インターネットとモノがつながるIoTが注目されて久しいが、家電の世界でもテレビ、電気、冷蔵庫、洗濯機など、様々な家電がインターネットとつながる時代が訪れている。しかし、家電メーカーが従来の自社製品をインターネットにつなぐのは容易ではない。自社でIoTのためのプラットフォームを構築する場合、多額の費用と時間がかかるからだ。今回紹介するArrayentは、大手家電メーカーなどにIoTプラットフォームを提供し、短期間で市場にコネクテッドデバイスを投入することを可能にしている。

Cyril Brignone
Arrayent
CEO
エコール・サントラル・ドゥ・リヨンにてエンジニアリングを修了。2000年から2007年までヒューレット・パッカード研究所で勤務。2007年にVatorvを創業。2012年にArrayentに入社し、2015年にCEOに就任。

70以上の製品、81カ国でコネクテッドデバイスを支援

―まず御社の事業内容を教えてください。

 大規模な家電メーカー、消費財メーカーの製品をインターネットにつなぎ、短期間で市場に投入するお手伝いをしています。当社は世界中の8つのデータセンターを展開しており、クラウド上にてコネクテッドデバイスを利用するために必要なすべてのサービスを提供しています。

―どんな企業が御社のサービスを利用しているのでしょうか。

 当社の顧客は、Whirlpool、Maytag、Chamberlainといった家電メーカー、P&Gなどの消費財メーカーなどです。これまでに17社、70以上の製品、81ヶ国にてコネクテッドデバイスを発売する支援をしてきました。

 何十年もの間、洗濯機や乾燥機、電灯などの製品を作ってきた会社にとって、自社製品をインターネットにつないでIoT化させるのは本当に難しいことです。製品をアプリとサーバーにつなぎ、デバイスと消費者の両方のデータを扱う必要があるからです。当社のサービスを使えば、そういった準備に時間を割く必要なく、製品と顧客だけに集中することができるのです。これまでには最短4ヶ月半で、2大陸でのコネクテッドデバイスの投入実績があります。

―御社のサービスの具体的な活用事例を教えてもらえますか。

顧客の具体的な事例については開示することはできませんので、たとえでお話ししましょう。コーヒーマシーンを例にとってお話しします。コーヒーマシーンをFitbitのようなウェアラブルデバイスに連携させたとしましょう。するとユーザーが眠った時、起きた時を自動的に判別し、適切なタイミングで自動でコーヒーを作れるようにできる。また、機械が故障する前に異常を察知し、ユーザーは故障する前にメンテナンスをすることができます。これは今までにない新しい商品の使い方です。

Amazon AlexaやGoogle Home、nestとも連携可能

―御社のIoTプラットフォームでできることは何でしょうか。

 どんなデバイスもインターネットにつなぐことができ、通知機能やユーザー管理機能なども備えています。たとえば、冷蔵庫の温度が高すぎて、冷蔵庫内の食品が危険にさらされている場合、ユーザーに通知をしたり、誰に通知をするのかというユーザー管理も行うことができます。

 様々な分析も可能です。ユーザーおよび製品についてのデータ分析が可能になります。その時点ベース、イベントベース、データモデルベースという切り口で分析ができます。

 さらにAmazon AlexaやGoogle Home、nestといった有力デバイスとも連携可能ですので、音声制御など重要な機能と互換性を持たせることができます。

―Amazon Alexaなどとは、どのように連携させられるのですか。

 顧客が望めば、デバイスにAlexaアダブターを接続することができます。何かを開発する必要性はなく、デバイスをAlexaを通じて音声で制御できるようになります。同様に、Google Homeのプラグインをインストールして、Google Homeからデバイスを制御することもできます。ファブリーズのデバイスの場合、nestに「Away」と言えば、誰も家にいないという指示になり、自動的に匂いを出すのをやめます。nestに「Home」と言えば、自動的に良い匂いが出てくるようにできます。

Image: Arrayent

あらゆる家電がインターネットにつながる時代に

―このビジネスの市場規模はどれくらいでしょうか。

 非常に大きいと言えます。あなたの家にはいくつの電化製品がありますか?50個、それとも100個でしょうか。私はそれら全てが将来的にインターネットに接続されると思います。

 それはまるでスマートフォンのようです。15年前、ほとんどの人はスマートフォンを持っていませんでしたが、今や誰もが携帯電話というデバイスとしてではなく、様々なアプリやサービスを備えたソリューションとしてスマートフォンを購入しています。いまインターネットとつながっていない携帯電話を買いたいと思わないでしょう。同じように今後10年で家電製品もインターネットとつながっていくと信じています。

―これまでの資金調達について教えてください。御社は日本企業からも出資を受けていますね。

 私たちの主な投資家は、インテルキャピタル、DCM、オリックスです。ご存じの通り、オリックスは日本企業で、1年前に私たちの株主のリストに名を連ねてくれました。そういった背景もあり、私は日本市場にとても魅力を感じています。彼らの力を借りながら、日本市場に進出していければ嬉しいですね。

―最後に今後のビジョンをお聞かせください。

 あらゆるブランド企業が利用するIoTプラットフォームとなりたいですね。そして質が高い、信頼性のあるサービスを提供したい。ブランド企業が迅速に市場に製品を出していく助けになりたいのです。

 一度IoT化された製品を出せば、消費者はその製品が3ヶ月か6ヶ月ごとに新しく更新されることを期待します。もはや3年後などというスピードではありません。人々は、モバイルアプリを通じてフィードバックし、このフィードバックが3ヶ月から半年後には対応されていることを期待しているのです。私たちは製品を市場に速く投入するだけでなく、革新的な更新を迅速に追加することのできる、柔軟なIoTプラットフォームサービスとなりたいと思います。



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