目次
・企業のAI導入に立ちはだかる「3つの無駄」
・「レゴブロック式」でAI導入の複雑さ解消
・複雑な社内データベースもお手の物
・今年4月にステルスモード脱却
・「企業はもはやAIを無視できない」
企業のAI導入に立ちはだかる「3つの無駄」
レビ氏のキャリアは2010年、イスラエル国防軍(IDF)の情報部隊から始まった。サイバーセキュリティやソフトウエアエンジニアリングに従事し、以後10年以上にわたりこの分野に携わってきた。
軍での経験を経てフェイスブック(現メタ)のモバイルウェブチームに参加し、さらに複数のスタートアップを経て、2020年にAPIセキュリティ企業ノーネーム・セキュリティ(Noname Security)を共同創業。わずか4年でゼロから従業員を250人規模に成長させ、2024年には米アカマイ・テクノロジーズに約4億5,000万ドルで売却するという大きな成果を収めた。
しかし、この成功を経たレビ氏が次に目を向けたのは、ChatGPTの登場がもたらしたAI革命だった。「生成AIが世界に現れた時、まさに嵐のようでした。誰もが『これはすごい』と驚き、私もその一人でした」と振り返る。
だが、レビ氏の関心は驚きの先にあった。「AIの価値が本当に企業に届くのはいつなのか。多くのSaaSベンダーはAI機能を付け加えて顧客から追加料金を取ろうとしていましたが、それは本質的な解決策ではありません」
当時、企業に残された選択肢は3つ。高額なSaaS契約に頼るか、外部コンサルタントに高額報酬を払うか、あるいは社内で多大な時間をかけて構築するか――。いずれもコストと時間がかかりすぎる道だった。
「どれも良い方法とは言えません。非常に高価で、時間もかかる。もっとシンプルで合理的な方法が必要でした」
そこで思い描いたのが、現在のアンフレームにつながる構想だ。「もし誰かが、ユースケースを相談すれば数日でソリューションを形にしてくれて、しかも成果が出たときだけ支払いを求める……そんな仕組みを提供したらどうだろう、と考えたのです」

「レゴブロック式」でAI導入の複雑さ解消
アンフレームが提供するプラットフォームの革新性は、その設計思想にある。
「必要なAIユースケースを実現するためのビルディングブロックをすでにすべて揃えているとしたらどうでしょう。私たちはエンタープライズが直面する課題を事前に解決し、それをブロックとしてパッケージ化しているのです」
レビ氏は、この仕組みをレゴブロックにたとえる。「ブロックはすでに用意されています。だから新しいものを構築する際も、材料は揃っており、組み立ては非常に迅速に進みます」
従来、AI導入はプロジェクトごとにイチから設計・開発する必要があった。そこで、アンフレームは、データ統合や自然言語処理、セキュリティといった機能をあらかじめモジュール化。顧客は必要なものを組み合わせるだけで、短期間でソリューションを構築できる。
さらに重要なのは、すべてのソリューションが共通のデータ基盤を共有している点だ。「全ソリューションが同じナレッジベースに支えられています。ユーザーのフィードバックや日々のやり取りを通じて知識が蓄積され、時間とともに改良されていきます。これによって『AIネイティブな企業』が生まれるのです」
例えば、財務部門で使われた独自の用語や知識が、IT運用向けソリューションの精度向上に役立つ。1つのユースケースの学習成果が他の領域にも波及することで、組織全体の知能が進化していく好循環が生まれるのだ。
そして、アンフレームの最大の特徴は従来の常識を覆す成果報酬型モデルにある。「ソリューションが実際に稼働し、成果を出したときだけ課金します。前払いも、長期プロジェクトへのコミットも不要です。試してみて気に入れば年間契約に移行できますし、不要と判断すればコストは一切かかりません」
複雑な社内データベースもお手の物
アンフレームの強みは、すでに複数の導入事例で実証されている。レビ氏はまず、大手投資銀行でのケースを紹介する。
「複数のデータレイクやデータウェアハウス、さらに多数のデータベースが乱立し、組織全体から必要な回答を得るのが非常に困難でした」
そこでアンフレームが提供したのが、自然言語による統合データアクセスだ。「データの所在や相関関係、必要なクエリや可視化の方法を意識することなく、質問すれば直ちに答えが返ってきます。さらに、どのデータソースが参照されたのかも明示されるため、透明性も担保されます」
