目次
・「郊外の若者」の支持獲得するaxio
・AIが「不良顧客」を見極める
・銀行にとってもメリットが大きいaxioの存在
・日本とインドの距離はもっと近くなる
「郊外の若者」の支持獲得するaxio
―なぜインドではオンライン融資が求められているのでしょうか。
国内経済の規模が急拡大しているとともに、中小企業経営者や若者への融資の需要が伸びているからです。インド経済はここ数十年で大きな進歩を遂げ、向こう20年間は経済成長率8%で推移すると予想されています。インドは10億人以上の人口を抱えていますが、上位5,000万人の所得層を見ると、金融商品の信用力の格差が非常に大きい状況です。ただ、経済成長を続ける上で融資は必須です。国内だけでなく海外からも、インド市場に投資したいというニーズはとても大きいものがあります。
そこで、axioは独自のアプリを開発し、インド国内の金融機関と連携。会社員や自営業者向けに、日々の買い物や生活資金として利用でき、分割返済が可能なデジタルローン商品を提供しています。900万人の顧客がaxioから融資を受けてきました。またaxioアプリのダウンロード数は1,200万件を超えています。顧客数は毎年倍増しているイメージで、特に直近3年間で4〜6倍に増えました。
―axioのアプリ利用者のペルソナを教えてください。
25〜35歳の、デジタルネイティブ世代で、伝統的な金融機関をあまり利用していない人たちです。我々の顧客の70%はクレジットカードを所有しておらず、50%は無担保ローンの利用経験がありません。なぜなら、60%がインドのTier1都市圏(デリー、ムンバイ、チェンナイなど)外に住んでいて、金融サービスへのアクセスが困難な状況にあるからです。
一方で、彼らはスマホで日常的にデジタル決済を行うほか、学業や仕事にとても熱心です。伝統的な金融機関にしてみると、こうした層への融資はリスクが高いと思われがちですが、今後、経済成長を続けていく国の中核を担いうる存在であることも確かです。実際に、axio利用者の債務不履行率は2%未満と、とても低いのですよ。
AIが「不良顧客」を見極める
―どのようにして高い返済率を確保しているのですか。
利用者の支払い能力と支払い意思を正確に見極めることに他なりません。言葉だけだと単純なことに聞こえますが、融資成功の王道はこれ以外にないのです。そのために必要な要素は2つあります。
1つはデータ。アメリカのような金融大国ではほとんどの国民がクレジットスコアを持っていて比較的容易に顧客の信用力を分析できますが、われわれの主要顧客のインドの若者はそもそも金融機関を利用していないケースも少なくありません。われわれは顧客の返済や収入、行動に関する膨大なデータソースを集め、信用力の高い層に集中して融資を行っています。
2つ目に、優良顧客と不良顧客を選別するモデルの構築があります。この点に関しては、これまで10年間ビジネスを行ってきた経験から、早めに顧客の選定を行うことができるようになってきています。
いずれにしても、最も避けたいのは返済不能に陥ることです。そのために過剰融資はしないようにしていますし、何よりも長期的に顧客と成長できる与信商品の開発を重視しています。インドの新興世帯はまだ若く、axioを利用し始めるタイミングによって必要とする金額が変わってきます。25歳の時はスマホを買う必要があるでしょうし、35歳になると家を買いたいと思うようになるでしょう。利用開始時の与信可能額は低いかもしれませんが、ライフステージの変化と信用力の上昇に合わせて、商品も変化させていっているのです。
image: axio HP
―axioを利用した顧客の事例を教えてください。
インド東部のTier3都市に住んでいた若者のケースをお伝えしましょう。彼はデータサイエンスの修士課程を修了しようとしていたところで、研究に精を出す必要がありました。ところが、家にノートパソコンがなく、価格も高いということで購入を諦めていました。そんな折、axioに出合い、長期分割払いでデータサイエンスに最適化したノートパソコンを買うことができたのです。
彼はその結果、修士号を取得し、大手企業に就職することができました。このように能力と意欲はあるものの、伝統的な金融機関が近くにない、また信用力が低いと思われている若者に対して適切な融資を行い、彼らの人生を好転させられるのがaxioのようなマイクロ融資サービスの利点なのです。
銀行にとってもメリットが大きいaxioの存在
―米国でMBAを取得後、インドに帰国してaxioを創業しました。きっかけはなんだったのでしょう。
インドの何百万人もの人々の生活に良い影響を与える商品をつくりたいという想いが原動力です。私が当社を創業した当初、インド国内では食料品やモビリティ、EC、ヘルスケアといった分野でアプリを使ったテックベースのビジネスが雨後の筍のように立ち上がっていました。それら全てのサービスに共通していた課題は資金調達へのアクセスだったのです。
当然ですが、デジタルビジネスで顧客の裾野を広げようと思えば、資金が必要だからです。そこでわれわれが伝統的な金融機関と連携し、アプリで簡単にチェックアウトができるサービスをつくろうと考えたのです。
―銀行も、顧客の変化する決済行動(アプリを通した買い物)に対応できるaxioとの連携にはメリットを感じたのではないですか?
先ほどもお話ししましたが、現在のインド市場は金余りの状況で、投資したいけど投資先がないのです。特にわれわれの主要顧客である新興地域の若者の経済状況が上向いていることはみんな理解していますが、いかんせん正しい供給方法がこれまではありませんでした。
われわれがインドの銀行と提携し、彼らのバランスシートの強さとaxioの顧客獲得能力を掛け合わせれば、非常に力強い新たな市場をつくることができます。銀行にとってもaxioは重要な存在だと思います。
日本とインドの距離はもっと近くなる
―日本企業とパートナーシップを組みたい、という意志はありますか。
はい。日本の金融機関や商社といったコングロマリットとの連携の可能性は十分にあると考えています。というのも、日本企業は手元流動性が高く、インドのどの企業よりも大きな資本力を有しているでしょう。彼らにしてみれば、次に成長する市場への投資チャンスを常に窺っている状況で、それを可能にするのがaxioだと自負しています。
どんな国もそうですが、新興国から先進国へジャンプアップする時に、真っ先に必要となるのは金融サービスです。労働力である若者をはじめ、インフラへの投資も不可欠でしょう。向こう10年間にかけて、日本とインドの関係性はより強固なものになっていくのではと期待しています。
―日本企業との協業を考えた時、どのような形態のパートナーシップが理想だと考えていますか。
形態についてはまだはっきりしたイメージは持っていません。提携の内容にもよるからです。ただ、日本企業とのディスカッションに関してはいつでもオープンにしていますよ。