Nautilus Labsは、地球温暖化に影響力がある世界中の海運業者に対し、全てのデータを統括するプラットフォームを提供し、機械学習とAIを使い温室効果ガス排出量の削減と、ビジネスとしての成功に挑む。今回はCEOのMatt Heider氏に話を聞いた。

海運における温室効果ガス排出量削減が使命

―まずはNautilus Labs設立の経緯を教えていただけますか。

 私はトリプル・ボトム・ライン(Triple Bottom Line: TBL)をビジネスの信念にしています。企業は社会に影響を与えることができます。社会や環境に責任を持ちながら、収益性が高いビジネスで経済的に成功することは可能です。

 世界的にみて、海運の温室効果ガス排出量は7番目の規模で、その排出量は韓国一国分の排出量に匹敵しています。そして、2050年には中国に次いで2番目に多い排出量になる、と言われています。それは何故かと言うと、海は誰のものでも、どの国のものでもないため、規制がとても難しく、結果的に環境要因への考慮や必要とするサポートが見過ごされているからです。私はこうした問題に気づき、何もしないわけにはいられませんでした。

 温室効果ガス排出量が非常に多く、地球温暖化に影響力がある海運における、この問題を解決することを第一の目的とし、Nautilus Labsを設立しました。

Matt Heider
Nautilus Labs
CEO
The George Washington Universityにて政治学学位取得。University of WashingtonにてMBAを取得、在学中に香港科学大学大学院にて学ぶ。米国内の大手金融会社、保険会社、ヘルスケア製品・医療関連機器の大手メーカーなどに務めた後、IBMでClient ExecutiveやSales Leaderを務めた。アフリカ人SEの育成や採用事業を展開するAndelaのNew YorkオフィスにてDirector of Salesなどを務め、2017年にNautilus LabsのCEOに就任。
 

200年前から変わらないデータ収集方法を変える

―具体的にどういった製品を提供しているのでしょうか。

 200年前から、太陽が真上に来る正午に、毎日位置測定を行い運航終了後にその記録を、本社などに報告する、正午位置報告が乗組員たちの間で習慣化されていました。2020年現在も200年前と同様に、データ収集は乗組員がセンサー類を正午に確認し、本社などに報告しています。そしてこのデータが、メンテナンス、価格決定、労働者のパフォーマンス評価に至るまで、全てにおける判断の基準になっています。

 当社は、データ収集を自動化し、様々なデータセットを統合するプラットフォームと、機械学習と最終的にはAIを使い、人々にとって、企業にとって、そして環境にとってより良い意思決定を行えるよう、実用的なインサイトを獲得し提供しています。

―サービスの特徴を教えてください。

 多くの場合、海運会社は、組織内での横断的な連携ができていません。例えば、同じ会社が所有する50隻の船で、4種類のコアシステムが使われています。ハードウェアには専用ソフトウェアがあり、コアシステムそれぞれに互換性がなく相互運用ができていません。当社のソフトウェアは、相互運用性と適応性に優れ、全てのデータと情報を一箇所に集めることができます。これが大きな特徴です。

一人ひとりが地球に対する責任がある

―今後の目標は。

 昨年11月から、シンガポールでサービス提供を始め、オフィスも開設しました。2020年は、シンガポールで事業の足場を固めることと、ヨーロッパへの進出を目指しています。そして、今後2から3年間はヨーロッパでの事業拡大に注力する予定です。

 海運業界において、フリートを最適化するNo.1ツールになるチャンスが当社の目の前にあり、これからの2から3年の活動にかかっていると考えています。海運業界における燃料消費量と温室効果ガス排出量の削減にインパクトを与えること、これを主目標にチャンスをものにしたいです。

―かなりグローバルに活動されていますね。日本にも顧客がいますか。

 カナダ、イギリス、スウェーデン、ギリシャ、香港、シンガポール、インドネシア、ブラジルにも顧客がいますが、日本企業の顧客はまだいません。

 今は会社が急成長しているところで、日本への進出まで手が回りませんが、将来的には日本国内にチームを設け、日本の海運大手企業、造船所や技術系の企業を対象にサービスを提供したいと考えています。また、日本での事業展開に向け、将来的に戦略的な投資をご検討いただける日本企業がいれば、是非お会いしたいです。



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