Tripping.comは、民泊予約サイト各社の物件を一括検索、比較、予約するためのメタサーチサイトだ。旅行者の負担を減らす画期的なサービスを提供する同社のFounderであるJen O’ Neal氏にインタビューした。

Jen O’Neal
Trippng.com
Founder, President & Chairman of the Board
カリフォルニア大学バークレー校在学中から、チケット販売マーケットプレイスのStubHubにて主にマーケティングを担当。同社を売却後も、複数の企業でブランディングやマーケティングに携わる。2010年にTripping.comを創業、PresidentおよびChairman of the Boardに就任。

世界190カ国、1200万件の宿泊物件を掲載

―御社のビジネスモデルについて教えてください。

 Tripping.comは世界最大級の民泊予約サイトです。VRBO、TripAdvisorやBooking.comといった大手宿泊サービスで紹介されている案件を総合的に取り扱っており、物件数は世界190カ国で約1200万件にのぼります。これまでは、旅行者がいくつもの旅行サイトや民泊サイトをチェックしなければなりませんでしたが、当社のサイトでは複数のサイトに登録されている物件にワンクリックでアクセス可能です。同じ物件なら、Tripping.comでサイトごとの価格を比較し、最安値で予約することができます。

―予約もTripping.comから直接できるのですか?

 当サイトで直接予約できるものもあれば、契約先のウェブサイトにリンクして、そこで予約していただく場合もあります。当社経由で予約していただいた場合、パートナー会社から手数料を受け取る収益モデルになっています。

―Tripping.comでは民泊を多く取り扱っています。ホテルでの宿泊と、民泊の違いはどんなところにありますか?

 民泊最大の魅力は、価格が安いこと、そして広いスペースを確保できるということです。民泊の物件にはベッドルームが複数あるものや、庭やバーベキュー場、プールやキッチンがついているものあります。特に、このキッチンが旅行者に喜ばれますね。自炊できる分、費用を節約できますから。特に、お子さん連れの方ですと、ホテルのワンルームだと窮屈ですよね。夜、子供が寝てしまうと、大人は声をひそめなければなりません。民泊なら、同じ価格で、より広いスペースをレンタルすることができます。マンションの一室から別荘、はてはヨットまで、選択肢が多いのも民泊の魅力ですね。

Image: Tripping.com

大手他社と「競合」ではなく「協力」する

―御社ならではの強みを教えてください。

 当社は、業界の中でもニュートラルな立ち位置にいます。我々はメタサーチエンジンなので、HomeAwayやVRBOなどの企業と競合しているわけではありません。彼らはパートナーであり、我々は空室状況データを統合し、予約利用者を送客しているのです。

 宿泊業界は巨大なマーケットで、この先10年間で膨大な規模になると思われます。中でも民泊市場は急成長しています。しかし、その市場は多極化しており、民泊大手4サイトと言われるAirbnb、Priceline、Booking.com、TripAdvisorのシェアを合わせても、全体の25%にも満たない状況です。そういう業界にこそ、メタサーチというサービスモデルが最適だと思いました。我々は現在50社ほどのサイトと提携していますが、彼らとは競合関係にはありません。予約客を送客しているのです。

Image: Tripping.com

何より大切なのは「良いプロダクト」をつくること。

―Jenさんの起業の経緯を教えてもらえますか。StubHubの5番目の社員だったそうですが。

 私は、ここサンフランシスコで育ち、若いころからテクノロジーに夢中でした。カリフォルニア大学バークレー校在学中は、インターネットブームが起きたこともあり、テクノロジーの盛り上がりを肌で感じていましたね。そのころ、私はStubHubという、イベントチケットのオンラインマーケットプレイスを運営する企業に入りました。そこで、チケットの買い手と売り手の両者に向けたサービスを経験し、そのノウハウを得ました。何より、一番大切なのは「良いプロダクト」を提供することだと学びました。良質なプロダクトとユーザー体験があれば、利用者に愛されるということです。

 その後StubHubがeBayに売却された後、元同僚が立ち上げたViagogoに入社し、ヨーロッパを中心としたチケット関連マーケットプレイスに携わりました。ロンドンに移住した私は、ヨーロッパ中を飛び回りました。そんな中で、旅行会社を作りたい、と思うようになり、Tripping.comを立ち上げたわけです。

 当初は、平和部隊(The Peace Corps)などと提携し、そういった団体のメンバーが当社のプライベートネットワークに参加してもらえるようにしました。そこから人脈を築いていき、結果として質の高いユーザー層を獲得することができました。しかし、いくら好調なコミュニティとはいえ、若いバックパッカーが多いので、マネタイズするのはむずかしいことに気づきました。それが2011年のことです。当時、民泊ブームが始まろうとしていました。マーケットを調査すると、非常に細分化された業界だということがわかり、メタサーチこそが最適なソリューションだと考えました。そこで、民泊向けのメタサーチエンジンとして、Tripping.comをローンチしたのです。

―社内の雰囲気はどうですか?また、Jenさんが会社を経営するにあたり、大切にしていることは何でしょうか。

 そうですね、企業文化というのは、人を雇うところから始まるものだと考えています。当社では、まずデータに強いことを重要視しています。ですから社員には数学や経済、あるいはコンピュータサイエンス出身のスタッフが多いですね。あとは、人柄を重視しています。スポーツチームなど、何らかの集団に属した経験のある人も多く、個人としても、チームとしても、力を発揮してくれています。協力関係も良く、団結力もあるので、それが成長の要因のひとつだと思っています。

Image: Tripping.com

ヨーロッパ、アジアへとさらに拡大

―将来的なビジョンを教えてください。

 Tripping.comは世界的なナンバーワン民泊サイトになります。疑問の余地はありません。我々はすでに業界をけん引する存在です。今も物件数1200万の、最大級のサイトですから。

―日本市場への進出についてはいかがでしょうか?

 今はヨーロッパが大きな成長を見せていますが、これから5年くらいの間にアジア方面が拡大していくと思っています。アジアではこれから民泊が勢いを増すことになると思うので、その準備をしています。市場を理解した投資家も大勢いますし、顧客やその要望に関するリサーチも進めています。



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