現代は情報があふれており、ビジネストレンドが激しく移り変わっていく。今この瞬間、世界で何が生じており、何がトレンドか、そして自分たちはどうアクションを起こすべきか、方向性を見つけられず苦労する企業も多い。Quidはそんな企業に対して、的確なインサイト(知見)を与えるため、AIによる文章データを分析・視覚化するツールを提供している。今回はCEO&Co-FounderのBob Goodson氏に話を聞いた。

Bob Goodson
Quid
Co-founder & CEO
2002年、イースト・アングリア大学卒業。2004年、オックスフォード大学院修了後、プロダクトマネージャーとして投資会社Midtown Doornailに勤務。同社の支援先であるYelpにて、製品・セールス部門を統率。2008年、Quidを設立。

膨大な情報の中から、企業が必要とするインサイトを提供

―Quidのビジネスモデルを教えてください。

 Quidは、ビッグデータを読み解き、その中から顧客企業が必要とする情報を提供することで、戦略立案や製品開発などの企業の意思決定を助けるビジネスです。

 今日、我々は膨大な情報にとり囲まれています。さらに、世界は急速な発展を遂げ、複雑化しています。ニュースやSNS、競合情報などの中に、ビジネス上の課題に対する答えが隠れている可能性はあるものの、内容を理解するには、数多くの文書を読む必要があります。従来、これらの文書の中から、重要な情報を発見するには、企業のアナリストチームやコンサルタントに頼る必要がありました。つまり、世界中のトレンドを理解し、アイディアを思いつくためには膨大な時間と資金がかかっていたのです。

 これに対し、我々は、人工知能(AI)を使い、多数の文章を解析することで、短時間で情報の本質を読み解き、インサイトを導き出すユニークなシステムを構築しました。Quidのプラットフォームは、企業がデータに基づき、よりよい意思決定を行うことを可能としているのです。

―Quidの強みを教えてください。

 Quidは、社会の動向を包括的に理解し、企業の課題を解決するためのインサイトを提供する唯一の企業です。

 例えば、過去一年間の御社のライバル企業の動きを理解したいというような場合、数件のニュース記事を読むだけでは、十分な情報を得ることはできません。Quidのプラットフォームでは、調査したいトピックに関して、AIを使って多数の記事を読みこむことができます。そして、記事同士の関係性を明らかにすることで、情報の全体像を俯瞰し、真のインサイトが得られるのです。

 また、過去24時間の御社に関する1000件を超えるクレームについて分析したいとします。通常は、社内のスタッフが、一件ずつコメントを読み、手作業で内容を分析するでしょう。一方、Quidのプラットフォームは、AIがすべてのコメントを読み、内容を理解した上で、短時間で傾向を見つけることを可能にします。

 このように、Quidの製品は、「人工知能を活用し、あらゆる情報を読み込んでインサイトを浮き上がらせること」で、企業の重要な意思決定をサポートしています。

Image: Quid

10億以上の記事を分析しプラットフォームを構成

―Quidの個性というべき「文章データの視覚化」について、詳しく教えてください

 興味深いことに、人類が書いた最初の文字は、物の形をもとにしたものでした。文章は常に視覚的要素を持ちあわせて来たのです。しかし、過去3000年、文字の発達は見られず、近年の情報量の増加と比較して、我々の読解力の進歩は後れをとっています。

 Quidが手がけているのは、視覚的要素を読解に持ち込むことで、情報の全体像を直感的に把握することです。我々は、文章データの視覚化というテクノロジーを開発したのです。

―Quidのプラットフォームではどのようなデータの分析が可能ですか。

 顧客は、ウェブ上のプラットフォームを利用しています。顧客は、プラットフォーム上で知りたいトピックを検索し、視覚化の方法をカスタマイズできます。

 Quidは大規模なデータベースを擁しており、ニュース・ブログ、企業データ、特許の三種類のデータセットがパッケージとして入っています。まず、ニュース・ブログデータに関しては、この4年間で世界中から収集し構築した記事は10億件以上に及び、世界でも最大級の規模です。このデータは、リアルタイムで更新されており、日々の収集記事は100万件です。また、企業情報については、CapIQとCrunchbaseから、データを取得しています。さらに、Thomson Innovationとのパートナーシップによる特許データベースがあります。

 これらの既存のデータセットだけではなく、顧客は、カスタムデータを分析することもできます。我々は1年前に、顧客が自社の情報をアップロードできるプロダクト「Opus」を構築しました。Opusプラットフォーム上では、顧客調査や製品レビューなどの自社データをアップロードし、分析することも可能です。

―Quidのプラットフォームの特徴を教えてください。

 Quidのプラットフォームは、NLP(自然言語処理)とマシンラーニングを用いています。言語分析には、統計学的な側面もあります。他社製品のテキストデータの分析ツールには、単語レベルでの分析を行うものが一般的です。対してQuidでの分析は、ドキュメント全体を読みこなし、単語レベルではなく、文書全体の意味を理解した上で、それぞれの文書を比較しているという点が特徴です。

 また、Quidのプラットフォームは多くの要素から成り立っています。オープンソースのツールを活用している部分もありますが、多くは自社で開発したものです。

―課金モデルについて教えてください。

私たちはライセンスごとに課金するシステムです。

―顧客数を教えてください。また政治目的でのデータ利用の可能性はありますか?

 顧客は、WalmartやHyundaiなど160社で、そのうちの多くはFortune500企業です。また、Fortune50のうちの10社も含まれています。政府や公的機関もクライアントリストに含まれていますが、政治的な使用目的ではなく、あくまでもビジネスに焦点を当てた使用です。

―今後、どのような地域・国で事業を展開していく予定ですか?

 私はイギリス出身ですが、アメリカでビジネスを始め、シリコンバレーに本拠地を置いています。また、ニューヨークとロンドンにもオフィスがあります。

 最近の傾向として、日本での顧客増加が挙げられます。革新的な技術導入を行いたいという日本企業からのアプローチが多く、日本での顧客企業は12社となり、今や我々のビジネスの10%を占めています。また、日本の顧客が増えるに従い、日本語の分析の必要性も明らかになりました。一年前から、日本語コンテンツのチームを設け、分析アルゴリズムの開発を行っています。日本での事業展開には大変関心があり、より多くの日本企業にQuidのテクノロジーを提供したいと思っています。



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