自分たちが欲しい機能を盛り込んだアプリ
―まずBlockfolioを開発した経緯について教えてください。
Blockfolioは自分たちが欲しいポートフォリオ管理ツールとして開発したのが始まりです。他の創業者たちと私は、2013年にビットコイン投資を始め、暗号通貨にも投資するようになり、2014年には15種類のプロジェクトに投資していました。その当時、仮想通貨は200種類ほどありましたが、ポートフォリオの管理機能やプライストラッカーは、一銘柄のみまたは数名柄にしか対応していなかったので、全ての仮想通貨を対象としたポートフォリオ管理ツールを自分たちで作ることにしたのです。
私たちが開発していた当時、他のアプリは、アプリを開くと企業ロゴのアニメーションを何秒も見せられるようなものが多かったのです。しかし、私がアプリを開いて最初に見たいものは企業のロゴではなく、自分のポートフォリオバランスです。ですから私たちはこのアプリを自分たちのニーズに沿って開発し、「かゆいところに手が届く」ものを作りました。結果、見たい情報が揃う実用性も兼ね備えたアプリに仕上がり、多くのユーザーから支持を得ることができました。
例えば、弱気市場のユーザーはBlockfolioを一日に6回程度開き、強気市場のユーザーは一日に13〜14回開きます。BlockfolioのDAU(一日にサービスを利用したアクティブユーザ数)に対するMAU(月間のアクティブユーザ数)の比率は常に50%を超えています。ユーザーエンゲージメントの高さがFounders FundなどのVCからの投資に繋がったと考えています。
市場の特性に合致した先駆的なサービス
―Blockfolioの強みはどこにあるとお考えですか。
私たちは、2014年時点で仮想通貨の種類は将来的に1万に達すると予測していました。また、ブロックチェーンがデータベースのあり方を変えること、プライベートブロックチェーンは信頼できないため、将来的にパブリックブロックチェーンを使って資産のトラッキングが行われるようになることも予測していました。
2015年の創業から2017年までのMAUは8,000程度でしたが、2017年に暗号通貨ブームが訪れた時、Blockfolioは唯一のポートフォリオ管理アプリとして注目を集め、MAUは一気に200万を超え、市場を独占する勢いでマーケットリーダーに成長しました。仮想通貨市場が変動性の高い新興市場のような動きを見せることは予測していませんでしたが、不安定な市場だったからこそ他にないBlockfolioの機能が重宝されています。
また、2018年5月からサービスを開始したBlockfolio Signalも業界初の取り組みです。仮想通貨ネットワークはノードのオプションが多いほど、そしてノードへの参加者数が多ければ多いほど安定し、セキュリティが強化されるため、コミュニティの構築が重要です。
Blockfolio Signalはトークン(ブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨)提供者とそのトークンに投資した方々を直接つなぐコミュニティチャンネルです。2017年はTwitterでニセ情報が流れ、Slackでの詐欺行為が問題になっていた時期でもあり、トークンプロジェクト側が投資家に最新情報を直接提供するチャンネルは「皆が欲しい」ものでした。現在は400以上のトークンチームがBlockfolio Signalを使っています。同様サービスの提供を試みている他社はいますが、当社が最初にサービスを提供しエンゲージメントを獲得しているため圧倒的に優位に立っています。
他には、創業初期から経験豊かな人材が集まっていることも、当社の強みだと考えています。ディレクター、デザイナー、エンジニア、最高のメンバーが関わっています。そのおかげで、2億回ダウンロードとMAUが4,000万に達しても、安定してサービスを提供できています。
日本は仮想通貨に対して友好的
―海外戦略、特に日本への進出について聞かせてください。
現在のユーザー比率は、アメリカ22%、ヨーロッパ46%で残りはその他の国々が占めます。アジアでは特に韓国と日本で積極的に事業を拡大する方向で翻訳などローカライズも進めています。
業務提携等の深い意味でのパートナーシップは時期尚早ですが、将来パートナーシップを結ぶことを意識した質の高い関係を、日本企業と築き始めたいと考えています。