Anyplaceは2015年に設立したスタートアップ。ホテルを予約するように引っ越そうと、新しくフレキシブルな賃貸のシステムを提供し、ワークスタイル、ライフスタイルに変革を起こそうとしている。アメリカのみならず世界へと飛躍しようとするAnyplaceについてCo-founder & CEOの内藤 聡(Satoru "Steve" Naito)氏にインタビューした。

自身の経験から生まれたアイディア

―Anyplaceを創業したきっかけを教えていただけますか。

 大学の在学中から、ARのアプリ「セカイカメラ」を作っていた頓智ドットや、日本のVCであるEast Venturesなどでインターンをしていました。それでシリコンバレーで起業したいと思い、大学を卒業して引っ越してきました。

 現在の事業を始めようと思ったきっかけは自分自身の体験でした。アメリカへ来てから何度も引っ越しをする機会があり、引っ越しがとても面倒だと感じました。面倒なことの1つは住宅の賃貸契約が1年など長期の契約をしなくてはいけないこと。もう1つは家具を揃えたり電気や水道などを整えないといけないこと。家に入る時も出る時も面倒。それをホテルを予約するような感覚で、もっと簡単に賃貸住宅を利用できる方法がないだろうかと考えて、事業を思いつきました。

内藤 聡
Anyplace
Co-founder & CEO
1990年山梨県生まれ。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで起業。2017年に賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。同年ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。

1ヶ月単位で部屋を借りられる

―「Anyplace」のビジネスについてお聞かせください。お客さんはどのような契約で部屋が借りられるのでしょうか。

 私たちはフレキシブルなハウジングを売るビジネスです。ホテルや家具付きのアパート、最近増えてきたコリビング(シェアハウスとコワーキングと一体化した住宅)の物件を私たちのウェブサイトで提供しています。

 アメリカで賃貸契約をしようとすると「紙」の書類が多いのですが、私たちの事業ではすべてオンライン上で完結する形にしています。家賃の支払いもアメリカは現金のみといったところもありますが、クレジットカードなどで決済できるようなサービスを提供しています。

―ホテルなどと提携して、その部屋をオンラインで販売するモデルなのですね。

 そうです。我々が在庫を持つのではなく、ホテルのブッキングサイトと同様に、住みたい人と部屋をマッチングしています。ブッキングサイトとの違いは長期滞在の物件を専門的に取り扱っているということです。最低契約期間は1カ月で、それ以降は何カ月でも契約でき、いつでも好きな時に退去もできます。ホテルの物件はもちろんですが、サービスアパートメント、コリビングの家賃には公共料金が含まれています。

―競合するのはどういった企業になるのでしょうか?

 まったく同じビジネスをしている直接な競合はいませんが、Airbnbなどは間接的な競合相手と言えます。ただAirbnbはCtoCのビジネスですが、我々はBtoCです。Airbnbでは長期向けのインスタントブッキングは受け付けておらず、長期滞在したいお客さんは貸し主から色々質問されたり、複数のホストとコンタクトを取る必要が出てきます。しかし私たちはプロの物件しか扱っていないので、ホテルと同様の簡易さで予約できます。

 もう一つの違いはAirbnbでは滞在の延長が難しいのですが、Anyplaceでは1カ月前までに申請して頂ければ好きなだけ延長できます。ですから住居の提供としては安定したビジネスモデルといえると思います。

―Anyplaceのビジネスにおいて、ホテルなどの部屋を提供する側のメリットは何でしょうか?

 州によって異なるのですがアメリカの法律では、ホテルに30日以上滞在すると賃借人としての権利が発生します。その権利トラブルの発生のリスクがあるため、Expediaなどホテルブッキングサイトは30日以上の滞在を基本的には受け付けていません。

 しかし我々は滞在するお客さんの情報をチェックしてトラブル発生のリスクを下げます。仮に滞在者のトラブルが発生しても、そのコストを我々が負担します。そこが大きなメリットです。もう1つはアメリカやグローバルレベルではマンスリー、ウィークリー賃貸のためのウェブサイトが我々以外にはないので、独占的にお客さんをいち早く紹介できることになります。

ワークスタイル、ライフスタイルの変化で賃貸住宅のニーズも変化

―Anyplaceの中期的、長期的なビジョンを教えてください。

 アメリカ国内では現在20都市をカバーしていて、お客さんが多いのはサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスです。またヨーロッパにも進出を果たし、イギリス、ポルトガル、イタリア、スペイン、ドイツにも拡大しました。来年にはアジアも考えています。5年後までには世界中にAnyplaceを広げるというのが我々のゴールで、マンスリー、ウィークリー賃貸のトップウェブサイトを狙っています。それも画一的ではなく、色々なロケーションや面白い物件を紹介していきたいです。

 デジタルノマドなど定住しない生活の仕方や、社員全員がリモートで働くような会社も増えています。「InVision」や「GitLab」などは社員が700人以上いてオフィスがありません。そこまでではないにしても、リモートワークを取り入れている企業はシリコンバレーでは増えて、大きな変化になっています。我々の会社も16人の社員がいますが全員がリモートワークで、アメリカの都市だけでなくパリ、ベルリン、イスラエルで仕事をしています。

 この様な変化で1つの場所に住むという考えは、若い人を中心に減っていき、ワークスタイルが変わればライフスタイルも変わると思います。そしてライフスタイルの変化によって賃貸住宅のニーズも変わるでしょう。その考えをもとに我々は5年、10年後に向かって、柔軟に賃貸物件を紹介したいと思います。



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