アプリを持たないユーザーを企業のランディングページに誘導
―まずはBranchのビジネスモデルについて教えてください。
今、インターネット上では様々なウェブサイトが展開されています。広告やメールのリンクから別サイトに飛んだり、あるいはシェアしたりすることも簡単にできます。しかし、アプリだけがそこから取り残されていました。これまでアプリの広告からはアプリの入手ページにしかリンクすることはできませんでした。
そこで、我々はアプリを持たないユーザーを企業のランディングページに誘導し、そのアプリの一部を体験してもらうというディープリンクを提供しています。
また、デベロッパー向けにBranchを通してアプリを閲覧したユーザー数やリンクのクリック回数、そして実際に商品を購入した人の数など、あらゆる関連データの分析結果を提示しています。
―なぜこのようなサービスを始めたのですか?
我々はもともと、フォトブック作成アプリを開発するデベロッパーでした。はじめは、アプリストアでも注目され、ユーザー数も順調に増えました。しかし、ある時期を過ぎると、アプリストアで取り上げられなくなり、成長が頭打ちになりました。我々のアプリは、誰からも見つけてもらえなくなってしまったのです。これがウェブサイトなら、成長につながる方法はいくらでもあったのかもしれませんが、アプリではそれができなかったのです。アプリにはGoogle検索のような手法がありませんから。
アプリのエコシステムに足りないのがリンクだと考えた我々は、ディープリンクシステムのBranchを立ち上げました。当時はフォトブックを扱っていたので、メールやSNSにリンクを貼れば、アプリを所有していない人にも画像をシェアできるようなインフラを作ったのです。それが、シリコンバレーのモバイルアプリデベロッパーから好評で、需要があることがわかったのです。それからはフォトブックビジネスを売却し、ディープリンク事業を展開することになりました。
ディープリンクと分析データを駆使した独自サービス
―ディープリンクは、どのようにして活用できるのでしょうか。
ネット通販のアプリが代表的な例です。せっかくセール商品の広告を出しても、ユーザーが広告をクリックした結果、連れていかれるところがアプリストアだと、購買意欲は落ちてしまいます。Branchのディープリンクを使えば、まさにその商品の紹介ページに直接ユーザーを誘導することができるのです。そして、アプリを気に入ったユーザーはアプリをダウンロードして使用します。さらに、アプリのデベロッパーには、広告リンクのクリック数やページの閲覧者数などの分析データも提供します。
―Branchは分析ツールも扱っているのですね。
そうです。一連のデータをダッシュボードで表示するので、リンクにかかわる情報が一目でわかります。
―リンク先ページのデザインなども手掛けているのですか?
いいえ、ページ自体はクライアント自身に作成してもらっています。我々はあくまでリンクのためのインフラを提供するだけです。ですので、ブランドのイメージが崩れる心配はありません。リンク先がBranchのサーバーだとは、誰も思わないでしょう。
―企業がBranchを導入する場合、価格はどのように決まるのですか?
アプリのユーザー数に応じた定額制です。ユーザー数が非常に少ない場合は無料で使っていただけることもあります
Image: Branch
月間アクティブユーザーは22億人、売上も毎月15%増で推移
―御社は急速に成長しているようですね。
そうですね。創業して3年ですが、急速に成長しています。今ではモバイルアプリのエコシステムのうち、約40%が何らかの形でBranchを利用しています。売上高はおおむね、前月比15%増で推移しています。一日当たりの処理件数は50億件程度で、月間アクティブユーザー数は22億人を超えています。
―ディープリンク市場の現状はどうでしょうか。競合は多いのですか?
今の段階では、競合はほとんどいません。品質やデータの正確性の点で、我々と肩を並べる企業はいないのです。数年前に競合相手だった企業も、もはや市場から姿を消しました。あとは、モバイルアプリ各社が自らディープリンクを構築するケースもありますが、それを除けば市場の9割を我々が占めている状況です。
―特に需要の多い業界はありますか。
モバイルアプリを持つ企業なら、どんな業界でも使ってもらえるので、特に決まったところはありません。ただ、ゲームは例外です。ゲームはオープニング画面からすぐにプレイ画面に移動できてしまうので、ディープリンクの必要性が低いのです。
今後の課題は不正対策とグローバル展開
―広告業界ではクリック数を稼ぐ不正行為が横行していますが、対策などはありますか?
分析データを提供している以上、クリック数の水増しといった不正行為は死活問題です。特に我々はデータの正確性が強みですから。もちろん、不正行為には目を光らせ、発見した場合はすぐに排除しています。今も、不正対策の大手企業と共同事業を進めています。とにかく、正確なデータを提示することを第一に考えています。
―日本市場にも参入しているようですね。
日本はアメリカに負けず劣らずのモバイルアプリ大国なので、Branchの成長に欠かせない市場です。今も、楽天や日本マクドナルドなどと取引をしています。我々はまだ国際化に対応しきれておらず、日本語版のシステムや日本ならではの問題に対応したバージョンを制作するに至っていません。しかし、私たちは日本はBranchにとって非常に重要な市場だと考え、本格的な日本展開に向けて準備しています。
―最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
ユーザーのリアクションがすべてウェブサイトを介していた時代は過ぎ、今やユーザーはモバイルアプリで企業とつながりたいと考えています。我々は企業と最適なユーザーを結び付け、さらに上質なユーザー体験と正確な分析データを提供することで、持続可能なビジネスを支援したいと考えています。「Branchのおかげで成功した」という企業を数多く目にするのが私の夢です。