大手ブランドやマーチャントなど幅広い顧客に、グローバルコマースとデジタル・クラウド変換サービスを提供するOSF Digital(本社:カナダ)。グローバルな成長をより迅速に実現するために、チャネル、デバイス、ロケールにまたがるコンサルティングをはじめ、アプリケーション開発と導入サービスを俊敏なアプローチで提供し、企業のデジタル・トランスフォーメーションをサポートする。2003年にOSF Digitalを創業したCEOのGerard Szatvanyi氏に、同社の強みや今後のビジョンについて話を聞いた。

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Salesforceとの強力なパートナーシップでグローバル展開

 Gerard Szatvanyi氏によって2003年に設立されたOSF Digitalは、現在2,200人以上の従業員数を抱え、世界49拠点で、顧客関係管理(CRM)、コンテンツ管理システム(CMS)、注文管理システム(OMS)、ユニファイドコマース、オンラインショップ管理、クラウドアプリケーション開発サービス等を企業向けに提供する。

 エンジニアとしての経歴を持つSzatvanyi氏は、クラウドという言葉が一般的に使われる前から、クラウド上での適切なシステムインテグレーションが求められる世の中になることを感じ、クラウド空間でのシステムインテグレーターとしてOSF Digitalを設立した。設立当初の従業員は4人だったという。

Gerard Szatvanyi
OSF Digital
Founder & CEO
Universitatea POLITEHNICA din Bucureștiで生物化学工学の学士号、Université Laval でImage processing and process controlの修士号を取得。ソフトウェア製品、エンタープライズグレードのスケーラビリティ、システム統合のほか、クラウドおよびモバイルアプリケーション開発、エンタープライズCRMソリューション、主要なeコマースの導入、統合コンテンツ管理ソリューションにおいて15年以上の経験を持つ。2003年に、OSF Digitalを設立。CEOを務める。

 OSF Digitalは、企業のeコマース事業の立ち上げから、その企業が展開するすべての国でeコマース事業を展開するためのサポートを得意としている。また、クラウド型の営業管理、顧客管理等のソリューションを中心としたクラウドプラットフォームを提供するSalesforce(本社:米国)と強力なパートナーシップを結び、現在ではSalesforceの分野で有力なシステムインテグレーター、技術系企業の1つとなり、Salesforceが進出する全ての市場に同社サービスを展開する。

 OSF Digitalの顧客には誰もが耳にしたことのある大手ブランドの名前が連なるが、その1つに、化粧品ブランドのL’Oréalがある。OSF Digitalは、L’Oréal傘下のShu UemuraのウェブサイトにSalesforce Commerce Cloudベースのウェブストアを導入した。既に、L’Oréal 傘下のBiothermのウェブストアの立ち上げを支援した業績を持つOSF Digitalは、Biothermのウェブストアを導入する時に開発したコア・アーキテクチャをベースに、英語及びフランス語対応のカナダ向け及び米国向けのShu Uemuraのウェブストアを立ち上げた。

 さらに、OSF Digitalは、Bazaarvoice評価・レビュープラットフォーム、DOTS住所認証ソフトウェア、統合SAP受注管理ソリューション、Cybersource支払いゲートウェイ、新しいウェブサイトのパフォーマンスを追跡するGoogle Analytics等のサードパーティーのインテグレーションも行い、合理的で信頼性の高いショッピング体験を実現することができるウェブストアを構築した。

 わずか4カ月で導入された同ソリューションは、オンラインショッピング、特にモバイルデバイスからのショッピングの増加に対応するため、どのデバイスからも一貫して見えるモバイルフレンドリーなウェブストアとなり、導入後、Shu Uemuraのモバイル向け e コマースの転換率は約 50% 増加し、全体的なトラフィックと訪問率も大幅に増加した。

「立ち上げは出発点に過ぎません。私たちは、サービスを改善し、最適化したいと考えています。企業における毎年20%、30%の成長をお手伝いしたいのです。複数ブランドを持っている大企業は、別の国、別のブランドでも同様のサービスを展開したいと考えるわけです。私たちは、このような企業の展開をサポートしていきたいのです」とSzatvanyi氏が語るように、OSF Digitalは、サービスを立ち上げたあともサポート役として重要な役割を担う。

