォームの強みはどこにあるのでしょうか。

 私たちの最大の差別化ポイントは「データを双方向に、リアルタイムに同期できる」ことです。つまり、Trelloを使うエンジニアも、Salesforceを使う営業マンも、ユニトー・シンク・プラットフォームを通すことで全員が同じツールを使っているように感じることができるほど、データのリアルタイム同期を可能にしたのです。

 また、ソフトウエアの専門性を持たないユーザーも、簡単にユニトー・シンク・プラットフォームをセットアップできます。実際、われわれのユーザーの約80%がエンジニア的なバックグラウンドを持っていません。

 また、BtoB向けのソフトウエア統合プラットフォームを手掛ける企業としては珍しいのですが、われわれの顧客は幅広い業界に属しています。割合が多いのはテック系やメディアなどですが、ヘルスケアや保険業、フィンテック企業なども存在します。

自分自身が同じ問題に苦しんだから、創業した

―創業から約9年が経ちます。創業のきっかけを教えてください。

 私自身が、「多すぎるソフトウエアを行ったり来たりすること」にうんざりしていたからです。1999年以降、私はソフトウエア開発とプロダクト開発に従事してきました。こうした仕事では、ソフトウエア・エンジニアともマーケティング担当者とも、サポート担当者・営業担当者とも常にコミュニケーションをとる必要があります。

 その誰もが異なるツール・スタックを使っていて、データのアップデートや情報の調整などを常にそれぞれの担当者に聞く必要がありました。

 また、古典的なソフトウエア統合アプリは操作が非常に複雑ですし、価格も高い。さまざまな初期設定を導入する必要もあるので、(アプリの本格展開まで)社内で120日ほどかかるなど、時間もかかってしまうのです。

 対するユニトー・シンク・プラットフォームは先ほどお話ししたとおり、操作が簡単なため80%のユーザーが非技術系で、導入までの時間もかかりません。また、昨今はAIの発達により、飛躍的に便利なソフトウエアアプリがどんどん市場投入されています。そうした中、ユニトー・シンク・プラットフォームは9年間のエンタープライズ向けソフトウエア統合プラットフォームを開発してきた歴史があり、セキュリティ対策もしっかりしているので、顧客からの信頼も厚いのです。

Marc Boscher
Co-Founder & CEO
McGill Universityで学士号を取得後、MicrosignsでVP Product Developmentとして勤務し、デバイスマネジメントに従事した。2015年1月にUnitoを創業し、CEOに就任。現職。

シリコンバレーにいなくても評価はされる

―現在までの成長を示す数字を教えてください。

 われわれは上場企業ではないので、収益に関する数字は公表していません。ただ、2022年10月にシリーズBラウンドで2,000万米ドルの資金調達を実施しています。市場からの評価もいただいていると自負しています。

 ユニトーはカナダで創業した企業であり、シリコンバレーのエコシステムにいるスタートアップではありません。それでも、VCをはじめとした投資家の期待を受けているのは、われわれが企業にとって本質的な問題を解決できているからでしょう。

 2023年には、ユニトー・シンク・プラットフォームというデベロッパー向けのコネクタ構築プラットフォームをローンチしました。ユニトーの顧客も、サードパーティーの業者もすぐにコネクタを構築することができるなど、非常に便利なものになっています。

―シリコンバレーにいないのにも関わらず、世界的な企業に使われるサービスに成長した理由はどこにあるのでしょうか。

 自信を持つことが大事でしょう。どこで創業したかにかかわらず、優れた技術を持ち、適切なチャネルで販売し、顧客の信頼を獲得し続ければ、サービスは受け入れられます。

 最近ではシリコンバレーのVCも、シリコンバレー以外のスタートアップへの投資に食指を伸ばしていると聞きます。起業は世界のどこにいてもできますから、とにかく自分たちの技術に自信を持つことが重要です。

image: Unito

すでに数百社の日本企業がユニトーの顧客

―日本市場をどのように見ていますか?

 われわれはすでに数百社の日本企業の顧客を抱えています。事実上、日本にはすでに進出していると言えます。ただ、ユニトーは会社として日本に人員を置いてはいません。顧客はウェブやマーケットプレイスを通じて、われわれのサービスを発見しているのでしょう。

 具体的には、当社のパートナーのベンダー企業である、ServiceNowやAsanaのようなパートナーが私たちのことを日本企業に推薦してくれているのだと思います。

―日本企業とパートナーシップを組みたいという考えはありますか。

 もちろんです。現地のサービスパートナーやリセラーなど、われわれが統合するソフトウエアに精通しているパートナーが望ましいですね。もっと理想を言えば、SalesforceやServiceNowなどのわれわれのソリューションパートナーとも付き合いがある企業が良いです。

 パートナーシップの形態として、理想的なものはありません。形態そのものよりも、ユニトーのテクノロジーと日本企業の商習慣や顧客基盤を理解してくれるパートナーの存在の方が重要だと思います。

image: Unito



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