Parallel Domainは、あらゆる自律システムのトレーニングやテストに活用できる、合成センサーデータを生成するAPIを提供するスタートアップだ。2017年にシリコンバレーで設立され、2020年12月にはシリーズAラウンドでToyota AI Venturesを含む投資家から1100万ドルの資金調達(累計調達額は1390万ドル)に成功した。今回はFounder & CEOのKevin McNamara氏に話を聞いた。

ピクサー、マイクロソフト、アップルでの経験をもとに起業

――まずはParallel Domain設立までの経緯を教えてもらえますか?

 私は大学在学中に、ピクサーアニメーションスタジオで働きました。その時に映画「Brave(メリダとおそろしの森)」の製作に携わり、おそろしの森に生えている苔や木を、自然に成長させるために数式が用いられていることを知りました。これがきっかけになり、プログラミングとコンピューターサイエンスの知識を使い、視覚的に説得力があるものや、人々の役に立つものを作ることに興味を持ったのです。

Kevin McNamara
Parallel Domain
Founder & CEO
ハーバード大学にてコンピューターサイエンスの学位を取得。在学中に、Pixar Animation Studiosなどでインターンとして同社の3D映画の製作に携わる。MicrosoftにてTechnical Artist、AppleにてProcedural Content Leadを務めた後、2017年にParallel Domainを設立。
 大学を卒業してからは、マイクロソフトゲームスタジオで、ビデオゲームのコンテンツ製作に携わった後、2015年からアップルで、トレーニング、テスト、シミュレーションを活用した自律システムの開発用コンテンツの製作を担当しました。そして、2017年にParallel Domainを創業しました。

 私たちのミッションはコンピュータビジョンの開発を加速させることです。具体的には、安全、効率的で、より拡張性のあるデータをより速く生成すること。顧客が、多くのケースで活用できる正確なコンピュータビジョンモデルを使って、機械学習のトレーニングとテストを行えるようにすることです。

自動運転技術で年に何十万もの命を救える

――様々なケースで活用できるとのことですが、特に注力している分野はありますか?

 まずは自動運転車に注力していますが、さらにドローンの配送会社との提携や、他業種での導入も進めています。

 コンピュータビジョンは、スマートフォン、車、自宅に設置しているインターネットカメラやドアベルなどや、小売店、製造業や農業など様々な分野で使われています。いずれの場合でも、自律システムは、センサーから得たデータを基に意思決定しています。当社の顧客は、当社が生成し提供する、合成センサーデータ、カメラのデータ、LiDARやその他センサーデータを機械学習のトレーニングに活用しています。

Parallel Domain Teaser from Kevin McNamara on Vimeo

――自律走行車に最も力を注いでいる理由は何でしょうか。

 理由はいくつかあります。1つ目が、運転と輸送アプリケーションに焦点を置いた自律システムに私が携わってきたこと。もう1つの理由は、自動運転分野は資金が集まりやすく、研究が盛んだからです。

 そして、最も重要な理由が、安全性の問題です。ある調査では、2016年の世界の交通事故死亡者数は130万人でした。発展途上国においても交通事故死は非常に深刻な問題ですが、交通インフラが整っており、安全性の高い車両が多い米国でも、毎年多くの方が交通事故で亡くなっています。なぜなら人為的ミスが95%の事故を引き起こしているからです。交通事故死は、予防可能な死であり、居眠り運転、ながら運転や飲酒運転をなくすことができれば、年間何十万人もの命を救うことができるのです。

トヨタも出資。日本でのビジネスに期待

――競合はいるのでしょうか。また他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか?

 競合に関しては、2つに分類し考えています。まず、現実世界で走行し収集した莫大なデータを使う“現状(Status quo)”分野です。多くの企業が取り組んでいますが、直接的な競合ではありません。

 もうひとつは、シミュレーション分野です。シミュレーションに取り組んでいる企業の多くは、シミュレーションソフトウェアやシミュレーションインフラを開発していますので、当社と部分的には重なりますが、同じではありません。ただし、中にはセンサーシミュレーションや合成データも提供している企業があるので、多少の競争はあります。しかし、合成データに特化している企業は少ないですし、その中でも当社は資金面で優位だと考えています。

昼夜、雨などの条件で合成データを生成できる。

――御社はToyota AI Venturesからの出資も受けています。日本での展開も視野に入っていますか?

 日本企業の顧客がいますので、日本向けのデータセットが既にあります。パンデミック前には、何度も日本に行きました。東京だけでなく、いくつもの都市で多くの企業と商談してきました。今後、日本でのビジネスが、当社の売上の大きな割合を占めることは間違いありません。パンデミック後には、日本にサポートエンジニアなどの専任スタッフを常駐させるつもりです。

 そして、大企業だけでなく、日本の自動車産業のサプライチェーンに含まれる様々な企業との提携に関心があります。




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