企業に関する情報の口コミサイト「キャリコネ」からスタートし、現在はデジタルトランスフォーメンション(DX)の課題解決に取り組むグローバルウェイ(本社:東京)。メディアやリクルーティング事業で培った転職・就職の総合支援や、法人向けクラウドサービスのコンサルティング・導入支援サービスなどの事業シナジーを生み出し、技術者不足に悩む企業とエンジニアをつないでDXを推進する。「人材」と「技術」の両軸を強みに掲げる同社代表取締役社長兼CEOの小山義一氏に、DX実現への取り組みや展望について話を聞いた。

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「生き生きと働ける社会に」ライフスタイルの変革とビジネスの革新に貢献

――まず御社の歴史と事業概要について教えていただけますか。

 当社は2004年に設立し、今年で19期目を迎えています。取締役会長である各務正人は、アメリカ留学と外資系企業勤務の経験があり、「日本も海外と同じように、みんなが生き生きと働けるような社会にしたい」と当社を設立しました。以来、「ライフスタイルの変革とビジネスの革新に貢献」をテーマに様々な事業を展開してきました。

 今は5つの事業セグメントがありますが、大きく分けると「人材」系と「技術」系の2つの軸になります。

 人材系で最初に取り組んだのはメディア事業で、「キャリコネ」といういわゆる「企業の口コミサイト」です。現役もしくは元社員に勤務先企業の福利厚生や待遇、社風など有益な情報を広げてもらうためのウェブメディアです。

 このほか、転職エージェントの「GLOBAL AGENT」、転職サイトの「キャリコネ転職」なども立ち上げました。リクルーティング事業として、外資系、コンサルティング、IT業界を中心とした職業紹介サービスや、主にハイクラス人材をターゲットとした転職サービスを提供しております。メディアとリクルーティングをうまく連携して強化していきたいと考えています。

小山義一
グローバルウェイ
代表取締役社長兼CEO
通信会社系SIerへの入社後、外資系コンサルティング会社への出向を経て、コンサルティング事業の立ち上げに従事。2012年にグローバルウェイに入社し、クラウドソリューションのデリバリ責任者として事業を牽引し、ビジネスアプリケーション事業の拡大に貢献。2018年に会計系コンサルティングファームに入社し、製造業を中心とした様々な企業のデジタルトランスフォーメーションを推進。2020年11月、グローバルウェイに帰任し、代表取締役に就任。

 シェアリングビジネス事業として、グループ会社のタイムチケットが「TimeTicket(タイムチケット)」を展開しています。「TimeTicket Pro」「eSportStars」というスキルシェアプラットフォームを、色々な方が自分のスキルや隙間時間を活かせる場所として提供しています。

 技術系においては、2010年代初頭からクラウドサービス事業を始めています。GoogleやAWS、Salesforceといったプロバイダーが提供するソフトウェアを組み合わせるシステムインテグレーター(SIer)として、お客様に最新ソリューションを提供しています。特にSalesforceの需要が高く、最も伸びている分野です。DXの流れでデータ分析やAI、IoT領域が活発なため、プラットフォーム事業も好調です。

 当社は「人材」と「技術」両方のサービスを提供できる企業であり、その事業シナジーによって、DXを推進する上で顧客が直面する課題を解決できるサービスを提供しています。

Image: グローバルウェイ

DX推進に必要な人材を集めるネットワーク、技術者の内製化を提案

――2016年に東証マザーズに上場し、2020年11月には小山様が社長に就任されました。新しい経営体制となり、御社の「第2創業期」と位置付けていらっしゃいます。成長を続けていく展望について教えてください。

 世の中はDXに向かって大きく動いています。しかし、これから2030年までにIT業界で約79万人の技術者が不足するとも言われています。これを補うのは簡単なことではありません。まずは「分母」となる現在の人材に活躍していただくことが大事だと考えています。

 私たちは人材と技術の両方で培ってきた経験や実績を活かし、「お客様のDX課題に貢献する」をスローガンに掲げました。各事業のシナジーを高めていきます。例えば、私たちはウェブメディアと転職エージェントを持っていますから、それらを組み合わせればIT人材採用のお手伝いができます。またスキルシェアマーケットプラットフォームを活用して、エンジニアの流動化を助けることもしています。

 以前に比べてだいぶ副業が認められるようになってきました。企業で働きながら自分のスキルを活かしきれていないエンジニアや、会社に所属しないでフリーで働くエンジニアを「週1日だけアドバイザーとして働く」「社員の1/5だけ働く」という形で紹介する機会も増えています。機会を最大化していければと考えています。

