Quanergy Systems社は、自動運転車両向けのセンサーデバイス「Lidar」をビームフォーミングと呼ばれる技術を利用して開発している。 このセンサーを自動車へ導入することで半径300メートル以内の物体の位置や形状を捉えて、3Dマッピングをすることが可能となる。 すでに日本でもオフィスを開設済みで、日産などの大手自動車メーカーと提携している。これまでに$135millionを資金調達しており、時価総額1000億円以上のユニコーン企業となっている。今回はFounderでCEOのLouay Eldada氏に事業内容や今後の展望を聞いた。

Louay Eldada
Quanergy Systems
Founder & CEO
1994年にコロンビア大学にて博士号を取得。1994年から2008年までに4つの企業を創業しエグジットした。その後は、2008年から2012年まで複数のスタートアップに参画。2012年に同社を設立し、CEOへ就任。

物体の位置・距離・形状を測定するセンサーシステム「Lidar」

―まず御社の事業概要を教えてください。

 私たちは「Lidar」というビームフォーミング技術を用いて物体との距離やその形状を測定するセンサーデバイスを開発・提供しています。このテクノロジーは主に自動運転車に対して大きな汎用性を持っており、走行ルート上にある障害物の形状や位置を正確に把握し、3Dマッピングすることが可能です。

 これまで、このようなセンサーの開発にかかるコストは高価な部品を多く利用するため多くの費用を要していました。さらに、それを搭載した自動運転車両の一台あたりの価格は10〜20万ドルに設定する必要が出てきてしまい、自動運転車両の普及が遅れている大きな原因となっています。しかし、私たちは低コストの半導体を利用し、開発コストを削減することに成功しました。現在は自動車業界への実装を中心に進めています。このLidarセンサーによる3Dマッピングを利用し、年間約3万人にのぼると言われている交通事故の死傷者を大幅に減らすことができると考えています。

―他社との違い、強みはなんでしょうか?

 私たちは開発費用の低さに絶対的な強みを持っています。現在、Googleなどの競合他社は回転式のデバイスを開発しています。このモデルはデバイスそのものを回転させることで広範囲にレーザー光線を発射し、内部の鏡を利用して周囲の測量を行う仕組みになっているのですが、その開発に高価な部品を多く使うので必然的にとても多くの費用がかかってしまうのです。

 一方、私たちのセンサーには、半導体やミラー、レンズのような素材を利用する必要がありません。なぜなら、競合他社の製品のようにレーザーの反射から測量を行っているわけではなく、継続的に発射されるビーム自体を分析して物体の形状や物体との距離を計測しているからです。さらに測量の正確さにも自信を持っています。私たちのセンサーは断続的にビームを発射できるので、回転式のモデルと比べてはるかに多くのデータを集めることができ、より正確な測量が可能です。 

どんなに人が密集した環境でも効果を発揮する

―日本の道路のように大変混雑した状況でも利用できるのでしょうか?

 日本やインドのように人口密度の高い地域でも、もちろん利用可能です。通常、私たちが自動車を運転する際の視野は半径約200メートルと言われています。しかし、私たちのLidarセンサーをナンバープレートの位置に組み込むことで、本来人間が持つ視野の広さよりもはるかに広い範囲を捉えることが可能です。具体的には、私たちのセンサーは、半径約300メートル以内であれば3Dマッピング作り出すことが可能です。それは、東京のように1平方メートル内の人口密度が極めて高い地域であっても変わりません。

―ビジネスモデルを教えてください。

 現在、ソフトウエア、ハードウエア、それらを全て含んだフルサービスモデルの三つのモデルで収益を生み出しています。例えば、日産やメルセデスベンツなどの大手自動車会社が顧客として私たちのセンサーを開発する自動車へ実装しています。

コロンビア大学での研究をきっかけに、Quanergy Systemsを創業

―起業の経緯について教えてください。

 私たちの強みであるビームフォーミングを利用したLidarセンサーのプロトタイプは、私が博士号を取得する際に生まれました。当時、私はコロンビア大学にて博士号の取得を目指していたのですが、その際にアメリカ国防省の下部組織である「DARPA(国防高等研究計画局)」という、軍隊利用のための新技術開発および研究を行う機関から博士号のアドバイザーの方がやってきました。これはこのテクノロジーを開発するにあたり、とても幸運なことでした。最先端テクノロジーの研究機関の方に直接指導していただくことができたからです。指導していただくだけでなく、実際にビームステアリングを行うためのチップも開発していただきました。余計な部品を使わず、シリコンを通して射出されるビーム光線を自在に操ることはとても複雑な仕組みを要します。しかし、そのアドバイザーの方が開発したチップと多くの研究の末に現在のモデルを完成させることができました。

他社のサービスとの組み合わせで、大きな価値を生む技術

―Eldadaさんは4社の起業・エグジット経験があります。起業家として成功するコツはありますか?

 一社目の会社を起業をするのが一番難しいと言えるのですが、そこである程度の実績を残すことができれば、それ以降の起業は回を重ねるごとに優位に進めることが可能です。というのも、そもそも起業をして自分の会社を大きくするということは、それだけ数多くの人に技術や学歴、そこまでの経歴を認めてもらうということです。それを経て会社が大きくなり、最終的にエグジットすれば、その経歴がまた起業家としての評判を上げるのです。そうすることで得た経歴は、2度目、3度目の起業の際にも必ず役に立ちます。例えば、投資家から出資を受ける際の判断基準として、以前経営していた会社の評判をもとに出資を決める投資家の方も多くいます。

 そうすると、まず一度目の起業を成功させることが、その後の成功の絶対条件になってくるのですが、その際にできるアドバイスは三つです。一つ目は“誰よりもハードに働くことができる心構え”を持つことだと思います。つまり、何かを捨てる覚悟をもって全力で仕事に身を捧げることができるかどうか。それが成功できるかどうかを左右します。二つ目は、“他のどんな企業よりも革新的な事業作りを目指す”ことです。革新的なアイディアは他を寄せ付けない強みを生みますし、それが絶対的な提供価値を生み出すのです。そして、最後の一つが、“倫理感を持って仕事に取り組むこと”です。倫理感は規律を生み、規律は無駄を省きます。

―将来のビジョンを教えてください。

 私はまだこの分野があまり注目されていなかった頃から、将来の発展を確信していました。実際、このテクノロジーが大きなビジネストレンドの一つになった今、その分野に関わるビジネスを手がけられるのはうれしいことですし、とても幸運なことだと思います。現在、日本とドイツの大手自動車メーカーを含む多くの企業が私たちのテクノロジーに注目してくれていますし、この先も自動運転テクノロジーが進歩していく中でより大きな価値を生み出すことができると思っています。

―最後に読者の方へメッセージをお願いします。

 私たちは、今後も多くの日本の事業会社の方々とお仕事をさせていただくことをとても楽しみにしています。さらに、私たちは日本支社でも従業員の採用を進めています。パートナーシップやディストリビューション関連だけでなく、当社で働きたいという方からのご連絡をお待ちしています。

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