DIRT Protocolはブロックチェーンを活用した、信頼性の高い情報ネットワークを構築する企業だ。今回はFounderのYin Wu氏に話を聞いた。

Yin Wu
DIRT Protocol
Founder
スタンフォード大学でコンピュータ科学を学び、その後は複数の企業創設に携わる。マイクロソフトに買収されてからは同社のモバイル開発をけん引する立場に。自身が仮想通貨を運用していた時の経験から、非中央型の市場計算システムの必要性を見出し、2016年にDIRT Protocolを設立。現在に至る。

自身の経験から、信頼性の高い分散型情報ネットワーク構築を決意

―まずは御社のビジネスについて教えてください。

 DIRTは、人々が協力して信頼性のあるデータを構築するためのシステムです。これまで、情報の信頼性はサイトなど中央管理者の信頼性が頼りでした。その分、管理者の不手際などで一気に不確定情報が拡散するリスクもありました。その点、我々は信頼できるデータを作るため、「確実な情報を共有するとインセンティブがあり、その逆だとペナルティを課せられる」というシンプルなシステムにより、ソースを確認せずとも信頼性の高い情報を提供するシステムを提供しています。

―どのようにしてこのシステムが誕生したのでしょうか?

 数年前、私は仮想通貨の運用を始めました。その時、ビットコイン時価情報を得るのに信頼していたサイトが、突然、コインの価値が高騰する韓国市場を相場計算から外してしまいました。当然、額面上はコインの価値が下がったように見えたため、大混乱が起きました。そこで、中央管理型の仮想通貨相場予測サイトの危険性に気づき、分散型ブロックチェーン式の情報ネットワークを作りたいと考えたのです。

―中央管理型ではないということですが、情報の精査や正誤の判断は、誰が行うのでしょうか。

 このシステムには、DIRTトークンという通貨があり、システムに貢献した人に報酬として支払われます。仮想通貨情報システムを例に挙げると、新しい為替を参考情報として取り込みたい人は、DIRTトークンを支払ってその意思表明をし、ブロックチェーンの参加者がそれに対して賛成か反対か、やはりトークンを支払って投票します。投票によってその案の採用が決まれば、提案者はトークンを獲得することになります。また、当選した結果に投票した人も、トークンを受け取ります。つまり、情報の精査はブロックチェーンに参加するすべての人が自分の責任で、行うわけです。

 1つのユースケースとして当初から仮想通貨為替情報のリストを扱っていますが、今は他にも応用できる用途があるのでは、と模索していて、その例としてSNSやエンターテイメントを検討しています。SNSなら、たとえばスパム記事かどうか、ということをユーザ皆で判断してリストを作成する、といった活用法があります。

―どんなビジネスモデルになっているのでしょうか?

 DIRTで情報やネットワークを広げたいユーザは、トークンが必要なので、我々はそれを発行する、いわば銀行のような存在です。DIRTで扱うデータ量が増えるほど、トークンの価値も上がっていくので、それこそが私たちのビジネスモデルと言えるでしょう。ですので、現時点ではまず収益性よりも、アプリの拡大を図っているところです。

草創期をけん引する企業として、業界拡大にまい進

―現時点で競合はいますか?

 今はまだ、この分野そのものをいかに成長させていくか、ということが大切だと思っています。競合が増えてくれた方が活性化につながりますから。

―確かに、そうですね。今後どのようにして御社の拡大を図っていくのか、ビジョンを教えてください。

 我々はまだリサーチや試験運用の段階にいるので、早くこれを本格運用開始して多くのユーザ向けに拡大していきたいですね。今のところ、来月からの運用を予定しています。

―それは楽しみですね。将来的には日本市場への参入もあり得るのでしょうか。

 仮想通貨やブロックチェーンの良いところは、地域への依存性が低いことです。どこでも運用可能、ということです。実際、日本や韓国などアジアでも仮想通貨は活発に取引されていますし、規制があいまいなアメリカよりも香港や台湾に活動の場を移すスタートアップもたくさんあります。我々は誤情報の拡散に立ち向かうべく、今後も成長していきたいと思います。



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