目次
・「きつい」「苦しい」営業活動を創造的で楽しく
・根本的な原因は営業の属人化
・「Mazrica」の3つの特徴的機能
・導入企業のユースケースは
・「働く」の価値観が変化していくそのそばに
「きつい」「苦しい」営業活動を創造的で楽しく
―営業支援ツール「Mazrica」が国産サービスとして注目を集めています。プロダクトの開発を始めるに当たり、営業活動を巡る現状にどのような課題を感じていましたか。
世の中の営業の仕事を見ると、「数字に追われてきつい」とか、「苦しい」とかいったイメージが強く、楽しんで営業をしている人は少ないように感じます。でも、私の原体験から言えば、営業はもっと創造的で楽しいものだと感じていました。
例えば、子供が遊ぶ時は楽しさや喜びを全身で感じながら夢中になって遊びますよね。仕事をする時も、子供が遊ぶような集中力やエネルギーを発揮できれば、もっと素晴らしい世界ができると思うんです。
そんな風に営業ができる人を増やしたいと思い、「Mazrica」というプロダクトを作りました。Mazricaは管理ツールではありますが、われわれは営業のプレーヤー一人ひとりが、「使わされる」のではなく、自ら使いたいと思い、実際に使うことでより高い創造性を発揮できるという点にフォーカスして開発を進めてきました。
根本的な原因は営業の属人化
―マーケティングや営業が、創造的で楽しい仕事になっていない原因はどこにあるとお考えですか?
根本的な原因は、営業という仕事の属人化だと思っています。例えば、新入社員が初めて営業を行う時には、当然何をすればいいのかわかりませんので、先輩に聞いたり上司に教えられたりしながら仕事を覚えていくと思いますが、そういう営業のナレッジは属人的なものであり、すべての人に当てはまるわけではありません。そこで、さらに他の人に聞いたり、経験を積んだりしながら自分のスタイルを確立していくわけですが、そこに至るまでには膨大な時間を要します。
そこで、過去の全ての営業活動をデータベース化して解析し、「このようなケースではこういう提案書が有効」といったような提案をAIが行えば、営業経験がない人でもそれを基に自分のアイデアを加えながらより効果的な営業のスタイルを作っていくことができる。属人化されたナレッジを全社で共有できるナレッジに変えて見える化することで、創造的で楽しい営業が実現できるはずです。
―顧客管理や営業支援システムの市場は、競争の激しい、いわゆる「レッドオーシャン」ですが、あえてそこに挑もうとされたのはなぜでしょうか?
確かにCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)と呼ばれる営業支援システムの市場は、SalesforceをはじめMicrosoftやOracleなど、世界的企業がひしめき合う市場です。しかし、そのサービスを導入しているお客様たちの現状を見ると、それを上手く使いこなせていない会社が結構多いのです。
例えば、これらのシステムを運用するには、まず営業の人たちが日々の活動のデータを入力しなければなりませんが、既存のシステムは非常に使いづらく、入力するのが面倒な上に、そのデータが自分たちの仕事に対してどんなメリットがあるのが実感できないという声があります。そのため、ちゃんと入力をしてくれないケースが増えて、データが蓄積されないようになり、結果的にシステム自体が使われなくなってしまう。
この問題を解決するには、営業の皆さんがメリットを感じ、自ら使いたいと思うようなシステムがなければなりません。現場ファーストの視点に立った営業管理や営業支援ツールを開発・提供することが必要ですし、またそこにわれわれのビジネスチャンスがあるのではないかと考えました。
「Mazrica」の3つの特徴的機能
―「Mazrica」の特徴や導入メリットについて教えてください。
Mazricaには「データ入力の自動化」「AIによるサジェスト機能」「導入時の開発・コーディングが不要」という3つの特徴的な機能があります。