Image:OSF Digital HP

顧客のビジネス視点に立ち、スピード感を持ってサポートの仕方を考える

 パンデミック中のOSF Digitalは、年率20%以上の成長を遂げた。それは、顧客のニーズの拡大と併せて、同社の働き方にも成長の鍵があるという。パンデミック時に多くの企業がリモートワークに移行したが、同社は2003年の創業時からリモートワークが導入され、社員はどこからでも働くことができる。長年培ってきた同社の働き方は非常に体系化され、かつ規律正しく行えるように構築されているため、パンデミックが始まったとき、同社ではすでにリモートワークが効率的に機能する仕組みが整っていた。

 また、パンデミック中には、多くの企業ができるだけ早いオンラインショップの立ち上げ支援をOSF Digital に求めた。企業の要望に応えて、OSF Digitalは、最短2週間で企業のオンライン化を実現した。Szatvanyi氏は、事業の生存がかかっていたパンデミック中には、このスピードが企業にとって非常に重要だったと語る。また、サイトを立ち上げた後、企業が望めば、より高度に、より複雑にサイトを進化させた。

 Szatvanyi氏は、OSF Digitalの2022年の成長率が約70%になるとみているが、この成長率は既存のサービスによる成長と買収によってもたらされているという。2022年11月時点で、同社は、デジタルB2Bコマース企業、マルチクラウドコンサルティング企業を含む5社を買収している。この数は今後も増える予定だ。

 OSF Digitalの強みをSzatvanyi氏はこう語る。

「eコマース全般について考えるとき、私たちはショッピングカートの技術だけを見るのではなく、セットアップ全体を見たいのです。販売した商品のアフターサービスをどのように行うか。マーケティングをどのように行うか。ウェブサイトにより多くの顧客を集めるにはどうすればよいのか。コンバージョン率を上げるにはどうしたらいいか。ロジスティクスとの統合はどのように行うのがよいか、など、全体を見ています」

「そのためのコンサルティングも行っています。組織がより良く機能するように、組織を変える手助けをするのです。それが、私たちが考えている方法です。我々は、テック企業ですが、企業の皆さんとは、よりビジネス的な視点を持ってお話をしたいのです」

「企業がeコマースで実現したいのは、収益を上げ、利幅を拡大させることです。そして、私たちは、そのお手伝いができればと思っています。我々は、単なるプロジェクトを扱っているのではなく、彼らのビジネスを拡大し、ビジネスを成長させ、利益を上げる手助けをするのです。これが、私たちが他の企業と大きく異なる点だと思います」

日本でのプレゼンス拡大を含む、組織の成長、企業買収、技術投資を進める

 OSF Digitalは、2022年4月には、シリーズCで1億ドルを調達した。同資金は、雇用による組織的な成長拡大、企業の買収、技術への投資に充てられる。技術への投資では、特にAIに対して多くの投資を行い、将来的にはAI活用による従業員の生産性を高める働き方に注力する。

 同社は、現在日本では数社の大企業を顧客に持つ。顧客には、日本での事業を拡大したい多国籍大企業、あるいは日本のグローバル企業で日本国外での事業を展開を希望する企業がある。一般的に大企業と提携する場合は、ロジスティックスやコンサルディングに携わっている企業や、日本のブランドで世界進出をサポートしている企業等との提携が概してうまく機能しているという。そこにOSF Digitalが技術的な専門知識とグローバルな事業展開をサポートする技術を提供していく。

Image:OSF Digital

 日本でのプレゼンス拡大と併せて、同社の今後のビジョンをSzatvanyi氏はこう語る。

「来年はさらに30%から35%成長する予定です。すべての市場において、プレゼンスを拡大し、強化します。日本では、非常に積極的な成長計画を立てています。今年、多くの人を採用しましたが、来年はその倍を目指します。それから、世界全体の経済状況、ウクライナでの戦争、そして不況に対処し、乗り越える必要があります。私たちは、過去に何度も不況に見舞われた経験があり、対処する方法を知っています。これまでも、世界的にこのような問題が発生したときでも、私たちは、健全な成長を遂げることができました。でも、いつも通りというわけにはいきません。より複雑な時代に対応する必要があります」

 また、Szatvanyi氏は、OSF Digitalのミッションについて、「衝突や紛争ではなく、この世界をより持続可能なものにするために、そして、誰もがきちんとした生活を送れるようにするために、私たちがすべきことはたくさんあります。この困難な状況下でも、私たちはまだ成長できます」と力強く語った。

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