GDPRに準拠、シンプルなAPIを用いたデータの信頼性確保
―Cryptowerkの事業について教えてください。
我々は、ブロックチェーンとそのテクノロジーを活用することによって、企業のデータに整合性と真正性を提供します。
具体的な流れとしては、まず顧客企業からデータのハッシュを受け取ります。これは、データのフィンガープリント(人物や端末などの識別や同定、真正性の確認に用いられる短いデータ列)のハッシュであり、世界共通で用いられているハッシュアルゴリズムの一種です。
我々は、送ってもらったハッシュごとに、公証人のように特定のシールを返します。そしてそのハッシュをパブリックとプライベートのブロックチェーンに書き込みます。通常は高価でスピード的にも非常に遅いのですが、我々はその課題を克服しました。我々のサービスなら、1秒あたり100万データのハッシュを、低廉な価格で、顧客が選択した1つまたは複数のブロックチェーンに書き込むことが可能です。
顧客企業は、シールとデータのハッシュによって、データが改ざんされていないことや、オリジナルのデータと同じかどうかを確かめられるのです。
我々のサービスによって、あらゆる種類のアプリケーションの統合が、非常に容易になります。この一連の流れのベースとして、我々は、ブロックチェーンへの簡単なインターフェースを顧客に提供します。なおデフォルトのブロックチェーンとしては、改ざんや改変ができないビットコインやイーサリアムを用います。
―APIを使うわけですか?
ええ。非常にシンプルでインストール可能なAPIを、トランザクションごとに提供します。通常、トランザクションはブロックチェーンにおいて20セントから3ドルかかりますが、我々のサービスでは数分の一セントにまで引き下げています。ですから巨大なデータセットでもマシンラーニングのデータでもIoTのデータでも安心して利用可能なのです。
Image: Cryptowerk
―他社との違いを教えてください。
我々のサービスには4点の特徴があります。まず、クライアントにデータ変更といった負担をかけることなく、非常に単純なAPIで我々のソリューションと統合できる点です。
第2は、我々は元のデータの提供を必要とせず、ハッシュデータの受け取りのみで対応するという点です。
第3に、我々の技術は完全にEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠している点です。欧州委員会はGDPR の日本に対する十分性認定を決定しました。2019年2月には日本とヨーロッパの間でEPAが発効し、個人データの交換が自由になります。しかしブロックチェーンを使ってデータの信頼性を確保したシステムをインストールする場合は、その技術が実際にGDPRに準拠していることを確認する必要があります。私が知る限りでは、その条件を満たしているのは我々の技術のみです。
第4の特徴は、顧客が望むならば並行して同時に複数のブロックチェーンに書き込み作業を行うことができる点です。
高度に規制された産業や訴訟リスクが大きい産業のニーズ
―Cryptowerkのサービスは、どのような業種に役立ちますか?
我々のデータ不正操作防止メカニズムは、基本的に、すべての業界に役立つと考えています。データの改ざん防止を非常に低いコストで達成できるからです。
はじめに利用されるのは、高度に規制された産業や訴訟の可能性が高い産業でしょう。航空宇宙産業、自動車産業、ソフトウェア産業、医薬品産業などですね。
これらのビジネスには訴訟や規制、同時にサプライチェーンにおける高度な偽造品がつきものなので、データの改ざん防止は重要です。我々はまだスタートアップですが、上記した業種に約10社のクライアントを抱えています。
無料版APIの試用を通じ、国際的な事業拡大を予定
―海外戦略、特に日本企業との協働の予定は?
企業にとって、その提供するデータが本物であると証明できることは、強い競争力になります。日本やドイツのような国は強い産業的を持っており、我々の技術が役立つでしょう。
また、データの信憑性が脆弱な第三世界にデータを提供する場合も同様です。我々はまだ小さなスタートアップですが、2019年には、よりグローバルな拡大を始めます。まずアメリカとヨーロッパです。私はドイツにネットワークがあります。
日本に関しては、アメリカ市場での日本企業とのコラボは大歓迎ですし、日本市場でも歓迎です。我々がドイツで寄せられている関心は、日本市場の潜在的な関心と同じはずですから。
我々は、データの真正性と整合性管理のためのグローバルスタンダードになりたいのです。非常にシンプルなAPIを通して世界中の大企業に提供したいと考えています。