大規模改修工事や住宅建設工事が対象
―ご自身の体験がBuildZoom設立のきっかけになったそうですね。
そうですね。ワシントンD.C.の北西部に住んでいた時に、fixer upper(修理が必要な低価格住居)を購入しました。リフォームは初めてで、どの業者に何を依頼でき、工事費用の相場も知りませんでしたし、請負業者の選定時に十分な情報を得ることもできず、必要な許可すら受けていなさそうな業者に工事を発注してしまいました。これが思いのほか、悲惨な体験となりました。
住宅の改装・改修工事の仲介サービスにはニーズがあるのに、十分に応えるサービスがなかったので、自分たちで問題を解決することにしたのです。そして、幼なじみでありBuildZoomの共同創業者の1人でもあるDavidと一緒に、問題点をいくつか特定し、検討を始めました。これがBuildZoomのベースになっています。
―BuildZoomがどういった「問題」に対応しているのか、サービス内容と併せて教えてください。
問題の一つが、工事の発注者が求めるプロジェクト(工事依頼)に適した受注者を見つけづらいことでした。これは、需要と供給のマッチングで、需要を真の意味で理解し、それに見合ったアウトカムを提供することで解決できます。米国では、建設業は各州が所管する許可制度があり、工事を行うには郡または市への申請が必要です。そこで、私たちは、これら行政が所管する米国内の全ての建設業者の許可証や工事申請などの公開情報を一つにまとめたプラットフォームを設計しました。
次に、依頼内容に適した価格が設定されているかを確認する手段がなかったことが問題でした。BuildZoomでは、社内に建設エンジニアチームを設け、発注者の要望に基づいたリフォームの依頼書(RFP)の作成と価格を含める契約内容の交渉など、業者選定プロセスと契約締結までのサポートや代行サービスを提供しています。
当社内に蓄積されているデータやプラットフォームを使い、建設エンジニアが発注者と受注者の双方にとって最適な契約になるようにサポートする、これが当社の大きな役割です。そして、住宅の大規模改装・改修工事だけでなく、住宅建設工事や店舗や商業施設の大規模改装・改修工事にも対応しています。
―御社が活用しているデータについて詳しく教えてください。
先にお話したように、米国では州が所管する建設業者の免許制度があり、認可と規制を地域ごとの免許委員会が行い情報を公開しています。建設業者の情報と、工事の申請情報など、それぞれの行政機関が個々に公開している膨大な情報を全て当社のプラットフォームに紐づけて一元化しています。
もう一つは、BuildZoomが取得している入札データです。当社では、受注者の選定はプロジェクト毎の入札制により行われています。1ヶ月に約1,000プロジェクトの入札案件があり、一つのプロジェクトに3社が入札したとすると、1ヶ月に約3,000案件のデータを取得していることになります。様々な依頼内容の入札データを蓄積することで、当社独自の価値設定データベースを構築しました。
目指すはリフォーム市場のデファクトソリューション
―BuildZoomのビジネスモデルはどうなっていますか。
契約成立時に受注者から得る仲介手数料が当社の収益の約60%を占めます。また発注者からも利用料をいただいています。
例えば、50万ドルの契約では、受注者から当社が受け取る仲介手数料は受注額の2〜2.5%です。そして、発注者が支払う有料サービスの利用料は発注額の1.5%ほどです。
―現在は米国内のみのサービスとのことですが、今後は海外展開も検討していますか。
米国内の住宅の改装・改修市場は3000億から3500億ドルで、住宅建設市場は約1000億ドル、店舗など商業施設の改装・改修市場は850億ドル規模です。当社が入り込む余地がまだまだあります。BuildZoomがリフォーム市場におけるデファクトソリューション(標準的なソリューション)となるよう、米国内での事業拡大にまずは注力しています。海外展開はその後に本格化したいと考えていますが、海外ではジョイントベンチャーまたはパートナーシップを前提に検討するつもりです。