パーソナライズ市場にいち早く着目、市場を牽引する存在に
2017年創業のSpartyは、パーソナライズされたD2Cブランドを中心としたサブスクリプション型ECサービスを手掛ける。自社ブランドにはヘアケアの「MEDULLA」、スキンケアの「HOTARU PERSONALIZED」、ボディメイクの「Waitless」があり、それぞれユーザーがオンラインで質問に回答すると、その傾向に合わせたアイテムを届ける定期購入型のサービスだ。利用中もユーザーから感想や意見を募り、個人の状態や季節などにも最適化したアイテムを届けている。
創業者で代表取締役の深山氏は、さまざまなビジネスのアイデアを模索する中、くせ毛で悩む妻がさまざまなヘアケアアイテムを試していたことから、シャンプーのパーソナライズサービスに注目して事業をスタートした。大量生産・大量消費といった従来のプロダクトのあり方が問われ、大手メーカーもパーソナライズ市場に着目する中、いち早くオンラインでパーソナライズサービスを手掛けたのがSpartyだ。コロナ禍で接客サービスの機会や対面販売が縮小したことも追い風となり、2021年9月時点で累計ユーザーは3ブランド合計で40万人を超えた。
2021年12月発表の「2021年 日本テクノロジー Fast 50」(主催:デロイト トーマツ グループ)において、直近3年間の成長率2327.6%の収益(売上高)成長率を記録し、2位を受賞するなど勢いに乗っている。成長の理由や競合優位性について深山氏は次のように語る。
「まずは、パーソナライズという市場自体が広がればいいと思っていますので、競合が入ることについては基本的にウェルカムです。私たちの優位性は3つあります」
「1つは、出店や広告展開など、パーソナライズ領域において他社ができない挑戦をいち早く行っていることです。2つ目はUXで、ユーザーが利用するWebサイトだけでなく、裏側のバリューチェーンや研究開発、製造なども磨き込んでいます。3つ目は人材です。外部に開発などを委託するのではなく、テクノロジーやマーケティングなどの専門家が社内にいます。既存のメーカーにIT企業が合わさったようなハイブリッドな組織です」
ブランド開発・ソリューション提供で、市場拡大とさらなる成長へ
Sparty は2021年8月に、JICベンチャー・グロース・ファンドをリード投資家とし約20億円の第三者割当増資を実施。加えてりそな銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行から21億円の融資を実施して、総額約41億円の資金を調達した。2021年12月には女優・黒木瞳氏をCPO(Chief personalized officer)に任命し、肌質診断の結果に合わせたオーダーメイドスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」を通じたパーソナライズ文化の浸透や新商品開発を共同で行っていく、としている。
「パーソナライズブランドといえばSpartyという、第一想起をとっていきたいと思っています。しっかりとお客様に認知され、足場を固めて世の中に広げていくというのがこの1〜2年の目指す姿です。パーソナライズの市場自体が拡大していけば、自分たちも成長していけるはずです」(深山氏)
人気YouTuberのヒカル氏とコラボした香水を発売するなど、自社ブランドで培った商品開発・製造、販売、マーケティングのノウハウを他社に提供するソリューションも展開している。パーソナライズ市場が拡大すれば、そこに参入したい企業が増え、協業によっても事業を拡大できる戦略だ。パーソナライズする製品は千差万別なため、自社で展開するシャンプーなどでの協業も歓迎する。
芸能人やインフルエンサーなどとのコラボだけでなく、各種OEMやメーカー、サプライチェーン側のパートナーも常に開拓している。スキンケアの「HOTARU PERSONALIZED」では、商品の提供だけでなく遠隔診療も手掛けるとしている。
「ニキビにお悩みの方へ、オンラインでお医者さんに質問をして、処方箋をもらってお薬が自宅に届く、というサービスです。お客様に最適なものをお届けするという考えのもと、医薬品も提供したいと考えたのです。AGA(男性型脱毛症)や生活習慣病などのお薬も提供していきたいと考えています」(深山氏)
パーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA」 Image: Sparty
中国展開も視野に 「1人ひとり」に合ったもので幸せを
コロナ禍を経て企業も個人もオンラインでの活動を増やしているものの、深山氏は日本のEC化率はまだまだ低く、今後さらに拡大していくと予想している。その中で不足する商品開発や製造、販売、マーケティングなどのオペレーション人材も含めて、Spartyがサポートしていく。2022年からは中国をはじめとするアジア市場への展開も予定している。長期ビジョンについて深山氏は次のように語った。
「当社のミッションは『色気のある時代を創ろう』です。また、誰かのコンプレックスが誰かの光になることもあると思っています。物がありふれている世の中も、人と人、人とモノが引きつけ合う力があると考えており、それが我々の定義している『色気』です。1人1人に合ったもの、それぞれの個人にとって必要なものをどんどん提供することで、幸せな世の中をつくっていきたいと思います」(深山氏)
家族の髪の悩みから着想した事業が拡大し、サービスの利用者だけでなく、コラボ相手や製造、サプライチェーンなど、さまざまな関係者に光を当てていくSparty。個人に最適化する新たなメーカーの形を構築し、国内のみならず海外にも展開していくという同社の今後に注目していきたい。