医療にEコマースのような経験を
米国で医療関係の情報を一元管理できるプラットフォームを展開するPokitDok。従来、米医療市場では病院の検索や予約、支払いや清算、保険、薬の管理などがオンラインで一元的に管理できる仕組みがなかった。PokitDokははじめて、相互互換性のあるプラットフォームを作り、患者にスムーズな医療を受けられる環境を与えようとしている。
CEOのJoe Murad氏は「我々のモデルによって、患者は透明性が確保された状況で医療機関を選んだり、自分の支払いを管理したりすることができ、ヘルスケア分野において、まるでEコマースのような経験をしてもらうことができます」と語る。
医療保険機関の95%をカバー
PokitDokの強みは、米市場の95%を占める700もの医療保険機関と提携する独自のクリアリングハウス(電子カルテ情報を受け取り、医療請求書を保険会社に電子的に提出する仲介業者)を持つこと。これらの医療保険機関の加入者430万人のデータベースを保有することになる。従来は医療事務員が医療情報をCPTと呼ばれるコードにして入力する必要があったが、これをデジタル化し、決済システムも持つ。
米国では個人がそれぞれ民間保険に加入するが、自分が加入している保険が当該医療機関で適用可能かなどの情報が得られなかった。通常、合計の医療費に対して保険が適用されて最終的に自己負担額が決まるが、手続きは複雑で透明性が高いとは言えない状況だったという。
「これまで、医療業界の手続きは本当に非効率でした。どの保険でどの医療機関がカバーされるのか、自己負担がいくらになるか、薬代はどれくらいになるのかといったことも明確ではありませんでした。決済も煩雑で、スムーズにいかないこともありました。我々はこうした情報を全てつなげられるようにしました」とJoe Murad氏。
PokitDokのプラットフォームでは、患者のID認識でこうした情報にワンストップでアクセスできるようになる。病院・保険会社のIT部門向けのAPIプラットフォームも提供。予約管理や、患者の病歴との照合、決済などが一元管理できる。医師が処方箋を出す際に、即時に患者の保険を調べて医薬品の値段を確認し、患者に価格説明してから出すといったこともできるようになる。
3.2兆ドルの米医療市場
ビジネスモデルとしては、プラットフォームのライセンスフィー、APIの取引料などで収益を立てている。クリアリングハウスのレベル4というもっとも基準の高い資格を保有。患者のIDで管理をするので、情報管理には細心の注意を払っている。
今後の展望について、Joe氏は「非常に楽しみにしているのが、独自のブロックチェーンDokChainを利用した決済です。これがリスクを減らして効率的なやりとりを生み出し、情報からマネタイズが可能になって、また新たな顧客が増えることを期待しています」と話す。54社のグローバル企業が加入するDokChainアライアンスというネットワークを持ち、さらに広げようとしている。
当面は3.2兆ドルといわれる米医療市場にフォーカスするが、ID管理の方法などは他の市場でも有用ではないかとJoe氏は見ている。