目次
・母親の闘病体験から生まれた新たな視点
・看護師の高度なケア業務もAIがカバー
・ミツイ・グローバル・インベストメントと連携
・会話を記憶し、話者に共感するAIに
母親の闘病体験から生まれた新たな視点
エリプシス・ヘルスの構想は、モンダル氏自身の体験から生まれた。
「母は糖尿病や高血圧などの慢性疾患を抱えていました。ケアマネージャーや看護師とやり取りする母を見て、健康を維持するにはもっと手厚いサポートが必要だと感じました」とモンダル氏は語る。
この経験を通じ、モンダル氏は米国の医療システムに根深い4つの課題があることに気づいた。
1. 看護師不足
米国では看護師の数が足りず、限られた人員で多くの患者に対応せざるを得ない。母との会話も急ぎがちで、十分な医療を提供するのが難しい状況だという。
2. 適切なソフトウエアの不在
看護師は複数のシステムを操作しながら患者と接する必要があるが、会話の準備に十分な時間を割けない。
3. 慢性疾患患者への接点不足
慢性疾患を抱える患者には、限られた面会や診療だけでなく、より多くの接点が必要だ。
4. 言語の壁
モンダル氏の両親は移民で、英語は母国語ではなかった。言語障壁がある中で、看護師と効果的にコミュニケーションを取るのは容易ではない。
これらの課題を解決する手段として、モンダル氏は音声技術に着目した。
「私たちの製品『セージ』は、看護師のAIケアマネージャーです。同じ言語で話し、異なるシステムと統合でき、さらに24時間対応可能です」とモンダル氏は説明する。

看護師の高度なケア業務もAIがカバー
セージの開発は一朝一夕では実現しなかった。モンダル氏によれば、世界中で収集した臨床データをもとに、5〜6年かけて学習させてきたという。「セージは臨床に特化した看護師AIエージェントです。LLM(大規模言語モデル)の技術が進化する中、私たちは臨床データを使ってセージを育ててきました」とモンダル氏は語る。
エリプシス・ヘルスの強みは、単なる効率化ツールではなく「臨床的ケアマネジメント」に特化している点だ。多くのAIエージェント企業がスケジューリングなどの基本タスクに注力する中、同社は看護師が行う高度なケア業務までカバーする。「一般的なAIエージェントはスケジュール管理などの基本的タスクに限られます。しかし私たちは、看護師の臨床教育やトリアージ業務など、実際の看護師が行う業務をAIでサポートしています」
セージは単純な自動化を超え、処方薬の詰め替え、服薬管理、最寄り薬局の案内などの日常的タスクから、複雑な看護師トリアージまで幅広く対応する。これにより、人間の看護師はより高度な業務に集中できる。
2025年は同社にとって商用化の元年となった。モンダル氏は現在の事業状況に自信を示す。「私たちはAIケアマネジメント分野でリーダーです。CVSヘルス(米最大規模の薬局チェーン)、Aetna(米ヘルスケア企業)、デューク大学といった医療業界を代表する企業と協業しており、これほどの顧客基盤を持つ競合企業は他にないのではないでしょうか」
顧客基盤は着実に拡大しており、来年までに多くの全国的・地域的医療保険会社との連携を予定している。事業規模の大幅な拡張も見込まれる。収益モデルは従量課金を基本とし、成果に応じたボーナスも設定。セージが患者と通話するたびに課金が発生し、処方薬の詰め替え完了率や患者エンゲージメントの向上など、特定成果を達成した場合には追加ボーナスが支払われる。さらに、セージは疾患別に特化して展開。糖尿病、腫瘍学、高血圧など、それぞれの疾患に最適化されたAIケアマネージャーが、専門的なサポートを提供している。
imege : Ellipsis Health 「Sage」 紹介ページ
ミツイ・グローバル・インベストメントと連携
日本市場は、エリプシス・ヘルスにとって戦略的に重要だ。同社は、三井物産をルーツとするミツイ・グローバル・インベストメントからの出資を受け、これまでに複数回日本を訪問しており、2026年にも再訪を予定している。「日本でも幅広い関係を築いています。何度か訪問し、多くの病院や健康システムと意見交換を重ねてきました。以前より日本市場を理解できていると感じます」とモンダル氏は語る。
同社は、スタートアップから大手病院システム、主要製薬会社まで多様な企業と対話を重ね、現地で最適なパートナー選定を進めている。「日本の医療文化や業務慣行は米国と異なるため、どのユースケースが最適か慎重に検討しています」とモンダル氏は強調する。
また、日本の医療現場が抱える課題は、同社のソリューションと高い親和性を持つ。モンダル氏は「日本市場も米国市場と似ています。労働力不足が深刻で、高齢者人口も増加しています。人間はスケールできませんが、機械はスケールします」と述べ、日本向け展開への意欲を示した。
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セージの技術開発は現在も進行中で、特に会話の記憶機能と共感機能の強化に注力している。「セージは会話の内容を記憶します。異なる電話や異なる人との会話も保持できるのです。例えば、『2024年9月の糖尿病管理の電話で何を話したか?』と尋ねられるようにすることが目的です。記憶は非常に重要です」とモンダル氏は説明する。
また、セージの核となるのが「共感」の要素だ。「私たちは共感AIとしての精度にこだわっています。患者や家族と共感を持った会話を行えることが、セージの価値です」と語る。
今後1〜2年での目標として、モンダル氏は数千万人へのサービス提供を掲げる。「次の1〜2年で大規模な導入を進められると考えています」疾患領域の拡張も計画中だ。現在は糖尿病、高血圧、腫瘍学に特化しているが、今後はさらに多くの疾患や進行段階に対応するSageを提供していく。
長期的には、セージを家庭の中心的な医療エージェントにすることを目指している。「今後3年間で、セージをより多くの家庭に届けたい。配偶者、子ども、両親など、家族全員の健康を管理するワンエージェントとして機能させたい」とモンダル氏は語る。このビジョンの実現には音声に特化したアプローチが欠かせない。「アプリは不要です。すべて音声でやり取りします。私たちは音声AI企業です」と強調する。
セージへのアクセス方法も多様だ。電話、グーグル・ホーム、アレクサ、病院システムなどを通じ、「セージ、私の子供の状態は?」や「両親の健康管理で次に何をすべき?」といった会話が可能で、家族それぞれのエージェントとして機能する。
日本市場については、モンダル氏は医療現場の共通課題に言及する。「適切なパートナーと連携できれば、日本全国でセージを届けられるでしょう。看護師のタスクの一部を引き受け、日本語や日本の文化に合わせた形で提供することが目標です」
目次5・予備
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