Image: Trillium Secure
Trillium Secure は自動車や車両搭載機器向けのサイバーセキュリティと、モビリティデータプラットフォームを提供するスタートアップ。シリコンバレーに本社を持ち、東京とベトナムのホーチミンにも拠点を持つ。今回はPresident & CEOのDavid M. Uze氏に話を聞いた。

David M. Uze
Trillium Secure
President & CEO
1988年、アイオワ州立大学にて経済学士を取得、その後1990年まで名古屋市内の南山大学にてアジア研究、経済学および日本語を学ぶ。デロイト トウシュ トーマツ、Dell Japan、フリースケール・セミコンダクタなどにおいて要職を務める。2014年にTrillium Secureを創業しCEOに就任。

自動車のサイバーセキュリティ

―まず御社の事業について教えてください。

 主な事業は自動車の社内ネットワークを対象としたサイバーセキュリティソフトウェアソリューションの提供です。機械学習やブロックチェーン技術を含める多重層アプローチが当社の特徴です。当社のサイバーセキュリティシステムは世界的に定評があり、多くの賞を受賞しています。

 そして、これを基本技術レイヤーとし、2018年から2019年にかけてモビリティデータプラットフォーム事業に取り組んでいます。データの信頼性を保ったまま車両からプラットフォームに、そしてクラウドにあげ、データをプラットフォームに戻す、サイバーセキュリティPaaS(Platform as a Service)です。

 例えばテスラ社はエンドツーエンドのプラットフォームを自社で数千億ドルかけて築いています。しかし、それだけの投資をするメーカーはなかなかいません。そこで、当社が信頼できるモビリティプラットフォームを提供することで、メーカーや車両のオーナーのランニングコスト削減、ビジネスオペレーションやロジスティクスの改善、さらには新しいビジネスを生み出すお手伝いをしているのです。
 2020年以降は、そのデータを様々なサービスで展開できるよう環境を整え、それまでに蓄積したデータに基づく当社独自のCustomer SaaSの提供を計画しています。

―御社の強みはとは。

 そうですね。データは自動的にコンピューターのアルゴリズムに入り、何万回と計算が繰り返されます。最初のデータの正確性が確保されないと、計算の度にエラーが増えることになり、何万個ものエラーが発生することになります。

 当社は、車両自体や電子制御システムを守ってきた会社ですから、データも発生した瞬間から守ることができます。また、ブロックチェーン等の技術でデータの消去まで見届けることができる。データを「生涯」を通じて守り続けることができます。これが当社の一番の強みです。

Image: Trillium Secure

コネクテッドカー時代はデータの精度が重要

―これからはさらにサイバーセキュリティが重要になってきますね。

 そうです。コネクテッドカーにおいて特に重要になります。コネクテッドカーでは車両側のデータがクラウドでやり取りされます。現状では、クラウドと車両間の送受信において、データは十分に守られていません。ハッキングされる可能性は高いと考えています。

 当社のブロックチェーン技術を使い、パートナーとも共同して信頼性の高いプラットフォームサービスを提供することで、この問題を解決したいと考えています。これが、先にお話した2019年までのフェーズに行っている事業に該当します。そして、信頼できる動作環境等のデータをクラウドにつなげる「Data Pipe」を当社のプラットフォーム上で築き、クラウドに構築した「Data Lake」に溜めたデータを使って2020年以降にCustomer SaaS(ソフトウェアサービス)を展開するというビジョンです。

 いずれのサービスにおいても、強固なサイバーセキュリティによりデータの信頼性が守られていることが当社の強みであり、資するところだと考えています。

―コネクテッドカーの普及による今後の展開に関して教えてもらえますか。

 これからは車、トラック、バスなどもスマートフォンのように自分が選んだアプリを使い、安全性や効率性などを追求するようになると考えています。

 例えば、自動運転における燃料なり電気の効率性をアプリによって制御できるようになるでしょう。その際、アプリの精度は基になっているデータの精度に大きく影響されます。だからこそデータの信頼性が重要になり、Trilliumはそれに応えることができると考えています。

Image: Trillium Secure

データの価値を守る会社でありたい

―データが発生する時点から守るということは、車両の製造段階で御社のソフトウェアが導入されているのですか。

 2021年から新車に入ることが決まっています。現在は、トラック、バス、カーシェアリングやレンタカーなど様々な種類の既存車両に対し、ナビと同じような形で後付けしています。安価なデバイスを車両に取り付けることで、サイバーセキュリティ、データの収集や提供など、最初から取り付ける場合と同じことができます。

―収集したデータはどのように活用されるのですか。

 当社のAPIも信頼性が高いプロトコルを使っているので、取り出しにおいてもデータの質が守られています。取り出したデータは6種類にわけます。データの所有者がデータを収益化できるよう、それぞれのニーズに合わせてデータを橋渡しする、そしてそれを所有者が活用するためのプラットフォームも当社が提供します。これも、当社のサービスの特徴です。

 例えば、OEMカーメーカーは、車両の販売後も売上を出し続けるビジネスモデルの構築を望んでいます。その一助となるのが、データから派生可能なPreventative maintenance(予防整備)サービスです。このサービスをユーザに提供することで自社の修理サービスの利用に繋がり、販売後の継続的な売上に繋がります。

 他には、リース会社やタクシー会社など複数車両を保有するフリート系の企業においては、ロジスティクスやランニングコストの削減にデータを活用することができます。保険会社においては、例えば、半自動運転車両に対する保険の取扱が課題になっています。彼らがリスク計算を行う際に利用するデータとしての活用も考えられます。現状はこうしたデータがないことや、基にするデータがずれたままリクス計算を行った場合、最終的には数百億円規模の損失につながる可能性があることから、保険会社は特にデータの信頼性を重要視しています。だからこそ、当社のサービスが採用されているのです。

 データの活用においてデータの所有者は誰なのかという定義は各国で違いますが、当社はデータの所有者ではないので、直接触ることはありません。Trilliumは、車両とOEMメーカー、フリート系企業や保険会社などの間に位置し、サイバーセキュリティを含めるプラットフォームの提供により、顧客が活用するに値するデータを取得蓄積し、データを活用する顧客企業のニーズに応え取り出して橋渡しする。そして、データの所有者がデータの消去を希望すれば、完全に消去する。そこまでを担うことができるサービス、これもTrilliumの特徴です。

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