祖父母をアルツハイマーで亡くしたことがきっかけ
―どのような経緯でこのビジネスを始めたのですか。
私は最初のキャリアを米政府でスタートさせました。ビル・クリントンが大統領のときに、ホワイトハウスで働いていましたね。国務、財務部門を経て、ニューヨークに引っ越してプライベートエクイティで発展途上国向けの投資を担当しました。その後、国連でミレニアム開発目標の設定に携わりました。解決が難しい問題に、ものすごく優秀な人たちと一緒に取り組むのが好きなのです。
転機はハーバードビジネススクールに通っていたときのこと。祖母がアルツハイマーで亡くなったのです。実はアルツハイマーで祖父母を亡くしたのはこれが2人目でした。
ちょうどビジネススクールを卒業する間際で、何か事業を起こそうと考えていました。祖父母を亡くして、この領域でほとんど進歩がないと知り、それならば自分がアルツハイマーの問題を解決しようと決めました。とにかく最高の技術を持っている人に会いに行こうと思い、今の共同創業者であるZola医師とBeth Buffalo医師に出会ったのです。
Image: Neurotrack
―研究が技術のベースになっていますね。
Zola医師は世界中でもっとも優秀とされている神経科学者の1人です。彼は脳の損傷を血液採取やMRIなどの機器利用がなくとも、誰にでも調べることができる方法を探っていました。今私たちが使っているテストは、その技術自体は、Zola医師が数十年前に開発したものです。
アルツハイマーは実際に何かの症状が現れたときから対処をしようとしても、遅すぎることが多いのです。私たちの技術では、45〜75歳の人を対象に、実際に症状が現れるよりも20〜25年早く予兆を見つけることができます。日本のように高齢化が進んでいる社会では、特にこの技術によって大きな危機を回避できると思っています。
Image: Neurotrack
前例のない、デジタルセラピーの会社
―競合他社はあるのでしょうか。
認知テストに関しては伝統的な方法で取り組んでいる企業はありますが、視線を追うことで簡単にテストをできるというのは私たちが初めてです。セラピーができている競合他社についてはいません。
これまで、99.6%のアルツハイマーの薬は失敗しています。でも市場はあります。私たちは今まさにデジタルセラピーの会社になろうとしていて、認知系の病気予防に貢献したいと思っています。アルツハイマーだけではなく、脳に関係する病気を診断し、予防し、治癒させる会社に成長させていきたいと思っています。
―日本への関心はありますか。
非常に高い関心を持っています。日本には私たちの技術へのニーズが非常に高いはずです。すでにいくつかパートナーを組んでいる日本企業がありますが、金融関係、従業員向けに導入したい大企業、医療施設、介護関係など、様々な企業を対象に協業を考えていきたいと思います。