――人材と技術の2つのサービスを同時に展開しているとは珍しいですね。

 そうですね。人材と技術の両方から事業展開するSIerは珍しいと思います。DXは「導入したら終わり」というものではなく、導入後も保守、メンテナンスなど運用を続けていかなければなりません。日本SIerの多くは導入後の保守・サポートを続けて稼ぐビジネスモデルとなっていますが、私たちは出来るだけお客様だけで完結させていってほしいと考えています。

 私たちは顧客企業の人材採用までお手伝いできます。運用を外注すると、どうしてもコストが高くなる上に、スピードが遅くなってしまうからです。これではDXの効果を最大化できません。お客様が社内でIT人材を採用し、育て、なるべく自前で回していくのが最も望ましい形だと考えています。

 こういった人材と技術双方を生かしていく方針を決めたのは私が社長に就任してからです。私は通信系SIerと外資系コンサルティング会社への出向を経て、2012年からグローバルウェイに勤めました。2018年に会計系コンサルティング会社へ移って製造業のDXを支援してきました。グローバルウェイは技術だけでなく、独自の人材ネットワークを持っているところが強みです。この2つをうまくつないだら、本当のDXを叶えられるのではないかと思い、2020年にグローバルウェイへ戻ることを決め、事業展開をしているところです。

Image: グローバルウェイ

――これまでどのような成果が出ていますか。

 2021年度(18期)の売上高は前期に比べ1.5倍に増え、利益もV字回復させることができました。変革の成果が現れていると感じます。

 18期はセールスフォース事業と人材・リクルーティング事業が伸びました。セールスフォース事業では、Salesforceが事業領域やユーザーを増やしていく中で、同社の新しいプロダクトのデリバリーなどで当社の強みを発揮することができました。Salesforceの新規領域に特化しているので、他社との競争を防ぎ、差別化が出来ています。

 人材の「内製化」については、IT人材の育成を顧客企業と一緒に行なっています。まずは顧客に雛形のようなものを提案し、エンジニアをお客様に紹介して入れていただき、一緒に働きながら私たちが教えていきます。スキルが高まってきたら再び新しいエンジニアを入れていただき、徐々に私たちSIerの人員を減らしていくような形で進めています。最終的にチームメンバーのうち8割が、新しく採用したエンジニアに切り替わると理想的ですね。

 その成果は徐々に現れています。5〜6年前まで「ベンダーにお任せします」という声が多かった印象ですが、ここ数年で私たちのスタンスがお客様から評価を得られるようになりました。

次世代のために、日本IT業界を変える「ネオSIer」を目指す

――これから求めたいパートナーシップはありますか。

 技術分野ではAIやデータ分析など、新しいテクノロジーが次々に出てきていますから、事業領域もどんどん広がっています。私たちが足りない部分でご一緒できる企業を必要としています。

 人材領域も、自社のメディアや転職エージェントだけでは不十分です。もっと他のメディアやエージェントとタイアップして企業のDXについて幅広く情報を発信し、人材の業界を活性化していかなければなりません。

 とくにデータサイエンティストなどDXに必要なスキルを持った専門人材、フリーのエンジニアが多く在籍する企業と連携できるといいです。シェアリングビジネスの視点からも連携できると思います。これだけ日本のDXが明確に掲げられる中、圧倒的に時間と人手が足りていないので、あらゆる事業でパートナーシップを求めています。

――最後に日本IT業界の課題と、御社のミッションを教えてください。

 私自身の経験も踏まえてですが、日本のIT業界は、とにかく失敗が許されない、「やって当たり前」で完璧が求められる世界です。一方で、世界的に見ても、日本のエンジニアの給与は先進国に比べて低い状態です。

 その背景には、IT業界の構造的な問題があると考えます。大手ベンダーは保守料などをお客様に請求して儲ける仕組みなので、生産性をそこまで考慮してきませんでした。コストの皺寄せがエンジニアの給与にかかってくるというわけです。これでは期待に胸を膨らませて入社したはずのエンジニアは、やる気を失うか、退職していってしまいます。日本のエンジニアは優秀なのにもかかわらずです。

 大手は変わらないかもしれませんが、グローバルウェイなら変わることができる。そう信じて、まったく新しい「ネオSIer」としてのポジショニングを確立していきたいと考えています。次世代のために新しいポジショニングを確立していきながら、ぜひ一緒に働きたいという企業、人材と連携していければと思います。

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