まず「データ入力の自動化」ですが、既存のツールは画面設計が分かりづらい上に、業務ツールや企業データベースとも連携できず、手入力する必要がありました。それに対してMazricaは、各種ツール、データベースと自動同期でき、データの網羅性や精度が向上します。また、誰でも直感的に使いこなせるような仕様になっていますし、他社のツールで3〜4クリック必要な動作もワンクリックで済ませることができます。加えて、OCR機能も搭載しているため、名刺や議事録のスキャン、自動文字起こしなどにもモバイルアプリから対応可能です。
「AIによるサジェスト機能」に関しては、既存ツールは蓄積したデータを分析・活用する機能が手薄だったため、自分でデータを加工・分析しなければならず、多くの手間がかかっていました。その点、Mazricaは、標準装備されているレポーティング機能に加えて、過去の成功事例・失敗事例をAIが分析し、次に取るべきアクションを提示するといった機能を備えています。営業活動を直接支援できるシステムになっているので、現場の皆さんもメリットを十分に享受できますし、営業効率や生産性も向上します。
「導入時の開発・コーディングが不要」という点についてですが、従来のツールは導入時に開発・コーディングが必要で、利用開始や変更に多くの時間とコストがかかっていました。Mazricaは社内の限られたリソースやスキルでの運用を前提にしており、クラウド型統合プラットフォーム「Workato」とも連携していますので、ノーコードで複数のクラウドサービスとデータ連携できます。さらに、導入後の仕様変更も容易です。
導入企業のユースケースは
―Mazrica の導入によって課題を解決されたクライアント企業の事例を紹介いただけますか?
最近の話ですと、水産加工物事業を国内外で展開する一正蒲鉾さんの事例があります。同社は、水産練製品業界2位の大手ですが、各部署の目的や課題に対して、情報システム課が個別にシステムを内製し、それを使った複雑な情報管理が行われていました。営業領域でも商談日報の管理システム以外に多数のシステムが存在し、その一つひとつに情報を入力したり、情報集約のために報告資料を作るなど、事務作業に多くの時間を割かれている状況でした。
そこで、入力作業などがシンプルで分かりやすく、営業の業務負担の軽減が図れる点や、見やすく操作性の高い案件ボードを備えていることなどが評価され、Mazricaを採用いただきました。それによって、案件の進捗や失注リスクを日々共有し合うとともに、商談の提案資料も共有するなど、全国の営業所間のコミュニケーションも活性化され、結果的に導入からの半年間で、既存顧客への営業活動における商品の採用率が2倍にまで伸びるという成果を上げられています。
IT系では、大手システムインテグレーター、TISさんの事例があります。同社はさまざまな製品・サービスを扱っていることから、同じクライアント企業の複数部署と取引するケースもあり、多くの社内メンバーがそれに関わることになります。そこで課題になっていたのが情報共有で、顧客に新たなサービスを提案したくても、継続中の取引情報やこれまでの経緯が共有できていないため、社内の担当者が誰なのか・顧客企業の担当者は誰なのかを確認するのも大変でした。
その状況を改善するために、「現場が納得して使えるSFA/CRMを選定する」との方針でMazrica を導入いただきました。その結果、情報蓄積やデータ活用の文化が定着し、情報共有が促進されたのと同時に、社員が自分の成果を定量的に把握できるようになったため、マネージャー層が指示を出さなくても一人ひとりが積極的に動けるようになったと評価いただいています。
―Mazrica の採用実績はどのような形で推移しているのでしょう?
2021年に2,000社に採用いただいていたのが、現在は3,000社弱にまで増えていますね。Mazricaを採用されるケースには、大きく分けて2パターンあって、1つは今までSFA/CRMを導入されたことのないお客様。もう1つは、当社の競合のサービスを導入したものの上手く使いこなせていなくて、現場がより使いやすいサービスを求めてMazricaを選んでいただいたというお客様です。
―ここに至るまでにどんなご苦労がありましたか?