加えて、企業ごとに異なる固有の知識や専門用語を自動学習する仕組みも備える。「多くの組織には独自の用語があります。私たちのプラットフォームは、ユーザーとの会話履歴を通じてそれらを吸収します。一度教えられた用語はAIが学習し、次のユーザーにも活用されるのです」
アンフレームの効果はIT運用の分野にも及ぶ。多くの企業が利用するServiceNow、Jira、Confluence、New Relic、DataDogといった監視プラットフォームの統合が難題となっている。「インシデントが発生しても、それが何に関連しているのか、どのチケットやログを確認すべきかを把握するのは非常に大変でした。しかし、アンフレームを導入すると、AIがすべてのシステムを自動で理解し、相関を見つけます。アラートが出れば、関連するプレイブックや既存のJiraチケット、重要なログを即座に提示できるのです」
image : Unframe HP
今年4月にステルスモード脱却
アンフレームの成長は目覚ましい。2024年12月にシードラウンドを終えたわずか4カ月後の2025年4月に、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ(Bessemer Venture Partners)をリード投資家とするシリーズAのラウンドを実施。ここで5,000万ドルを調達し、ステルスモードからも脱却した。シードからシリーズAまでのスピード感は、強い市場ニーズを如実に示している。
組織拡大の勢いも圧倒的だ。「6カ月前は社員数が世界で15人ほどでしたが、現在は50人を超えています。4〜5カ月で規模を3倍にしました」とレビ氏は語る。
顧客数の伸びもさらに顕著だ。「前四半期だけで顧客数は3倍以上に増加しました。すでに米国、ヨーロッパ、アジア太平洋など、グローバルに顧客を抱えています」
急成長の理由について、レビ氏はこう分析する。「企業のAI導入熱は本物です。その需要は非常に大きい。成果を実感した顧客が別の企業に伝え、クチコミで広がっています。非常にポジティブな勢いを感じています」
今後の計画としては、さらなるユースケースへの対応や、UI/UXの改善を通じて利便性を高めることに注力している。中でも注目は、セルフサービス機能の開発だ。「おそらく1年以内に、顧客が自らユースケースを構築できるようにします。私たちに相談する必要はなく、用意されたビルディングブロックを使って独自のソリューションを作れるようになるのです」
「企業はもはやAIを無視できない」
アンフレームはすでに日本市場での実績を積み上げている。
「日本に拠点を置く企業にもサービスを提供しています。社名は明かせませんが、誰もが知る大企業も含まれています。すべてのソリューションは最初から多言語対応しており、日本語も標準でサポートしています」
パートナーシップのスタイルも柔軟だ。「システムインテグレーターに限定しているわけでも、販売チャネルパートナーだけに絞っているわけでもありません。市場に近く、顧客とユースケースについて話し合えるような企業であれば、良いパートナーになれると考えています」
既にアンフレームを導入している日本企業の姿勢について、レビ氏は感銘を受けたと語る。
「日本の顧客は非常に迅速に動いています。アンフレームの活用においても積極的で、とても印象的です」
約4.5億ドルでのイグジットを経験したレビ氏だが、アンフレームの未来像はそれを大きく上回る。「これまでのどの分野よりもはるかにエキサイティングだと思います。アンフレームはノーネーム・セキュリティ以上の規模に成長できる可能性があります」
その背景には、AIがもたらす根本的な変革がある。
「もはやAIを無視することはできません。私たちが使い慣れているすべての製品、慣れ親しんでいるすべてのプロセスに、AIを採用することになります。そのため、多くのものが再発明され、再構築されなければなりません」
最後に、日本の読者に向けて力強いメッセージを送った。
「もはや、AIを無視することはできません。競争力を維持するために、必ずAIを採用すべきです。アンフレームは日本市場でも必ず成果を出せると信じています。実際、すでに導入している企業はAI移行の重要性を理解し、非常に効率的に進めています」