国際的なバックグラウンドがShoplazzaの基盤
Li氏はイギリスの大学でコンピューターサイエンスを学び、インターネットセキュリティの修士号の学位を取得。その後、中国に戻り、セキュリティソフト開発のKingsoftに就職したのち、中国大手の検索エンジン会社であるBaidu(バイドゥ、百度)に転職。国際部門で北米、欧州、日本、中東などグローバルなビジネスに携わってきた。
「Baiduはとても国際色が豊かな会社で、仕事柄さまざまな国に行き、いろいろな方々とお話する機会に恵まれました。またGoogleやFacebookなどのグローバル企業といいビジネス関係を築くこともできました。その経験から『中国をグローバル化したい。今がグローバル化するいいチャンスだ』と思ったのです」
「中国で作られている製品はたくさんあるので、サプライチェーンをグローバル化するチャンスは多いのです。顧客のニーズをきちんと把握すればチャンスはさらに広がります。自分たちの持っている技術を生かして顧客の課題を素早く解決することをビジネスにしたいと考え、共同創業者とチームメンバーをBaiduから迎えてShoplazzaを2017年に立ち上げました。カナダに拠点を置くShopifyのような会社を作り、顧客と製品ブランドのグローバル化を支援する会社を作りたかったのです」とLi氏は創業の経緯を語る。
中国・製造業のDTCなど、グローバルな需要に対応する
Shoplazzaのプラットフォームの特徴はどのようなものか。Li氏は「Shoplazzaのミッションは『最先端の技術を介して顧客のグローバル化を支援すること』です。常に顧客に焦点を当て、グローバル化の支援をし、顧客が抱えている課題の解決に迅速に取り組むことです。我々の一部の顧客は中国の製造業者ですが、DTC(消費者への直販)のオンラインブランドECサイトを構築して、自社製品を北米や日本など海外で販売したいと考えていますが、それには顧客のニーズを正確に把握する必要があります。我々は顧客の最新のニーズをキャッチし、データを収集、分析を行い、素早く課題を解決することを心がけています」と語る。
同社は創業時の目標としたカナダの多国籍eコマース企業Shopifyと比較されることが多い。Li氏は「ビジネスモデルはShopifyと似ていますが、我々が取り組んでいる地域、国、マーチャントタイプは異なります」と説明する。
「同様のECビジネスをしている優良な企業はたくさん存在しますが、我々の違うところは『彼らが解決したことのない顧客の課題を解決すること』です。また、多くの企業が自国のビジネスに特化しているのに対し、Shoplazzaは常にグローバルに目を向けています。顧客のグローバル化の成功を導く支援をする。そういった観点から、同様のビジネスを行っている企業は多くないため、競合他社は少ないです」と自信を見せる。
2020年にはPayPalの「ベストショッピングカート」に選ばれ、2021年にはフォーブス誌の「Forbes China Enterprise Technology 50」にも選出されるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けているShoplazza。
2022年1月には、シリーズCラウンドで、SoftBank Vision Fund 2をリードインベスターに、Chimera Partners, Stepstone Group, Sequoia Capital Chinaなどから総額1億5000万ドル(約210億円)の資金調達に成功した。著名VCに「投資したい」と思わせるShoplazzaの魅力はどこにあるのか。
「ソフトバンクのような大企業に出資していただけたこと、とても光栄に思います。我々のビジネスは分かりやすく、不透明な部分がありません。顧客の抱えている課題を解決するべく努力し、真のビジネスをやっているだけです。経営も健全で、毎年400%ベースで成長しています。投資家の方々はアリババにも投資しているように、Eコマースの将来性なども熟知していますから、スピーディーに(投資をするという)判断を下してくれたのでしょう。
調達資金はインフラ構築やAIの開発など技術チームの強化をはじめ、Shoplazzaの認知度を広めるべくグローバルビジネスの展開、北米、ヨーロッパにおける顧客ベースの拡大、グローバルチーム強化のための優秀な人材の確保などに充てる予定だ。
Image: Shoplazza HP
日本参入も視野に入れ、さらなるグローバル展開を目指す
今後は、北米、欧州での顧客基盤を広げる予定だ。現在、定期的に北米でウェビナーを開催し、パートナーやパートナーの顧客などに参加を呼び掛けている。
Li氏は同社の事業展望をこう語る。
「グローバルビジネスを成功させるには、既存の顧客からの高い評価と口コミによって顧客数を伸ばすことが非常に重要となってきます。顧客の抱える課題を解決するという我々のミッションを遂行し、例えば、どのように商品化していいか悩んでいる小規模企業が中国のサプライチェーンとつながることも可能になるよう、今後も支援していきたいです。また、さまざまな国籍の社員が一致団結できるよう、社内に独自の文化も築いていきたいです。文化が異なる人達が集まれば、お互いを理解しようと努めますし、さまざまな意見も生まれます。ダイバーシティ(多様性)を尊重することで、会社はさらに成長します」
将来的には日本市場への参入も検討しているという。「日本は非常に魅力的なマーケットだと思います。世界で一番といっても過言ではありません。日本の技術は素晴らしく、常に進化しています。文化もとてもユニークです。例えばスマホのメッセージアプリですと、欧米ではWhatsappを使っていますが、日本ではLINEの利用が多いようです。日本に参入するにあたり、日本独特の文化をまず知る必要があるでしょう」
日本市場への参入は「ハードルがある」と認識する一方、「日本人は気さくで親切な方が多いので、きちんとした信頼関係を結べば、とてもいいビジネスができると確信しています。