Funding Societies(本社:シンガポール)は、一般にピア・ツー・ピア(P2P)レンディングで知られる、オンラインマーケットプレイスのような融資プラットフォームを運営する企業だ。融資対象としているのは中小企業。シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア5カ国でサービスを展開している。様々な制約から銀行の融資を受けることが難しい中小企業に、早くて少額で始められる資金調達の機会をつくり出した。共同創業者でGroup CEOのKelvin Teo氏に、事業展開や他社との違いについて話を聞いた。

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資金難の中小企業に「無担保で融資したい」

 学生時代からプライベートエクイティに取り組むなど、金融業界に興味があったというTeo氏。大学卒業後、就職した外資系企業でコンサルタントとして銀行の業務改革に携わったこともある。その後、ハーバードビジネススクール時代に出会ったReynold Wijaya氏とともに「金融包摂(Financial Inclusion)」の問題を解決したいと起業を決意する。「金融包摂」とは、すべての人々が必要な金融サービスを利用できるようにするという意味をあらわす言葉で、「社会包摂(Social Inclusion)」から派生して生まれたキーワードだ。

「アジアを中心とした地域では、多くの中小企業が資金調達に苦労しています。ですが、銀行から資金を借りるとなると、数年単位の長期間融資が前提となりますし、担保となる資産を提供する必要もあります。それができない場合、中小企業は銀行から融資を受けることができません。そこで私たちは、通常150万米ドル未満の少額ローンや、12カ月未満の短期ローン、数時間または数日以内の高速ローンなど中小企業への無担保融資を専門に事業に取り組んでいます」

Kelvin Teo
Funding Societies
Co-Founder & Group CEO
シンガポール国立大学経営学部を卒業。2010-2013年、Accenture、McKinsey & Companyでアナリストとして業務改革などコンサルティングを行う。2014-2016年、ハーバードビジネススクールで学び、MBAを取得。在学中の2015年、Funding Societiesを創業する。2018年からシンガポールフィンテック協会のデジタルファイナンス委員会の主要メンバーでもある。

 融資を希望する企業は、25000人以上の投資家が登録するFunding Societiesのプラットフォームから、例えばマイクロローンなら無担保資金を最短24時間以内に調達できる。Funding Societiesは無担保で融資を提供する代わりに、中小企業のキャッシュフローを厳しく管理するようにした。そして金利は同社独自のクレジットスコアリングにより、企業のリスクレベルに応じて自動決定される仕組みだ。

 一方、投資家はアカウントを作成してサインインすれば、企業へ最小50ドルから投資できる。ポートフォリオを確認できるモバイルアプリからも投資が可能だ。

東南アジア5カ国でサービスを展開 総融資額は24億ドル

 2015年創業のFunding Societiesが過去7年間に融資した額は、約24億ドルに上る。今では1カ月当たり約1億ドルの融資を行なうまで成長した。例えば、ベトナムでは2022年に9000万ドル、2023年には2億ドルを支出する予定で、小売や教育関係、テクノロジー、日用消費財などの分野の中小企業にサービスを提供してきたという。

 さらに、アジア開発銀行のメソドロジーを用いて実施した影響調査によると、Funding Societiesが支援した中小企業によって東南アジア全体で約35万人の雇用を創出したという。

 中小企業向け融資に力を入れるフィンテックは他にもあるが、Funding Societiesの特徴は次の3点であるとTeo氏は紹介した。

「他社のフィンテックは決まった1つの商品ラインだけに特化しています。一方、私たちは短期融資からクレジットカード、リボルビングクレジットライン、請求書による資金調達、売掛金、手形支払い、ビジネスローンまで、さまざまな商品をワンストップに提供しているところです」

「2つ目の違いは、私たちがシンガポールをはじめ、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムの5カ国で地域に密着したサービスを行なっていることです」。同社は地域に根ざした金融プラットフォームであり、今後はネオバンクへの進化を目指している。

「そして3つ目は、信用評価と融資のためにテクノロジーとデータを駆使した独自のサプライチェーンファイナンスプラットフォームを持っていることです。最近インドネシアで認可された中小企業向け銀行であるBank Indexに共同投資するなど、ほかのどの競合他社よりもテクノロジー主導による新しい銀行へ進化しようとしています」

Image: Funding Societies

 Funding Societiesによるローンのほとんどは期限内に完済されており、2020年の債務不履行率は1.68%、平均運用益は7.28%を誇る。リスクを回避し、投資効果を最大化する工夫をTeo氏は次のように説明した。

「信用評価にはAIを使用し、積極的な回収でフォローアップしています。たとえばローンの返済期限が来る前に、借り手のフォローアップを行い、リマインダーを送ります。そして、貸し倒れになる前に、回収のフォローをするようにするのです。手数料と技術、そして最終的には優れた回収力によって、債務不履行を最小限に抑えることができました」

 Funding Societiesはパンデミックの最中にも、高い信用パフォーマンスの維持に成功した。そのため、多くの機関投資家や銀行が評価するところとなり、今年度は約2倍の成長を達成できる見通しであるとTeo氏は明らかにした。

中小企業向け「アジア最大の銀行になる」

 2022年2月、Funding Societiesはソフトバンク・ビジョン・ファンド2をリードインベスターに1億4400万ドル(約190億円)を調達している。資金の使い道は、テクノロジーの進化と、戦略的M&Aや海外進出など事業拡大に充てていく考えだ。今後半年から1年以内に達成したい目標として、新しい銀行の立ち上げと、フィリピン進出を挙げた。同社のシェアホルダーインベスターには、ソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめ、三井住友銀行(SMBC)、セコイアキャピタルなども並ぶ。

 日本企業とのパートナーシップについては、①東南アジア中小企業への投資、②技術的パートナー、③財閥系商社との連携の3つを求めた。

「すでにエクイティファイナンスとデットファイナンスで、とても熱心にお付き合いいただいている日本企業があります。同じような興味をお持ちの企業があれば、協力させていただきたいです。また日本には素晴らしい技術があります。ローカライズのハードルはありますが、導入に協力してくれるようなパートナーも必要としています。そして日本の財閥系商社は東南アジアで大きなサプライチェーンを築いているので、関連企業へ当社から資金提供できるような機会を検討しています」

 Funding Societiesの最終的な目標について「中小企業向けデジタルバンキングと融資の分野で、アジア最大の銀行になることです」と、Teo氏は自信を持って答えた。

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