Image: CATALOG
世界中でデータが生成され続け、広大な土地と膨大な電力がデータセンターに注ぎ込まれている。そこに限界が見え始めた今、膨大なデジタルデータを低コストでDNAに収め、コンピュートも可能なCATALOGの技術に注目が集まっている。同社は2016年設立、ボストン生まれのスタートアップ。LINEも投資しており、日本展開も視野に入れている。今回は創業者でCEOのHyunjun Park氏に話を聞いた。

MITで研究した、低予算かつ短時間でDNAに情報を保存する技術

――まずはCATALOG設立の経緯を教えてもらえますか?

 私は理学の博士号を米国で取得し、博士研究員としてMITで合成生物学の研究をしていました。合成生物学とは、生物を構成する様々な要素に目を向け、それらを工学的に一から作り出そうとする学問分野です。例えば、細胞から食用の肉を作ったり、菌類からフィラメント材を作るなど、細胞やDNA、酵素などを、本来の目的とは別の、任意の目的のために使います。

 共同創業者であるNathaniel Roquetと私は、MITで同じ研究グループに所属していました。そしてそこで、全く新しい、低予算かつ短時間でDNAに情報を保存する方法を思いつきました。

Hyunjun Park
CATALOG
Co-Founder & CEO
ソウル大学校にて学士(理学)取得後、渡米。2014年にUniversity of Wisconsin-Madisonにて博士号を取得。2016年に、博士研究員としてMITに移籍。2016年にCATALOGを創業し、CEOに就任。
 科学者なら皆、自分の研究を実社会で役立てたいと考えています。私と共同創業者の場合は、基礎研究に携わるだけでなく、自分たちの研究をもとに創業し、社会にインパクトを与えたいと考えていました。そこで、研究から生まれたアイデアを持って、サンフランシスコにあるIndieBioのアクセラレータプログラムに応募したところ、採用されました。そして、サンフランシスコで数ヶ月間過ごした後、CATALOGを創業しました。

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 私たちの技術は、コールドデータの保存や、データセンターの縮小化などだけでなく、AIアルゴリズムを活用し保存したデータをもとに推論することも可能です。非常に大きなデータサイズのコンピュート可能なデータのストレージ層を新たに作り、今は存在しない市場を開拓し創造する可能性を秘めています。

――御社のターゲットは、法人でしょうか?あるいは、消費者向けのサービス提供も予定されていますか?

 最終的には、法人だけでなく消費者向けのサービスにも、広く適用できる技術にしたいと考えていますが、私たちのリソースは限られています。まずは、大企業と共同開発者として提携し、資金だけでなく、フィードバックを得ながら改良を重ね、事業化を目指します。

 近いうちには、提携している顧客企業のデータを使った実証実験を行う予定です。この技術のストレージ機能に焦点を当てて、顧客のデータをDNAに入れる予定です。

Image: CATALOG

 顧客企業が求めている機能や、技術を実用化する上で最も重要な指標は何か、顧客企業の既存ワークフローへの適用方法などを検討します。

 将来的には、データセンター内で使える製品を作り、クラウドサービス提供事業者と提携したサービスや、BtoB向けに製品を販売するなど、様々な事業展開を考えています。

Image: CATALOG Wikipedia(英語版)の全テキストをDNAに入れることに成功した。

LINEも出資、日本市場も視野に

――将来的に日本市場への進出も考えていますか。

 日本市場は視野に入れています。韓国も日本も巨大なデータ市場ですし、当社の投資家のLPは日本企業や政府系ファンドです。また、現在の顧客企業の多くは、アジア市場でも大きな存在感があるグローバル企業です。

 以前、東京で開催されたMITのカンファレンスで講演したことがあり、その時は多くの日本企業が関心を持っていました。そして、日本の財閥系企業とは、投資と共同研究に向けた話し合いを始めています。当社としても、日本は、共同開発のパートナーや資金調達先として注目しています。

 また、当社はLINEからも出資を受けています。LINEは、韓国および日本で幅広く使われ、データを大量に持っていますので、今後共同研究することも考えられます。

 今後2〜3年で、大企業など一部の大規模顧客を対象に、自動化したエンドツーエンドシステムの展開を始めたいと考えています。そして、5年後くらいには、より多くのユーザーにリーチできるようになることを目標にしています。 

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