アメリカの広大な国土で、貨物を陸上輸送するのに欠かせないのが長距離トラックだ。しかし、運転手にかかる負担は大きく、人材不足が社会問題化している。そんな中、Starsky Roboticsは遠隔操作と自動運転を組み合わせた、完全無人運転トラック向けのソフトウェア開発を手掛けている。今回はCo-Founder & CEO Stefan Seltz-Axmancher氏に話を聞いた。

Stefan Seltz-Axmacher
Starsky Robotics
Co-Founder & CEO
ドレクセル大学で国際ビジネスおよびマーケティングを学ぶ。在学中から企業のインターンシップを数多く経験し、卒業後はスタートアップ向けコワーキングスペースのRocketSpaceなどでマネジメントを担当。2016年に無人運転トラック製造のStarsky Roboticsを設立、CEOに就任し、現在に至る。

アメリカの社会問題を解消する切り札、無人運転トラック用システムを開発

―御社のビジネスモデルについて教えてください。

 アメリカでは、長距離トラックの運転手にかかる負担が大きいことが問題となっています。中には、1カ月間もトラックに乗って過ごさなければならないという人もいます。そのような状況を改善するため、当社では無人運転トラックを開発しています。ハイウェイに乗るまでの区間は配信センターからの遠隔操作を行い、ハイウェイに乗ってからは完全に自動運転に切り替えるというものです。

―自動運転に携わる企業は他にもあると思いますが、御社独自の強みはありますか?

 長距離トラック運転の問題は、自動運転車でしか解決できないと思っています。そして、それを実現できるのは、実際に無人運転車を製造している我々しかいないと自負しています。自動運転システムは非常に複雑ですし、少しでも運転席に人が必要な場面があれば、それは製品として成り立ちませんから。

 当社のトラックには数多くの部品やカスタマイズされたソフトウェア、ロボット工学が使われています。さらに、コンピュータービジョン用の高性能カメラやレーダーを駆使して道路上の対象物を把握しながら、ハンドル操作やペダルの調節を行い、自動運転および遠隔操作を実現しています。これらすべての製造作業を自社内で行っています。

―トラック自体ではなく、搭載しているソフトを製造しているということですか?

 今はまだ1からトラックを作っているわけではありません。基本的には、無人運転トラック用のソフトウェアを製造しています。ただ、今はまだそういったトラックを製造しているところは少ないので、たとえばタイヤにモーターを装着する作業や、電気系統やコンピューターの指令系統によるタイヤ角度の設定、またレーンを把握するアルゴリズム作成など、我々が構築に携わるものも多いですね。

―顧客のターゲット層はどのような業界ですか?

 物理的に物品を運ぶことに関わる業界すべてです。我々も驚くほど多方面から、反響をいただいていますから。当社技術の活用例は多岐にわたります。

 アメリカでは貨物輸送の70%をトラックが担っています。列車も20%を占めていますが、もしトラックの輸送システムが改善すればトラックに移行するものも多いでしょう。自動運転トラックが普及すれば、貨物の80%をまかなうことができます。すでに鉄鋼や災害用の飲料水など、いくつかの試験導入で成功しています。

長距離トラック運転手の現実への驚愕がモチベーションに

―Starsky Robotics設立に至った経緯を教えてください。

 私が通っていた大学では、在学中、複数の企業のインターンシップに参加します。そして、私が最初に行ったのがトラック製造会社だったのです。当時、若かった私は世界で一番かっこいい車はランボルギーニだと思っていたのですが、そこで製造しているトラックが同じくらい高い値段であることに驚きました。しかし、さらに私が驚愕したのは、トラックの運転手が皆、自分のトラックを所有していることでした。トラック運転手は、ランボルギーニが買えるほど高給取りなのかと。それがその先10年ほど、ずっと心に残っていました。

 その後、シンガポールのスタートアップでインターンシップを経験してからは、いつか自分もスタートアップを立ち上げたいと考えるようになりました。2015年8月、趣味でロボットを作っている友人と旅行に行った際、例のトラックのことが頭をよぎりました。そこで友人に「もし、遠隔操作できるトラックが作れたらどうだろう」と持ちかけました。1カ月もトラックにこもっているくらい負担の大きい仕事だからこそ、ランボルギーニが買えるほどの給料をもらっているのだろう、と考えたからです。そして、調査したところ、完全無人運転トラックというのは前人未踏の産業だとわかり、これなら、自分のすべてをかけて挑戦できる、と確信したわけです。

広大な国土ならではの問題解消へ、まずはアメリカから。

―日本市場への進出は考えていますか?

 日本は確かに、魅力的なマーケットです。ただ、今はまずアメリカでの市場拡大を考えています。1つには、国土の問題があるからです。アメリカはとにかく広くて、トラックで横断すると1週間はかかります。運転手にかかる負担は大きく、それゆえ運転手不足の問題もあります。だからこそ、無人運転車の需要があるわけで、アメリカの市場規模は7000億ドルから8000億ドルにもなります。あとは、アメリカは世界でもっとも自動運転車への規制などの状況が整っている、ということも大きいですね。もし海外展開するなら、まずは同じような状況にあるカナダやオーストラリアだと考えています。

―将来的な展望を教えてください。

 運転手不足の問題は、我々が提供する自動運転トラックによって、解決すると考えています。すべての陸上輸送が無人運転トラックで網羅できることになれば、と思っています。今年中には国内での完全無人輸送を実装したいですね。



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