Image: Streem
Streemは家電など製品のメンテナンス・修理や正確な修理見積作成を、修理担当者が実際に現場に行くことなく、リモートで対応できるプラットフォームを提供している。2017年4月設立後、1050万ドルの資金調達を行い、Mobile World Congress 2018では「Apps, Platforms, and Software」イノベーションアワードを受賞した。今回はCEOのRyan Fink氏に話を聞いた。

Ryan Fink
Streem
CEO & Co-founder
インテリジェントなオンデマンドビデオストリーミングを通じたリアルタイムコミュニケーションとコラボレーションサービスプラットフォームの提供

困ったときに即時サポート。専門家の助けをより身近に

―まずStreemのサービスについて教えてください。

 私たちのサービスは、三つの柱で成り立っています。一つ目の柱は、例えば自分が買った製品の調子が悪くなり、明らかに修理が必要になった時は、その製品の修理サポートセンターに助けを求めます。Streemはそうした際に、実際に修理担当者を自宅に呼ぶことなく、ビデオ通話により専門家のサポートを「その場」で「その時」に受けられるようにしています。修理担当者は、移動に時間を費やすことなく、ビデオ通話を通じて、製品の情報を得ることができます。

 現場にいるユーザーとリモートの修理担当者がつながったら、次は二つ目の柱です。これはAR(拡張現実)を使い、両者のスムーズで的確な意思疎通を図ります。修理担当者は自分のデスクトップからレーザポインターや3D arrow(矢印)などを、ユーザーのスマートフォンの画面に表示させることができます。

 例えば「ルーターにこのボタンが表示されますか?表示があればそれを押してください」と説明する際に「このボタン」を矢印で指すことができます。この矢印は、ユーザーがスマートフォンの画面を動かしたとしても、「このボタン」からズレることなくどの角度から見ても正しい位置に表示され続けます。

 修理担当者は現場で何が起きているかを目視確認することができ、AR(拡張現実)ツールを使ってユーザーとのコミュニケーションが円滑になりました。そこで三つ目の柱、データ収集です。インテリジェントカメラを用いて画像やビデオを撮ることで、相手の空間や背景の空間地図を作成し、より深く情報を得ることができる機能です。

 当社は、このインテリジェントカメラの開発に最も投資しています。全ての画像はOCR(光学式文字認識)処理するため、修理が必要な製品のシリアルナンバーやモデル番号などの情報をカメラが読み取り、パソコンで扱えるテキストデータ等に変換させます。そして、高精度の物体認識機能も活用しており、現場で把握できる以上の有益な情報を修理担当者に提供しています。

ボート製造業、家電メーカー、ホームサービス業などで活用

―現時点で御社のARシステムはどのくらい正確ですか。

 人間が見た時と同じくらい正確だと思います。当社の物体認識技術では、例えば「これは電化製品ですね」「ここは台所ですね」というように、かなり幅広い種類の物体を認識できます。

 現在は、大手家電メーカーが顧客なため、顧客企業の製品をより的確かつ正確に認識することに注力しています。学習できる情報が多ければ多いほど、物体認識の精度は高まります。

―御社のサービスはどんな業界で利用されていますか。

 当社のサービスは幅広い業種で採用されています。例えば、ボート製造業、家電メーカー、家内工業やホームサービス業など。企業は、顧客を対象としたコミュニケーション手段として当社のサービスを使っています。

 製品サポートにおいて製品購入者とのコミュニケーションと修理などのサポートの質を高めたいと考えている企業や、自社の修理担当者の派遣コストを下げたいと考えている企業であれば、Streemを有効活用していただけます。

 例えば、サポートサービス向上を目指し、修理担当者が直接出向くサービスを提供している企業がいます。彼らは稼働時間の約四割を移動時間に費やしているのです。Streemを導入したことで、彼らの移動時間を劇的に減らすことができました。ユーザーも今までは修理担当者の移動時間分待たされていたところ、サポートを直ぐに受けることができるというベネフィットになっています。

Image: Streem

遠隔修理においてARが優れている理由

―同じようなサービスが他にもあると思います。それらとStreemの違いはなんですか。

 決して他社のサービスが悪いということはありませんが、例えば、ビデオ等を使って行う画一的なサポートと比べると、Streemのアプローチの方が有効だと考えています。

 StreemはARを使うことで、ユーザーには修理担当者が現地に実際にいるのと同じように身近に感じてもらうことができます。また、修理担当者は現地にいるのと同じあるいはそれ以上の情報を得ながら、遠隔からのサポートが可能だと言う点が優れていると考えています。

 ARを使い遠隔からのサポートを提供している他社サービスは他にもあります。そうしたサービスとの違いは、StreemはARコンテンツの中で体験なりを提供するサービスではない、という点です。当社は、コンピュータービジョンと機械学習を活用してできるだけ多くのコンテキストを現実(リアル)から抽出しARで表示する、「スマートAR」を活用したサービスなのです。これが今までのARの活用方法と最も違う点だとも言えます。



RELATED ARTICLES
メディア業界を中心に利用拡大、分散チームの大容量ファイル共有をスムーズに LucidLink
メディア業界を中心に利用拡大、分散チームの大容量ファイル共有をスムーズに LucidLink
メディア業界を中心に利用拡大、分散チームの大容量ファイル共有をスムーズに LucidLinkの詳細を見る
グローバル企業が頭を悩ます「非計画購買」業務、Candexがベンダー管理をシンプルに
グローバル企業が頭を悩ます「非計画購買」業務、Candexがベンダー管理をシンプルに
グローバル企業が頭を悩ます「非計画購買」業務、Candexがベンダー管理をシンプルにの詳細を見る
「手の届かない場所」が得意分野、難所点検用のヘビ型ロボットを開発するハイボット
「手の届かない場所」が得意分野、難所点検用のヘビ型ロボットを開発するハイボット
「手の届かない場所」が得意分野、難所点検用のヘビ型ロボットを開発するハイボットの詳細を見る
今、大企業が注目するべき「秘密計算」とは 日本発のプライバシーテックで世界に挑むAcompany
今、大企業が注目するべき「秘密計算」とは 日本発のプライバシーテックで世界に挑むAcompany
今、大企業が注目するべき「秘密計算」とは 日本発のプライバシーテックで世界に挑むAcompanyの詳細を見る
米当局も承認したインド発の「血液サンプル自動検査顕微鏡」 人の手頼みからの脱却で遠隔検査も可能に
米当局も承認したインド発の「血液サンプル自動検査顕微鏡」 人の手頼みからの脱却で遠隔検査も可能に
米当局も承認したインド発の「血液サンプル自動検査顕微鏡」 人の手頼みからの脱却で遠隔検査も可能にの詳細を見る
デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiper
デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiper
デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiperの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.