実用的な財務情報とは?
―Status Moneyを設立しようと思ったきっかけを教えてください。
クレジットカード業界で勤めていたため、消費者の行動パターンや消費量、また、学生ローンなどの借金についてよく理解をしています。なので、現在、人々がアクセスすることができる財務の情報と実際に財務状況を改善することができる様な実用的な情報には大きなギャップがあることに気付きました。
そして、実用的な財務の情報を得ることができない根本的な原因は2つあると考えています。
1つ目は、アメリカ国内には1000以上の財務アドバイザーが存在するにも関わらず、年間最低でも数千ドルかかるなど、一般の人には料金が高すぎ、手が届きません。
そしてもう1つは、マネータブーです。人々は自分の財務状況や情報を他人と共有したがりません。つまり、他人がどのようにお金を管理しているかは分からないため、自分が他人と比べ、どの様な状況に置かれているかなどの透明性が一切ありません。
そして、FacebookやInstagramなどで友人がバカンスに行っていたり高級車を買っているのを見て、私も同じ様に振舞うべきなのではと思う人もいると思います。しかし、実際のところその友人は自分よりも高い給料をもらっているかもしれないし、もしかしたら借金を抱え、無理をしているかもしれません。
つまり、コミュニケーションの欠如、そして、実用的なデータやアドバイスの欠如がこのような借金と誤った情報の負のサイクルに人々を陥れている原因であると私は考えます。
現在のアメリカ合衆国が置かれている状況を見ると、14兆ドルの家計負債があり、学生ローンは10年前の2倍と過去最高額です。また、クレジットの借金も数兆ドルを超えており、債務の危機が迫りつつあります。なので、財務情報における人同士の関係性に透明性を生み出し、人々が情報やデータを共有することで、より良い生活を計画することができる製品を提供したいと思い自社を設立しました。
ピアグループで比較、ソーシャル機能で意見交換
―提供しているサービスについて教えてください。
Status Moneyの最初のプロダクトとしては、収入や資産、純資産などのカテゴリー別に個人の財務状況を似たステータスをもつ人と比較することを可能にする個人の財務管理アプリとして開発をはじめました。
そして、その個人と似たステータスをもつグループをピアグループと呼びます。このピアグループは収入や年齢、住んでいる地域、家の所有者かどうか、またクレジットスコアなどを元に定義づけられ、自由に設定することができます。例えば、自分と同じくらいの給料をもらっていて、似た地域に住んでいるピアがいくら毎月の給料を投資に回しているかの比較や、自分と近い年齢で似たクレジットスコアを持っているピアがいくら借金を抱えているかなどの比較が可能となっています。
これらの比較データや任意でリンクさせた銀行口座などから得られる情報に基づき、機械学習によって、個々のユーザーに適した金融の商品(パートナー金融機関が提供する)を推奨します。ピアとの比較ができるため、ピアに比べてより多くの利子を払っているかなどの財務情報を可視化することができ、ユーザーはこれらの推奨製品をより直感的に取捨選択することができます。
また、プラットフォーム上ではSNSの様なソーシャルフィードを設けており、個人が設定したピアと匿名で情報や意見交換をすることができ、結婚式の予算など比較的プライバシー性の高い質問がメインとなっています。更には、投資や借金など自分の気になるトピックのハッシュタグをフォローすることで、情報を得ることもできます。
―どのようにしてピアとの比較を可能にしているのですか。
ピアベンチマークはアメリカの人口の5%のサンプルに基づいており、様々な金融機関とパートナーシップを組むことでこのようなデータパネルを作成しました。このデータパネルは、250万人以上のピアグループ、エージェントの収入、クレジットスコア、郵便番号などの純粋なベンチマークを作成することを可能にしています。
誰もが利用できる革新的なビジネスモデル
―ビジネスモデルについて教えてください。
Status Moneyのビジネスモデルは非常に革新的なものだと思っています。Status Moneyのビジネスにおいて最も革新的なものは何かと聞かれたら、私はビジネスモデルと答えるでしょう。その理由の一つとしては、製品とサービスを全ての人が利用できるものにしたかったからです。なので、サービスを高価なものにしたり、有料にするということは一切しませんでした。その代わりに、金融機関と他の企業と提携しプラットフォーム上でリードジェネレーションやスポンサーシップ、広告の機会を提供することでマネタイズしています。
―どのような日本企業との連携を考えていますか。
私たちのビジネスにとって重要なポイントは金融機関とパートナーシップを組むことで、データにアクセスし、統合することができることです。なので、金融機関や金融のサービス、製品を提供する企業とのパートナーシップを考えています。