HVSに結合するモバイルディスプレイ
私たちは、モバイルデバイスによってもたらされたビジュアル機能の拡張が、過去20年間の世界的好況をもたらしたと考えています。
しかし、モバイルユーザーはより広い帯域幅で多くの情報へアクセスできることが当たり前になり、モバイルデバイス上でHVS(人間視覚システム:Human Visual System)と視覚的に結合する機能の向上が必要になっています。情報ネットワークからモバイルデバイスを介して受信した情報をHVSと視覚的に結合する際にギャップがあり、こうした問題を解決するためにOstendoを設立しました。
――御社が開発した新しいディスプレイ技術について詳しく教えてもらえますか。
Quantum Photonic Imager(以下QPI)という技術です。これにより、インターフェイスでモバイルデバイスとウェアラブルデバイスを接続できるようになり、モバイルユーザーのHVSと没入感とボリューム感がある視覚情報を結合できます。
Quantum Photonic Imagerの技術 Photo: Ostendo
モバイルデバイスとHVSとの間にあるビジュアルインターフェイスの帯域が大幅に拡がり、モバイルユーザーが情報ネットワークから得る情報帯域を大幅に拡大することができます。これが実現できれば、モバイル通信やスマートフォンなどのモバイルデバイスによりもたらされた、経済的な成長と好況を今後数十年継続できるでしょう。
社名である「Ostendo」は、ラテン語で“見せる、表示する”という意味です。そして、当社のモットー“Ostendo non Ostento”は、ラテン語で“見せびらかすのではなく、見せる”という意味です。QPIベースの小型ディスプレイを使えば、サングラスのように身につけることができるデバイスから、コンピューティングプラットフォームに視覚的に接続できるようになります。
欲しい情報を常に“見せる”ことが可能に
――御社の技術はどのように活用されるのでしょうか?
QPIは、全てのモバイルユーザーにメリットをもたらすと考えています。QPIベースのウェアラブルディスプレイは、例えば日常の中では、移動中にはスマートフォンと、車の中では車載コンピューターと、仕事場や自宅ではPCのインターフェイスとして活用できます。
視覚的に、より多くの情報にアクセスできるようになることで、ユーザーは効果的で効率的に仕事ができるようになり、他にも様々な用途での活用が考えられます。
当社のQPIは、ウェアラブルディスプレイを使う全ての用途において活用が考えられます。当社の製品にご興味をお持ちいただいている企業は複数あります。顧客の市場参入優位性を守る必要があるため、ここでは社名などの情報は開示できませんが、当社はそうした顧客に対してQPIをデバイスとして製造・販売します。
――QPIベースの主力製品はどういったものがあるのでしょうか?
QPIが当社の主力製品です。QPIは、現在存在する中で、最も先進的な機能を最も多く持つマイクロLEDマイクロディスプレイです。
QPIを使った製品には、メガネ型のウェアラブルディスプレイや、ライトファイル(ホログラフィック)ディスプレイなどがあります。
――競合はいるのでしょうか。また他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか?
長い間、当社のQPIがRGB積層構造のマイクロLEDを使った唯一のディスプレイでしたので、当社はマイクロLEDディスプレイ技術の先駆者でした。ここ数年の間に、マイクロLEDディスプレイ技術の利点が顕著になり、それが認識されたため、競合と言えるいくつかの企業が製品開発を行っています。
しかし、現在も当社のQPIは、機能および性能面において最も先進的です。一つのピクセル開口部から赤、緑、青(RGB)を発光できる唯一のマイクロLEDです。そして、5〜10ミクロンと量的に小さいRGBピクセルで機能するため、ウェアラブルディスプレイを可能にしています。
当社には大物投資家が投資しています。彼らは決まって、高いROIを早く達成するための基準を設けています。QPIとそれを使った製品レベルの高さから、当社の製品は非常に差別化されており、その基準を満たしていることから、複数の大物投資家から資金調達に成功しています。
パイロット版の完成が近い
――調達した資金は何に使用しましたか?また、今後は何に使用しますか?
創業以来、約2億8千万ドルの資金を調達しました。全てベンチャーキャピタルからのエクイティ投資です。資金は、主にQPIとウェアラブルディスプレイの研究開発に使用しました。現在調達を行っている今後のための資金は、QPIのパイロット版の完成と市場投入計画を実行に移すために使います。
Photo: Ostendo
現在は、製品の市場投入に近い段階にあります。今後6ヶ月間で、生産可能なウェアラブルディスプレイのプロトタイプを完成させ、量産体制に移行するプロセスの開始を目指しています。
当社が開発した強力な知的財産ポートフォリオを持つコア技術は、他社にとって強力は参入障壁となるでしょう。当社は、80億台以上存在するコンピューターデバイスの、コンパニオンデバイス(ディスプレイ)として、非常に大きなマーケットをターゲットにしています。
――日本市場への参入は検討していますか?
はい、考えています。参入する場合は、製品のマーケティングや販売に協力してくれる日本のパートナーを通じて活動するつもりです。国際市場を開拓するために最も重要なステップは、当社のビジョンと製品をその市場に広める手助けをしてくれるビジネス開発パートナーを見つけることだと考えています。日本市場でも、そうしたパートナー企業を求めていきます。
――長期的なビジョンを教えていただけますか?
ウェアラブルディスプレイ市場のリーダーになるために努力することです。今後数年かけて、3段階に分けて性能仕様と機能を向上させたウェアラブルディスプレイをリリースする計画を立てています。
サングラスと同様の大きさで軽量な真に「ウェアラブル」なサイズで、日常的に遭遇する全てのコンピューティング・プラットフォームと「互換性」があり、ボリュームがある没入型モバイル・ビジュアル・インターフェイスの標準となる「手頃な価格」のウェアラブルディスプレイを提供すること。当社はウェアラブルディスプレイの標準を作ることに重点を置いています。