ドローンを利用した空中からの測量・3Dマッピングテクノロジーを提供するSkycatch。日本の建設機械メーカーのコマツとも提携し、建設現場の効率化を推し進めている。Skycatchは2013年に設立され、コマツやGVなどから4000万ドル超を資金調達している。今回はCo-founderでCEOのChristian Sanz氏に事業内容や今後の展望を聞いた。

Christian Sanz
Skycatch
Founder & CEO
1998年にアメリカ海軍学校にて学位を取得後、キャリアをスタートさせる。1999年から2011年までThe walt disneyを含む多くの企業へエンジニアとして参画。2011年にはDroneGames, Geelistという二社を起業しそのうち一社を売却。2013年にSkycatchを設立し、CEOに就任。

建設現場の「作業の重複によるコスト」と「材料の運搬コスト」を効率化

―まずSkycatchの事業概要について教えてください。

 私たちは、空中ドローンを利用した地形測量や3Dマッピングテクノロジーを提供しています。コマツ社やRio Tinto Group社など、大手建設会社に利用していただいています。正確な測量データとデータを活用するためのナレッジを同時に提供し、建設プロジェクトの生産性を高めています。

―現在、建設業界はどのような問題を抱えているのでしょうか。

 現在、建設業界が抱える一番の問題は、建設コストだと思います。要因としては「作業の重複によるコスト」と「材料の運搬コスト」の2つです。

 まず「作業の重複によるコスト」について説明しましょう。建物の建設は、必ず設計図に沿って行われますが、建物の設計は細かい修正も含めて何度も変更されます。たとえば施工前の地形測量の誤差修正に伴い、設計の変更を行うケースがありますね。この場合に難しいのは、その変更した設計が本当にその地形に適しているかを再確認する必要があるということです。それを再確認する際には再び測量も行わなければいけません。このように同じ作業が何度も重複すれば、人件費などを含めた事業コストは必然的に高くなってしまいます。

 次に「材料の運搬コスト」についてですが、基本的に一つのプロジェクトには様々な種類の材料が使用されます。この点に関して、建設会社は多くのコストを費やすことになります。材料費はもちろんのこと、現場への運搬費など様々です。ここで大事なのは、実際にどの材料がどのくらい現場に出入りしているのかを常に把握しておくことです。仮に誤った材料を運び込んでしまったりすると、運搬コストを無駄にかけてしまうといった事態に陥りかねません。

―Skycatchはそれらの問題をどのように解決しているのですか?

 まず「作業の重複によるコスト」に関してですが、私たちのドローンとソフトウェアを利用することで、短時間でセンチメートル単位の測量を行えるようになります。実際の標高や敷地面積を正確に割り出すことが可能となるのです。これにより広範囲の測量であっても、人員を割かずに行うことができ、さらに人の手で行う測量よりもはるかに正確なデータを集めることができます。

 さらに、私たちのテクノロジーは「材料の運搬コスト」についても効果があります。現場に出入りする材料を把握することにも役立つのです。実際に収集されたデータをソフトウェアで分析・記録してスマートフォンやタブレットなどのデバイスでいつでも簡単に確認できますし、チーム内での情報共有も簡単です。このように小さな計算の間違いが莫大なコストの浪費になりかねない建設業界には、正確なデータソリューションが必要なのです。

数センチ単位で正確な測量データを収集・解析

―数センチ単位で正確に測量ができるというのはすごいですね。

 私たちのように数センチメートル単位で測量できる企業は数少ないと思います。さらに私たちの強みは、従来の移動測量に必要なコントロールポイント(地上基準点)を設定する必要がない点です。基本的にコントロールポイントの配置には平均して約5時間以上の時間がかかるのですが、その点は大きく作業効率を上げることができます。また、飛行するドローン自体も自動化されています。ソフトウェア上で設定したドローンの飛行ルートを、本体へアップロードし、ドローンを飛ばすだけで広範囲の測量ができてしまうのです。

―他に競合と比較した時の強みはありますか。

 DronDeployなどの企業がドローン向けの測量ツールのみを提供しているのに対して、私たちはより多くの機能を兼ね備えたドローンプラットフォームを提供している点が強みです。このプラットフォームにも自身のドローンから画像をアップロードして3Dモデルを構築できる機能はあります。しかし、私たちはこれを単一のサービスとしては提供していません。

 基本プランをまず利用していただいた後に、希望する顧客のみ、プランをアップグレードする形を取っています。これにより顧客はニーズごとにプランを選択できるので、余計なサービスにお金を払う必要がなくなるのです。たとえば、地形測量に関して大きなニーズを持つ顧客へは、測量をより効率的に行うことができるデータ管理・共有ツールや注釈を追加したりできる機能などを含むプランを提案するといった形です。さらに、最近ではVR・ARと連動したサービスもローンチしました。

日本企業と共にオープンイノベーションを目指す

―御社は2015年から日本の建設機械メーカーのコマツと提携していますね。

 私はコマツ社を最高のパートナー企業だと思っています。提携を開始した2015年から、私たちは常に高い質のサービスを追求してきました。常に最高レベルでのデータの精度、ユーザビリティ、データ収集のスピードを提供しなければいけなかったので、開発チームは常に多忙でしたよ(笑)。しかし、それによって我々のサービスは一段階も二段階もレベルアップしました。さらに文化の違いや時差、言葉の壁など、アメリカ企業とのやり取りでは決して感じることのできない、多くの事柄も経験することができました。これは私たちにとって大きな財産となったと思います。

―今後、コマツとはどのような取り組みを考えていますか。

 コマツ社は多くのリソースを私たちに提供してくれ、逆に私たちはスタートアップとしてコマツ社をどのようにサポートできるかを常に考えてきました。その中で、お互いに常に最高のバリューを出し合い、いま私たち2社はとても素晴らしい関係性になっていると思っています。だからこそコマツ社からは顧客の紹介だけでなく、出資もしていただけたのではないでしょうか。これからもコマツ社に貢献できるように、パートナーとして総力を挙げていきたいと思っています。

―最後に、日本の読者へ向けてメッセージをお願いします。

 私たちはこれまで2年間、コマツ社と共に日本市場にて事業を展開してこれたことをとても嬉しく思います。今後は、建設、鉱業などの分野で、多くの日系企業に私たちのドローンテクノロジーを利用していただけることを楽しみにしています。



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