DataSnipper(データスニッパー、本社:オランダ・アムステルダム)は、監査業務専用のソフトウェアが少なく、膨大なデータのExcel手入力を強いられ、あたかも「テクノロジーの世界から忘れられた労働者」のようだった監査人を救いたいと2017年に創業された。同社のプラットフォームは、請求書などの数値を「切り取る(Snip)」ことで、そのデータを自動的に処理し、精度の高い監査書類が完成するという。顧客にはコンサル業界のビッグ4と呼ばれるDeloitte、KPMG、EY、PwCも名を連ねる。昨年、CEOに抜擢されたVidya Peters氏に企業理念や日本進出に向けた意欲などを聞いた。

目次
「忘れられた労働者」のようだった監査人
Excelプラグインが飛躍の鍵だった
日本進出のナビゲート役を期待

「忘れられた労働者」のようだった監査人

―御社は監査担当者の人手不足と煩雑なデータ処理という問題の解決に取り組んでいますね。創業の経緯について詳しくお聞かせください。

 それでは、DataSnipperの歴史を少し紹介させてください。創業のきっかけは、共同創業者のJonas Ruyter、Maarten Alblas とKai Bakkerが、監査会社に務める共通の親しい友人とお酒を飲み交わしたある夜にさかのぼります。その友人の業務について聞いたところ、来る日も来る日も領収書や契約書といった膨大な量の書類の中から、必要な情報を探し出してマネージャーに報告、その内容をマネージャーが再度検証、という作業を延々と繰り返しているとのこと。監査人になった時にはこのような仕事をすることになるとは思わなかったと聞き、彼らはこの時代にそこまでの手作業が行われていることに大変ショックを受けたそうです。

Vidya Peters
CEO
ノースウェスタン大学で経営工学の理学士、ハーバード大学で行政学修士、ノースウェスタン大学でマーケティング・財務のMBAを取得後、会計ソフトIntuitのマーケティングディレクター、データ統合プラットフォームのMulesoftのChief Marketing Officer、組み込み型金融MarqetaのCOOを経てDataSnipperのCEOに就任。

 当時、監査業務のために開発された専用のソフトウェアは少なく、「監査人は(テクノロジーの世界から)忘れられた労働者」だと考えた3人は、手作業を自動化するシステムを構築して友人のような監査人を救いたいと考えました。

 救われるべき監査人は世界中にいました。東京でもブエノスアイレスでもニューヨークでも、監査人は紙の山から資料を引っ張り出して商取引の照合をしています。手作業での超長時間労働によるバーンアウトで監査業界は元々離職率が高かったのですが、近年の会計不祥事による規制強化で照合するデータの質と量がさらに増え、大量離職の原因となっています。

 多くの監査人がなぜその職業に就いたのかを考えると、書類の照合だけではなく、顧客企業と一緒にリスク分析や成長戦略を考え、アドバイスができる戦略アドバイザー、つまり顧客のパートナーになりたいと考えた人が多かったはずです。業務量が増え、手作業が増えても一日の時間は増えないという解決不可能な方程式に、DataSnipperは解決策を見出したのです。

Excelプラグインが飛躍の鍵だった

―御社のプロダクトがExcelプラグインの形式で提供されています。監査人にとってExcelは一番馴染みがある環境で、イチから使用方法を学ぶよりはるかにユーザーフレンドリーです。これも成功の秘訣でしょうか。

 はい、顧客に寄り添ってプロダクトを提供したこと。それがDataSnipperがここまで受け入れられている一番の理由だと思います。創業者が最初に開発したツールは、実はExcel内ではなく独立していました。しかし、顧客や監査人に聞き込みをすると、全員が新しいツールを使ってExcelとインポート・エクスポートを繰り返すことはナンセンスであり、Excelに組み込んで欲しいと希望したそうです。

 顧客からのフィードバックに忠実に従い、ツールをExcelに組み込み直したことがDataSnipperに飛躍をもたらしました。顧客は一日何時間も作業をするExcelを熟知しています。新たなシステムを習得することなく普段のワークフローにフィットするDataSnipperは大いに歓迎されました。

image: DataSnipper

日本進出のナビゲート役を期待

―今年はクアラルンプールとメキシコ、そして東京への進出が計画されているとの情報を耳にしています。日本進出の予定と抱負を教えて下さい。

 これまで南米で2人、クアラルンプールで8人を採用し、クアラルンプール事務所は今年初めにオープンしました。また、東京オフィスのオープンに向けて日本でも採用活動を進めています。

 DataSnipperにとって日本は非常に重要な市場で、大きな成長の可能性を感じています。監査業務は日本でも大変重要な分野ですが、各国同様、バーンアウトや高離職率の問題を抱えていて、多くの可能性と挑戦をもたらす市場だと思います。

 品質に対する日本の水準は非常に高く、間違いに厳しい国民性だと思います。同時に、日本人は効率的かつ効果的な最新テクノロジーの導入を支持すると思うので、日本にチームを結成し、オフィスを開設することが本当に楽しみです。

image: DataSnipper

―日本にパートナー企業はいますか。日本進出にあたってはどのような関係が有効でしょうか。

 顧客は既に何社かいて、その内の1社はBDOです。日本での成功には「関係性を築き信頼を得ること」が重要と理解しています。当社にはまだ日本での経験が少なく、関係先もないため進出にあたっては緊張しています。このため、私達のために日本市場をナビゲートし、監査企業など潜在顧客とつないでくれるパートナーができればとても助かります。

―Peters氏はこれまで在籍したデータ統合プラットフォームのMuleSoft、会計ソフトのIntuitといった企業でも成功を収められてきました。なぜ昨年、DataSnipperのオファーを受けられたのでしょうか。

 私はキャリアのごく初期にIntuitで7年間を過ごしました。Intuitでは優れた会計ソフト作成の難しさについて学び、会計士と共に仕事に没頭しました。彼らの生活を楽にする優れた製品を構築すると、彼らはそのソリューションに対して非常に忠実で情熱的になります。

 DatasSnipperの創業者たちから声をかけられたとき、Intuitでの経験のおかげで彼らが解決しようとしている問題をすぐ認識でき、またとても特別なものを構築していることが理解できました。DataSnipperにはあらゆる方向にチャンスがあると感じました。世界中で使え、その上にさらに多くの製品を構築できる、成長とイノベーションを確信できる商品だと思いました。

 また私は、DataSnipperの企業文化が大好きです。創業者たちはお客様と、解決すべき問題のために、大きな心と謙虚さをもってDataSnipperを設立しました。素晴らしい仕事をしている素晴らしい企業はたくさんありますが、必ずしもその一員になりたいと思うような文化ではない場合もあります。ここDataSnipperは私が参加したい文化でした。

―最後に、これから進出される日本市場の読者にメッセージをお願いします。

 私たちは日本に進出することに本当にわくわくしています。データマッチングについてお手伝いできることがあればどうかご連絡ください。皆様とつながり、DataSnipperについて詳しくお話ししたいです。



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