大学が毎年直面するミスマッチを回避
―Coursedogのサービスについて教えてください。
2018年にCoursedogを立ち上げた当初は、授業のスケジューリング用ソフトウェアのみでしたが、現在は三つのサービスを提供しています。
まず、スケジューリングソフトウェアは、大学の既存情報システムとインテグレーションでき、学生の履修科目のトレンドや、履修したい科目が受講できていないなど、見落とされているニーズの把握。そして、例えばどういう科目を担当したいか、希望の授業時間帯などに関する教員の意向を把握した上で、Coursedog独自のアルゴリズムを使い、学生の履修登録をほぼ正確に予測しています。これにより、コースの受講希望者数が定員数を越え、そのコースを履修できない学生が出るなど、履修科目のスケジューリングにおけるミスマッチを回避し、大学が慢性的に抱えていた問題を解決しています。
二つ目のサービスは、キャンパス内のイベントや施設の予約システムです。このシステムを利用し、キャンパス内の施設を学生に有料で貸し出して利益を得ている大学もあります。
三つ目は、コースや履修科目の管理と情報を学生向けに公開する機能に加え、学生が履修登録を行えるカリキュラムプラットフォームです。
―高等教育機関に特化しているのですね。
そうですね。高等教育機関におけるスケジューリング等のシステムには、学生の登録、授業のスケジューリングや成績証明証の発行など、一般企業にはない作業項目があります。高等教育機関向けのソリューションを提供している競合はいますが、スケジューリングプロセスをend-to-endで自動化し最適化するソリューションを提供しているのは当社のみです。
将来的には、高等教育機関におけるリソースプラニングのall-in-oneプラットフォームを構築したいと考えています。
米国55大学が活用。平均で23%の出席率アップ、数百時間を効率化
―Coursedogを使うことでどのくらいの効果を見込めるのでしょうか。
現在、コロンビア大学やニューヨーク州立大学などを含める米国内の55大学がCoursedogを使っています。
一番の効果は、時間の削減です。従来は、スケジューリングやカリキュラム管理はマニュアル作業で専任の担当者が行っていました。これと比べ、平均で、授業のスケジューリングにかかる時間を850時間、カリキュラムの作成にかかる時間を500時間削減しています。
他には、時間割や教室設備の最適化により、授業への出席率が平均23%向上しました。また、学生に人気がないコースが明確になるので、そこにリソースを費やすことをやめ、予算を削減し、コンピュータサイエンスなど人気があり常に教員が足りていないコースの増設用などに使うことが可能です。
これらの相乗効果として、大学が抱える問題の一つである中退者の数も減ると考えています。
―日本への進出は予定していますか。
日本や中国の大学からもお問い合わせをいただいていますが、言葉の違いや、現地で使われているシステム上でCoursedogのプラットフォームが問題なく動作するかなど、課題があります。また、今は米国市場で急激に成長しているため、それに必死で対応している状況なので、本格的な海外展開は1〜2年後になると想定しています。
企業向けソフトウェアのグローバル展開では、ソフトウェアだけ持っていく方法はうまくいきません。当社が、日本で展開する場合も、米国版をそのまま導入するやり方ではなく、現地の文化をよく理解しているネイティブスタッフを採用し、現地のニーズに合わせ、場合によっては日本市場に合わせた製品開発を行うことも考えています。