消費者は購入した製品をいつ、どこで、どのように使うのか
―まず御社の事業について教えてください。
Adrichは、消費者行動をシームレスに追跡する「スマートラベル」と、「スマートラベル」から製品の使用データを自動的にスマートデバイスに送信し、クラウドに集約するIoTプラットフォームの提供。そして、クラウドに集約したデータを、AIを活用し集計・可視化するダッシュボードや、消費者と直接対話できるメッセージングプラットフォームを提供しています。「スマートラベル」は、製品ラベルの裏に貼付できるタグで、取得したデータの集約にはBLE(Bluetooth Low Energy)対応技術を使っています。
―製品ラベルに貼付するタグということは「スマートラベル」は使い捨てですか。ハードウェアのロジスティクスについてお話しください。
「スマートラベル」は返却を前提にしています。現時点では、メーカーが製品の消費者に直接協力を募り、協力してくれる消費者に対して「スマートラベル」付き製品と一緒に、使用済み製品の返却用封筒を渡しています。この方法で、かなりの割合で「スマートラベル」を取り戻すことに成功しています。
「スマートラベル」は製造後の製品(ポスト・プロダクション)に貼付することを前提に設計しており後付が基本です。これは競合との差別化要因でもあります。
後付できるので、製品の製造工程にタグ付を含める必要がなく、小規模リサーチも可能ですので、メーカーだけでなく小売業者やマーケティング調査会社でも活用いただけます。
また、現在は小規模リサーチに使用するケースがほとんどですが、拡張を前提にハードウェア・ソフトウェアを構築しているので、メーカーのサプライチェーンに組み込むなど大規模リサーチにも対応可能です。
―消費者にとって、プライバシーの懸念はないのでしょうか。
そうですね。協力してくれる消費者には、自分のデータを私達が収集していること、そして専用アプリをダウンロードすることでタグが「スマートラベル」として機能することを明確に理解してもらうプロセスを設け、オプトインを明示しています。オプトインしてくれた消費者に対して、製品の無料提供やクーポンなどのインセンティブをご用意していることもありますが、私たちは単なるデータ収集ではなく、消費者に主導権を持たせることを目指しました。これにより、消費者は自分のデータをより積極的に共有してくれています。
ピーナッツバターは朝食ではなく、夜に消費されている
―取得したデータはどのように活用されているのでしょう。
当社の使命は、消費財分野において、データドリブンな製品開発を可能にすることです。
例えば、ピーナッツバターは朝食用と言う定説がありましたが、実際に調べたところ、ホエイプロテインの代用品として夜の10時から11時の間に消費されていました。このことから、パッケージ、メッセージやマーケティングの再検討、そしてスナックサイズのピーナッツバター製品や深夜のおやつなど、新製品のアイデアにも役立てることができます。
また、既存製品が仮説通りの使われ方をしているか調査するだけでなく、メッセージングプラットフォームを通じてデータを提供している消費者に直接ヒアリングし「なぜ」を知ることもできます。当社のソリューションは、既存製品を改善する「エンドツーエンドソリューション」として、大手ブランドを持つメーカーにも採用いただいています。
他には、購入者の年齢層や人口統計的な比較など、データが揃っていない場合が多い、新製品のローンチ時や新カテゴリーへの参入時に、当社のソリューションは特に価値を発揮します。
―最後に将来の展望と海外進出についてお聞かせください。
Adrichは、テクノロジー企業なので、今後も継続的に技術を進化させていきます。同時に、顧客への責任を負い、意見を取り入れながら価値を提供する、顧客が求めるインサイトを得ることができるプラットフォームとして成長していきます。
現在はヨーロッパに向けて出荷を始めた段階で、次はヨーロッパを目指しますが、日本は特に注目している市場の一つです。日本製品や日本の消費者行動も興味深いですし、日本のローカルブランドがよりよい市場プレゼンスを確立できるようご支援できたらとてもエキサイティングだと思います。