アプリの90%以上は3日で忘れられる
―事業内容を教えてください。
モバイルアプリ開発業者向けに、アプリの分析・マーケティングツールを提供しています。2013年にインドで起業し、2014年10月にシリコンバレーに進出しました。
現在の導入企業は、1,000社以上。おもにeコマースやニュースサイト、映画のチケット販売等のモバイルアプリに導入しています。導入企業の25%〜30%がアメリカで、60%はインドです。シンガポールにも導入企業があり、近い将来オフィスを置く予定です。アメリカでは、メイシーズやホームデポ、シアーズといった大手小売店のeコマースアプリに導入されています。
―競合が多い分野ですが、御社の強みは?
3点あります。1点目は、アプリのパーソナライゼーション(ユーザー個人への最適化)ができる点です。ユーザーの性別や国、年齢といったプロフィールや過去の購入履歴などから、一人ひとりに合った提案ができる点です。
2点目は、多彩なコミュニケーション手法です。アプリの利用頻度、時間帯、場所を分析し、それに合わせたコミュニケーションの仕方を提案します。たとえば、アプリの90%以上はダウンロードから3日経ったら利用されなくなると言われています。よって、いかにして3日目以降もアプリを使ってもらえるかがアプリ開発業者の最重要課題になります。それに対して、わたしたちのサービスでは、アプリのダウンロード後、3日間利用がなかったらプッシュ通知をしたり、キャンペーンメッセージを送るなどしてアプリの利用率を高めることができます。
3点目は導入のスピード。「CleverTap」はわずか15分で導入でき、すぐにデータの収集・分析を利用することができます。
アプリに“魔法”をかける
―御社はインド発のスタートアップだそうですね。起業した経緯を教えてください。
当社は、インド出身の3人の共同創業者で設立しました。わたしたちは、過去にインドで一緒にエンジニアとして働いた経験があり、当時からとても仕事観の合うよい仲間だったのです。それぞれがエンジニアとしてキャリアを積んだ後、また一緒に働くことを決め、2013年にクレバータップを立ち上げました。
―なぜアプリ開発業者向けのサービスを?
単純に、大きなニーズがあったからです。彼らエンジニアはアプリ開発の技術には詳しいのですが、ユーザーとのコミュニケーションの取り方やマーケティングについては疎いことが多い。そのため、私たちのプラットフォームを使って、ユーザーへの適切なアプローチの仕方を提案することにしたのです。
―エンジニアとユーザーをつなごうとしたわけですね。
そうですね。わたしたちが目指しているのは、自分たちの技術を駆使して、クライアントのアプリに”魔法”をかけること。たとえば、みなさんがちょうどお腹がすく頃に、フードアプリが近くにある評判のレストランを紹介してくれる。洋服が好きな人には、eコマースアプリがお気に入りのブランドのセールを事前に教えてくれる、といったことです。
ひとつ、たとえ話をさせてください。みなさんが映画「007」に出てくる高級ホテルの支配人だとしましょう。高級スポーツカーをホテルのエントランスにつけてジェームス・ボンドが颯爽とやってきたら?あなたは、冷えた缶ビールではなく、美しいマティーニを、そして出張用の狭い個室ではなく、最高級のスイートルームを用意することでしょう。それは、あなたがジェームス・ボンドというキャラクターをしっかりと理解しているからこそできることです。つまり、わたしたちもクライアントがユーザーのことを理解して、それぞれにあった最適なサービスを出せるような仕組み作りを目指しています。
著名VCから資金調達できた理由
―著名なVCから総額960万ドルの資金調達ができた要因は。
わたしたちは、2段階の投資を受けました。シードステージでは、アクセルパートナーズから、シリーズAでは、セコイアキャピタルからそれぞれ投資を受けています。
それは、ただ運がよかったというだけではないと思っています。わたしたちは、「良いプロダクト」と「良いチーム」があり、そして何よりそのプロダクトがスケールしていく「良いマーケット」がありました。その3つが重なりあったことが投資を受けることができた大きな要因だと思います。
―今後の展開を教えてください。
わたしたちは、グローバルな事業展開を考えています。今はインドと米国がメインですが、どの地域からでも利用できるように言語対応を進めています。
今後、日本展開については、セコイアキャピタルと一緒に事業の構想をしているところです。また、ラテンアメリカや東南アジア、ヨーロッパといった地域も視野にいれています。
―最後に読者へのメッセージをお願いします。
日本に進出する際は、eコマース関連やゲーム業界等に非常に興味があります。起業家精神を持ち、新しい機会に挑戦したい方、ぜひパートナーとして一緒に頑張っていきましょう。