(2021年にJ.P. Morgan Asset Managementが買収。2023年6月追記)
WWF出身の異色創業者が目指すビジョン
―まずはあなたの経歴や御社設立の経緯について教えてください。
私の経歴はこの業界では少々異色で、いわゆるサステナブルファイナンスの世界に10年以上身を置いてきました。今の仕事を始める前は、世界自然保護基金(WWF)に6年間勤務し、銀行や投資家との関係を管理していました。
私以外の2人の共同設立者は世界有数のヘッジファンドである、ブリッジウォーターアソシエイツ出身で、ポートフォリオ管理システム構築や自動取引プラットフォーム構築に関わっていました。
彼らは何か新しいこと、社会の役に立つ仕事を始めたいと思っており、私は投資家自身が価値を感じられる企業や活動に投資できるシステムを作りたいと考えていました。そこで我々は力を結集し、テクノロジーを使用して「価値ベースの投資」を主流化する企業を立ち上げたのです。
投資家の興味や嗜好に合わせて最適化されたポートフォリオを提案
―御社では、具体的にどのようなサービスを提供されているのでしょうか。
当社の製品は、資産管理者や金融アドバイザー、そしてアドバイザープラットフォームの双方がクライアント固有のパーソナライズドされた投資ポートフォリオを提供するための、エンドツーエンドのソリューションです。
コアになっているのは、クライアント1人1人の興味や嗜好に合わせて最適化されたポートフォリオを提案できるシステム、つまりオプティマイザーになります。
たとえば、ジェンダーダイバーシティに興味があり、銃社会には反対で、三菱の株に注目している、というクライアントがいたとします。現況では、こうした方向けの既製品はありません。そこで我々はオプティマイザーによってこうした条件に沿って、最適なポートフォリオを構築します。
システムはエンドツーエンドのAPIになっているので、アドバイザーはクライアントとのミーティングで先方の「価値」を尊重しながら、モバイルデバイスで当社のポートフォリオ管理を利用し、その場で投資商品を作り出すことができるのです。もちろん、取引開始後もポートフォリオの見直しや自動取引管理システムでサポートします。
個人向けのパーソナライズ商品は画期的
―他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか。
これまでも顧客向けにパーソナライズされた金融商品を提供してきた企業はありました。でもそれはハイエンドな顧客向けに限られていたのです。たとえば、資金を10億ドルも用意できる顧客であれば、大手金融機関に対応してもらえたでしょう。しかし我々が想定する顧客というのは、もっとも身近な、普通の企業や投資家個人です。
しかも、今までは希望に沿ったポートフォリオ構築には数週間、数カ月単位の時間がかかりましたが、我々のシステムを使えば、その場での提案も可能になりますので、これまでにない画期的なサービスだと自負しています。
―海外にも展開しているのでしょうか。
はい、今はオーストラリアのパートナーを通じて、年金基金の資産管理を手がけています。ヨーロッパでのートナーシップも模索中ですが、それ以外はまだアメリカ国内中心ですね。
―今後日本などアジアに進出するとしたら、パートナーとなり得るのはどのような企業になるでしょうか。
すでに顧客を抱えていて、イノベーションや柔軟性を兼ね備えた大手の資産管理会社や銀行がいいですね。最先端のテクノロジーでパーソナライズされた商品を提供するわけですから、未来志向でフットワークの軽い企業を探したいと思っています。
―最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。
中期的な目標としては、このまま成長を続けていきたいと思っています。現在および新規のパートナーと協力しながら、このシステムをうまく進めて拡張していくことですね。
長期的な目標としては、株式管理以外の資産クラスにも移行していきたいですね。当社のシステムなら、個人レベルで資産クラスをまたいだ投資の最適化を実現できます。これは、従来のファンドでは決して実現できなかったことですから。あとは株主が企業の意思決定に参加しやすい、たとえばスマートフォンをスワイプするだけで投票できるような、民主化を進めていきたいですね。今のシステムデモ、技術的には十分可能ですから。
いずれにしても、当社のテクノロジーで透明性を自由度の高い、文字通り一人ひとりの「価値ベース」の投資商品を構築することで社会に貢献していきたいと思います。