当社のようなスタートアップが、世界の大手が長い時間をかけて開発してきたシステムに追いつくのはかなり大変で、競合と遜色のない機能を揃えるのに苦労しました。また、当社は創業時から戦略的に少しずつターゲットを変えてきていますし、多くのお客様との面談やアンケート、チャットサポートなどを通じてお寄せいただいた声を基に、改善や機能追加をし続けていますので、開発の手が足りないほどです。
事業展開に関しては、競合大手と比べるとやはり認知度が低いというところがネックでした。われわれは、自社のプロダクトやビジョンにおいては、競合に劣らないと自負していますが、認知度の低さのおかげで、お客様がSFA/CRMを導入しようとする際に第一想起として当社の名前が上がらないんです。その状況を打開するために、展示会やイベントなどでPRしてきましたが、最近ではMazricaを導入いただいたお客様の口コミやレビューサイトで高い評価をいただき、当社の認知度も徐々に上がってきました。われわれがとことんプロダクトにこだわり、機能向上に努めてきた成果だと思っています。
image: マツリカ
「働く」の価値観が変化していくそのそばに
―マツリカを起業された背景をお聞かせください。
子供のころから「1人でも多くの人を幸せにしなければいけない」という使命感のようなものを持っていたのですが、中学生になり、自分1人でできることは限られていると思うようになりました。そこで、自分の会社を作って仲間たちと一緒に多くの人たちを幸せにできるビジネスをしようと考えたのですが、社会人としての経験もなく、右も左もわからない人間がいきなり起業しても上手くいくはずがありません。そこでニューヨークの大学を卒業後、企業やビジネスの仕組みを学ぶためにハウスメーカーに就職しました。
その後、起業に向けて、経営の在り方やプロダクトの開発、事業拡大のプロセスなどを最前線で経験しようと考え、経済情報サービスを提供するスタートアップのユーザーベースという会社に転職しました。ハウスメーカーでは、営業もやりましたし、ユーザーベースではマネージャーとしてマーケティングや事業設計なども手がけ、一通りの業務は経験しましたので、その過程で世の中の課題やペインが見えてきたんです。
―御社の今後の事業展開についてお聞かせください。
引き続き機能追加・向上を図るのはもちろんですが、Mazricaは企業の業務の核になるシステムですので、それをベースに周辺領域で第2、第3のプロダクトも開発しているところです。そして、将来的には世の中のあらゆる商取引の「不」を解消していきたいですね。例えば、BtoCの市場では、Amazonなどを使えば、世界中のあらゆる商品を検索やおすすめであっという間に探すことができますし、口コミを見ながら最適な商品を選べます。
ところが、同じ商取引でもBtoBの世界では、ブラックボックスになっていて見えない部分がいっぱいあって、必要のない商品を買ってしまったり、高い値段で買わされてしまうなど、「不」がたくさんあるんです。われわれは、それを解消して、売る側と買う側が限りなくフェアに取引できるような世界を実現したいと思っています。
―事業展開に当たって、どのような企業とどんなパートナーシップを組んでいかれるお考えですか?
販売パートナーとプロダクト連携のパートナーの両方を求めています。販売については、先ほど申し上げた通り、認知度の低さが当社のネックですので、認知度のある大手企業などの協力を得ることができれば、拡販にさらに弾みがつくはずです。一方、プロダクト連携に関しては、MazricaはわれわれのSaaSビジネスの根幹部分ですが、その周辺のサービスについてもさまざまなニーズがありますので、それらのサービスを展開されている企業と連携して、トータルでより良い顧客体験をしてもらえるような形を作っていきたいですね。
―そのようなパートナーシップにご興味をお持ちの企業の皆さんに、改めてメッセージをお願いします。
「働く」という行為に対する価値観は、もっと変わっていかなければならないと思いますし、実際にこれから大きく変わっていくでしょう。われわれはそれを支援していきたいと思っていますので、共感していただけるパートナーの方とぜひ一緒にプロジェクトを組んでいきたいですね。同時に、働き方を変えるには、組織の在り方自体も変えていく必要がありますので、当社のツールを使っていただく企業の方々にもビジョンを共有いただいて、働く人たちが「創造性高く遊ぶように働ける環境」が実現できればと願っています。